お膳立てして知恵も貸します


「ねぇ、オーギュスティーヌ、公妾になるには覚悟がいるといったけど、どんな覚悟かは理解できているの?」


「侍女のように、お側にお仕えするのでは……そして閨に呼ばれれば……」

 

 ……やはりね……このままではウェイトレス程度……素材がよくてもね……

 据え膳で差し出しても、手を出すとは限らない、この間も肩透かしだったし……


「実は貴女が病を治していただいたとき、私はお手がつくと期待していたの、でも何も無かったでしょう?」

「貴女を庇護し、面倒を見るということは、女から見れば、身を任せられる相手と思っても間違いではない、そのぐらいは理解しているでしょう」


「だから貴女は、『閨に呼ばれれば』といったと思うわ、いつかアリアンロッド様のお声が掛かると、でも現実は違うのよ」


「考えても御覧なさい、お側には数え切れないほど女がいるのよ、それも美しく聡明な女ばかりなのよ」

「そんな簡単には振り向いていただけないのよ」


「アリアンロッド様の世界では、私たちはウイッチと呼ばれているけど、そのウイッチの中から寵妃、つまり公妾になるために、皆さん、努力されているのよ」


「ウイッチの世界では、誣告や悪質な中傷は受け入れられない、他人を引きずり落とすことは許されない、そのような女は、不思議とウイッチにはなれない」


「このような状況で寵を得るには、自ら考え、行動に起こすことが求められる」

「ウイッチを束ねるハウスキーバーは、そこを評価されると思うのよ」


「事実、寵をえるために行われた、信じられない行動をいくつか聞いたし、その行動を皆さん、賞賛しているのを聞いたわ」

「要するに愛していただくためには、先ほどいった、ウイッチのタブーに触れない限りは何でもあり、そのぐらいしなければ、『夜伽の順』と呼ばれる、『閨の権利』を持つ資格はえられない」


「寵妃とは大人しいレディだけでは望めない、美しく聡明で、なおかつ獰猛なぐらいの、夜の欲望を秘めていなければならないのよ」


 ……


「不思議なことに、アリアンロッド様は一度でも抱かれた女は、お見捨てにはならないので有名」

「まずはなんとしても『抱かれた女』、つまり寵妃見習いにならなければならない、『格子』というのですが、セパレイティスト・クラブでは、コンパニオンがそれにあたります」


「まずはそれを目指しましょう、『格子』になれれば、寵妃の位でもある、『側女』も望めるでしょう」


「でも、どうすれば……」


「なんとかお膳立てはしてあげます、知恵も貸してあげます」

「セパレイティスト・クラブとしては、ブリタニカ女性の寵妃が、一人でも増えるのは望ましいことですからね」

「それまで、自分でどうすればアリアンロッド様を誘惑できるか、考えていてね」


 テロワーニュとジョージアナは相談の結果、バウハウト城の周り、ボタニーク・ド・メイーズ庭園を、ブラックウィドゥ・スチーム・モービル社がベルギー王国より購入しました。


 レディス・スクールがセパレイティスト・クラブの管轄となり、ブラックウィドゥ・スチーム・モービル社の女性職員養成機関を設立するとともに、子会社でもあるブラックウィドゥ・ノーザンクラウン・エアーフライト社の本社もここに設置しました。


 アリアンロッドに、ブラックウィドゥ・スチーム・モービル社の、女性職員養成機関を設置したボタニーク・ド・メイーズ庭園の視察を、願い出たのでした。


 この購入話、案外にベルギー王国が喜んだのです。

 ブリュセル近郊に、ブラックウィドゥ・ノーザンクラウン・エアーフライト社の本社と飛行船発着場が出来るのですから、ベルギーの地位向上を、アウグスタが認めたととったようです。


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