まずは建前の話


 その頃、マーガレットとアルジーは、客間で二人きりで話しています。


「私が来た理由は察しているでしょう?」

「察していますが、突然アウグスタ様にお仕えしないかといわれて、困惑しています」


「そうよね、しかも公妾ですからね」

「でもね、私たちが何故お仕えするかは、考えたことがある?」

「国家のためと思っていますが?」


「最初はね、世界の終末がやって来て、嫌がるアリアンロッド様にお願いするためには、代価を差し出す必要があったのは確か、ロシアもフランスもアメリカも必死だったの」


「だから私も身を犠牲にせよ、といわれるのですか?」

「もう世界は救われている、だからそんな必要はない、アリアンロッド様は、無理強いはお嫌いなの」


「私たちもお願いすれば、好きな方に嫁ぐことも出来る、『下賜』という形になりますが」


「いまブリタニカは、ネットワークに加盟して日も浅く、ネットワーク内の発言力は皆無といえる状態」

「ネットワーク内の発言力は寵妃、つまり公妾の数と質によるの、その為に優秀な人材をスカウトすることになった」

「そして各国政府は、全面協力することになっているのよ」


「つまり、貴女に対して『身を犠牲にせよ』とはいわない、でも『身を犠牲にせよ』といいたい」

「セパレイティスト・クラブは『強要はしない』、ただ望んだ方は歓迎する」


 ……


「ここまでは建前よ」

「私たちの世界、惑星ブリタニカは、先ほど言ったようにネットワーク内の地位は極めて低い、でも優遇はされているの」


「加盟してすぐに、『ハレム』という単位の設立が認められているの」

「で、お母様とテロワーニュ様が、より上位の『ホーム』という単位を、単独で認めて欲しいと嘆願したの」


「でも担当する、事務局というのだけど、事務局は聞く耳は持たないのよ」

「『ハレム』が認められ、執政官職も現地にゆだねられている以上は、高望みするな、というの」


「色々と状況を調べると、ネットワークの最高権力機構の一つ、『百合の会議』で絶対に承認されない」

「ハレムやホームの新規設立は、誰も触れたくないタブーに近い案件」


「これを打破するには、『百合の会議』内での発言力強化しかないというのが、二人のシャペロンの結論なのよ」

「その為に貴女のような、直ぐにでも公妾になれそうな女をスカウトする、これがセパレイティスト・クラブの本音なのよ」


「お話の趣旨は分かりました、でもマーガレット様の本音は、まだのようですが?」


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