ドンカスター侯爵邸に行きましょう
「アシュレイさん、評判を聞きました、がんばっていたそうですね」
「私少し外出しますので、ついてきてくださいね」
マーガレットがそういいながら寵妃見習用の上級軍服を着ています。
「お手伝いいたします」
アシュレイが云うと、
「私のことより貴女も着替えしなくては」
「もう下働きのメイドではないのよ、レディス・カレッジの生徒なのよ」
「レディス・カレッジの軍服を着なければ、これからは簡単には外出できなくなるのよ」
「だから軍服を着てね、ロンドンのドンカスター侯爵邸に行くのですから」
いままでアシュレイ・スマイスは下働きのメイド扱い、そんな制限はありませんでした。
レディス・カレッジの生徒にも、婦人戦闘団の一般軍服に似たものが支給されています。
ただ色が違っています、レディス・カレッジの場合は地味な灰色です。
十五歳のアシュレイ・スマイスですが、スラッとしていますので良く似合うようです。
「二月で十五歳になったと聞いているわ、似合わないかと思ったけど、可愛いわね」
マーガレットに褒められ、頬を赤くしたアシュレイでした。
本来、マーガレットはプリンセス、そんなに簡単に貴族の家に行くなどあってはならないのでしょうが、アリアンロッドの公妾、コンパニオンとなればお気軽なのです。
ただウイッチの制服を着るのがしきたりになりかけています。
この頃には、婦人戦闘団の軍服はウイッチなどアリアンロッドの女たちが着用する儀礼服と認識されています。
とくに上級軍服の着用者が、どのような女かも知られるようになっています。
ブリタニカでは、婦人はかなり大きな帽子を被ったりして髪をあまり見せませんが、アリアンロッドの公妾はそんな事はありません。
簡単なミリタリーベレー帽の下から綺麗な髪がのぞいています。
マーガレットはアシュレイがピカピカに磨き上げていたロコモービルを運転して、ロンドンのドンカスター侯爵邸に。
横に乗ったアシュレイ・スマイスは、尊敬するようにマーガレットを見つめています。
「そんなに感心しなくてもいいわよ、レディス・カレッジに入れば、ロコモービルの運転は必ず覚えさせられるから」
こんな会話をしながら、二人はドンカスター侯爵邸に到着したのです。
ドンカスター侯爵のタウンハウス……とんでもない豪邸ですが、マーブルヒル・ハウスほどではありませんね。
なんせマーブルヒル・ハウスは、カントリー・ハウスと呼べる規模です。
田舎貴族の端くれであるアシュレイですが、マーブルヒル・ハウスになれているのでしょうね、動じることも無く堂々とした態度です。
マーガレットに付き従うアシュレイ。
地味な灰色のレディス・カレッジの軍服が良く似合っています。
十五歳ですからとても可愛い娘さん。
バラ色の頬ときらきらと輝いている瞳が、シックな服に映えるのです。
さらに高貴な雰囲気もまとっていますので、ドンカスター侯爵邸の人々に、強烈な印象を与えたアシュレイです。
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