アリアンロッドはアブノーマル


 翌日、ホテル・クィーン・カルシュ・パレスの貴賓室、三人の女たちのアフタヌーン・ティー……


「私たちはお嬢様、いえ、アリアンロッド様にお仕えしていますが、私たちは女ですよね」

「女は保守的な生き物、今あるものを守りたい生き物ですね」


 サリーさんはニコニコしながらお茶を飲んでいます。


「私たちは誣告はしない、お嬢様はそのようなことは嫌われる、そしてお嬢様は努力する者はお好きである」

「お仕えする者は自然とお嬢様のお考えに沿うようになる」


「ただ女は保守的な生き物、今あるものを守りたい生き物、これが根本にあります」

「夜伽の順番は寵妃の楽しみであり誇りでもあります、『百合の会議』は排他的なのです」


「『百合の会議』は、別名『つるし上げ会議』ともいわれています」

「でも、先ほども言いましたが、『お仕えする者は自然とお嬢様のお考えに沿うようになる』」


「ハレム昇格は至難の業ではありますが、努力した集団は認められるのです」

「良いウイッチ(女官)の集団と認められればハレム昇格なのです」


「セパレイティスト・クラブはハレムとして認められています」

「より良きハレムと認知されれば、エラムやマルスのようになれます、事実、蓬莱は認められつつあります」


「まずお嬢様を誘惑して、寵妃を増やすことが肝要ですよ」 


 二人にとって、蓬莱産のアッサム・ティーの香りは甘くなかったようです。


 サリーとのお茶会のあとも、二人はお茶会を続けています。


「思うのですけど私たちは名誉夫人待遇女史、シャペロンは女官長と同列と聞いていますがやはり寵妃ではない、まずはそこから始めましょうか?」

 ジョージアナの声が少し大きくなりました。


「でも……どうすれば……アリアンロッド様の周りには、愛人の方々がね……」

 テロワーニュが困惑していますと、ジョージアナが

「アリアンロッド様は好色よね、マルスのエカテリーナさんは娘と一緒に夜伽をしたと聞いているわ……」


「私も娘たちと一緒に……そうよ!それしかないわ!抱いていただくにはそれしかないわ!」

 ジョージアナさんは、少しばかり相手に対する配慮が足りないところがあります。

 テロワーニュに娘はいないのです。


 ……たしかにアリアンロッド様は好色……なにかアブノーマルなことをすれば……


 二人は未亡人、久しく夜はご無沙汰。

 ハレムの管理者として、房事を取り仕切っている関係で欲望が抑えきれない状態……


 その上、惑星ブリタニカに漂いだした、アリアンロッドに抱かれる寵妃という地位は、社会的には絶大な栄誉という雰囲気が二人を後押ししているようです。


 ただテロワーニュは何事もまず考えて行動するタイプ。

 ジョージアナのような爆発的な行動力は欠けているようで、ジョージアナが二人の娘とともに首尾よくアリアンロッドの夜に侍ったのを、横目で眺める羽目になったのです。


 ジョージアナはシャペロンになって以来、若返った肉体に凛とした気品を漂わせていましたが、アリアンロッドのベッドに侍ってから激変したのは確かです。


 アリアンロッドの前では、ジョージアナの雰囲気は気品の中に官能が混じっているのです、色気なんてのではありません。


「テロワーニュ、私、アリアンロッド様のお側に侍ると、頭が真っ白になって何にも考えられなくなる」

「娘たちが云っていたのが理解できたわ」


「アリアンロッド様にお言葉をかけていただくだけで、体がはしたないことになるのよ、女奴隷の意味が分かるわ」

「どんなことでも、命ぜられたら躊躇無く実行できるわ」


 このあとジョージアナは、テロワーニュに夜伽の出来事を散々に聞かせたのです。

 誇らしげに、首には夫人待遇側女のチョーカーが輝いています。


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