門前払いの理由?


 ハウスキーパーのサリーさんの元に、一つの報告書をダニエラ・ギッシュさんが持ってきました、事務局からのものです。

 ダニエラさんはサリーさんの側近、秘書官などを務めています。

 

「珍しいわね、事務局からの報告書なんて」

 通常、事務局からの報告は、ハウスキーパー臨席のもと事務局内の会議室で行われます。


 この手法は百合の会議と同じ形式、ネットワークの女たちはこの形式を好むようです。

 ただこちらは、サリーさんの『つるし上げ』はありえませんが。


「困り事のようですね、多分ブリタニカのセパレイティスト・クラブの話と思われます」

「セパレイティスト・クラブ?あそこは大騒動したけど、ハレムとして認められたのでしょう?これ以上なにかあるの?」


「近頃、テロワーニュさんとジョージアナさんが、頻繁に陳情を繰り返しておられると聞いています」

「報告書の中身を知っているのでしょう?」


「ホーム昇格、各地域ごとのハレム昇格、だと思われます」

「近頃なにかとシャペロンのお二人がこられているようですから」


「その話はだめよ、これ以上ブリタニカのハレムの要求を呑むわけにはいかないわ」

「それこそウイッチ(女官)全員を、敵に回すことになるわよ」


「いいわ、二人ともハレムの責任者ですから、私が二人と話をしてみましょう」


 ある日、テロワーニュにオルゴール通信がかかってきました……


「テロワーニュさん?サリーです、内々でジョージアナさんと一緒に三人でお話がしたいのですが、ご都合はいかがですか?」

「ジョージアナさんには、いつでも良いとのお返事をいただいています」

「明日の午後なら夕刻まで都合がつくのですが?」

 

 ハウスキーパー直々の呼び出しに、意義など唱えるウイッチなど存在しない。

 このあたりの感覚は、テロワーニュといえど持っています。


「サリー様のご都合がよろしければ、私はいつでもお伺いいたします」


「私がお伺いするわ、アフタヌーン・ティーでもいたしましょう」

「そうですね、お二人が良くいらっしゃる、中原シティのホテル、確かエラムのカルシュのホテルの支店でしたね……名前はホテル・クィーン・カルシュ・パレスでしたか……」

「そうそう、あそこの喫茶室って、カルシュ・ヴィーナス劇場の前の茶館が本店でしたね……では明日の午後三時でお願いできますか?」


 ということで、明日の午後三時に三人はお茶をする約束をしたのです。


「ねぇ、テロワーニュ、サリー様、何のお話かしらね……やはりセパレイティスト・クラブの昇格の話かしら……」


「間違いないわ……でも、ハウスキーパーが内々でなんて……」

「この問題はどうも私たちが考えているより……良くないのではないかしら……」


「私たちの星は加盟して日が浅い……組織というものは大なり小なり触れてはならないタブーがある……」

「これがそうだとしたら……まずいのではないかしら……」

「そうね……」

 

 二人はここで初めて、事務局の頑なな態度の訳が見えてきたようです。


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