幻の女たちⅠ ブリタニカ・レディズ 【ノーマル版】

ミスター愛妻

幻の女たちⅠ ブリタニカ・レディズ 【ノーマル版】

第一章 テロワーニュの物語 セパレイティスト・クラブの野望?

似て非なる世界の女たち


 惑星ブリタニカのサブシャペロンであるテロワーニュは、チーフシャペロンのジョージアナと、ハウスキーパー事務局に連日の陳情をしていた。


 セパレイティスト・クラブのホーム昇格、及びその支部のハレム昇格、しかし色よい返事はなかなかもらえない、とうとうハウスキーパーのサリーから理由を聞かされた……


* * * * *


 1877年の5月、惑星ブリタニカのサブシャペロンであるテロワーニュ。

 名誉夫人待遇女史の位を持ち、五十代ではあるが、位ゆえに二十代後半の若さを保っている。


 その細面の美貌は気品を漂わせてはいるが、勝気なところが垣間見え、親友でもあるチーフシャペロンのジョージアナと二人で、セパレイティスト・クラブを切り盛りしている。


 そもそもこの惑星は、デーヴァらしき男、多分擬似デーヴァが己の妄想実現のために、幽子を操作して捏造した世界。


 テラの歴史と似ていますが、人々は全て幻、それをヴィーナスさん、つまりアリアンロッドさんが、女たちを代価として受け取ってしまい、なんとか物質世界に具現化させた経緯があります。


 そのため、ここに存在する人々は、理想のデーヴィ-としての本質を持ち、その上に、具現化させたヴィーナスさんの深層心理も少しばかり反映された結果、似て非なる世界、パラレルワールドとはいいがたい世界となっています。


 従って本来のイギリス女王とは、別人の方が女王であり、ナポレオン3世妃であるテロワーニュさんも、まったくの別人。

 第二共和政大統領時代の愛人から、皇妃に迎えられた経歴があります。

 そもそもこの二人は、テラでは存在しないのです。


 ちなみに英国女王の五女のマーガレットさんも別人、六女のリンダさんは、そもそもが存在しないのです。


 マリーア・ソフィア・ディ・バヴィエラさんは、その名前の方は、テラの歴史上には存在しますが、出自が違います。

 ヴィッテルスバッハ家の出身ではありません。

 性格などは似ているようですが……

 とにかく、男の妄想を現実にした世界であるのは、確かなのです。


 今日も二人は、セパレイティスト・クラブの問題について、のんびりと話をしていた。


 ここは、最近出来た中原シティーのホテルの一室。

 究極のセレブでもある二人は、ニライカナイカフェなどはお気に召さぬようで、このホテルの喫茶室によく出没しているようです。


 テーブルにはやはり紅茶が……蓬莱産のアッサムのようです。


「ねぇ、テロワーニュ、何で事務局はあんなに頑ななのでしょう?」

「本当に失礼な態度よね、この話をすると、誰も聞く耳など持たないようね」


「でも、ハレムやウイッチ(女官)の話は、ハウスキーパーの管轄、百合の会議は、ハウスキーパーへの諮問会議でしょう?」

「それに事務局は議題に挙げるだけのはず、どうして嫌がるのか、理解できないわね」


 二人が話しているのは、惑星ブリタニカのセパレイティスト・クラブの昇格問題。

 セパレイティスト・クラブをホームに昇格とともに、その支部をハレムに昇格……

 これに事務局が拒絶するわけです。


 ハレム問題は、誰も首を突っ込みたくない。

 ハウスキーパー事務局としては、なんとかブリタニカのセパレイティスト・クラブをハレムにした以上、それ以上は望むなと、云うことらしいが……


 まだシャペロン就任から日が浅い二人は、このあたりの微妙な雰囲気を、理解していない。


 ブリタニカの、セパレイティスト・クラブのハレム認定は特例中の特例、百合の会議で、もめにもめたことを二人は知らないのです。


 あれから百合の会議は開かれてなく、ブリタニカの女たちは呼ばれていないので、その実態と影響力がどれだのものか、ネットワーク審議会程度と思っているようです。


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