第41話 僕達は立ち上がった!
うーん。ないな。
冒険者の街に着いてから精肉店を探しているけど見当たらない。
って、お肉を焼いたおいしそうな匂いが。
『うまそうな、匂いだな』
「うん」
僕は、お肉の焼ける香ばしい匂いに誘われて歩くと、屋台が出ていた。お肉の串が売っている!
あれもほしいけど、まずは精肉店の場所を聞こう。
「あの~」
「へい! いらっしゃい、お嬢ちゃん」
お嬢ちゃん?
周りを見渡すも女性はいないって、また後ろで声を殺してユイジュさんが笑っている。今日は、笑いのツボが浅いらしい。
「精肉店の場所知りませんか?」
「はぁ? 精肉店? 一般の人が買える店はないぜ」
「あ、僕これでも冒険者で」
「いやそうじゃなくて、店舗用の卸店はあるが個人に売っている店はないって言っているんだ」
「え~!!」
「やっぱりな」
と後ろでユイジュさんが呟いた。
「知っていたの!?」
「いやないとは知らなかったけど、ないだろうと予測はしていた」
教えてくれればいいのに……。
『別に生じゃなくてもいいぞ。これもおいしそうだ』
「うん。そうだね」
これでもいいかな……。おいしそうだし……って!!
「滅茶苦茶高いね!!」
「今日は、特別な。肉が入らないんだ。どうしても食べたいという奴らしか買ってかないけど。明日も店を開けるかわからないからな」
結構凄い商売の仕方してるなぁ……。
「これじゃ、お魚しかないかな」
「魚だって届かないよ。どうやら賊らしいな。死体があったっていう話は聞かないが、どうやら荷馬車を狙った賊がいるみたいだな。冒険者を敵に回すなんてよっぽどのマゾだぜ。で、お嬢ちゃん買うだろう? ワンちゃんよだれ垂らしてるぜ」
「じゃ、いっぽ……」
「行くぞ!」
とグイッとユイジュさんに引っ張られた。
「え~。串は?」
「お前、馬鹿か! いつもの五倍はするぞ!」
「え? 五倍! だったら賊を倒したら五分の一で買えるね!」
「……だといいな。盗まれたのは生だから。どこかに売りさばくつもりだろう。早く捕まえないと今回の分はないからな」
「え~!! しばらくお預け?」
『仕方がない。モンスターを狩るぞ』
「え? モンスター? なんで?」
『肉の確保だ』
「……家に帰ってお魚さんだよ。そうだ。ユイジュさんもどう?」
「……そうだな。一度ご両親に挨拶しておくか」
「じゃ、帰ろう」
『われの肉……』
魚だっておいしのにね。
□
「ただいま~」
「おかえり。あらお友達?」
「僕の師匠」
「おい……。冒険者のユイジュと申します。彼といつも一緒に行動している者です」
「まあロマドがいつもお世話になってます」
「あのね、今日はお肉が売り切れだったからお魚を食べたいって!」
『われはそんな事を一言も言っておらんぞ!』
「だってお肉ないし……」
「困ったわね……」
とお母さん。何が困ったんだろう?
「実はね、もうお魚がないのよ。今日来るはずのお魚、どうやら盗まれたみたいなの」
「え!? お父さんのお魚も盗まれたの?」
「お父さんのお魚?」
「うん。僕のお父さん、漁師なんだ。週に一度送って来てくれるんだ」
「なるほど。これは大きな組織がかかわってるのかもな」
とユイジュさんが頷いている。
お父さんのまで奪うなんて許せない!
「お母さん、待っていて。僕が取り返して来るよ!」
「え? どうやって? 無理よ!」
「任せて! チェトは強いんだ!」
『待て! われに戦わせる気か!』
「え? 無理なの? お肉もお魚もないと野菜だけになるけど……」
『よし、わかった。お供しよう』
「うん! 頑張ろう!」
「待て! もしかして行く話にまとまったのか!? チェト、お前、それでいいのか?」
「ユイジュさんも早く」
僕が駆けだすと、ぺこっとお母さんに頭を下げたユイジュさんが、待てと追いかけて来る。
取りあえず、依頼を受けてみよう。
「あ、そうだ! ユイジュさんて何ランク?」
「はぁはぁ……。え? ランク? Dだが……って、ちょっと待て。勝てない相手に挑んでどうする。他の奴も行っているから俺達がって、話を聞け!!」
「だから早く! 馬車が来た!」
ちょうどよく馬車が来たのに、ユイジュさんったら遅い。
「お……ま……」
なんとか馬車に間に合ったけど、ユイジュさんがぐったりとしている。何か言いかけて止めたけど大丈夫かな?
「俺はもう知らんぞ……」
って、やっぱり何か切れやすい。うん。早くお魚を食べさてあげよう。
「お父さんが送って来るお魚おいしいよ」
「そうか、よかったな。もうわかったから置いて行かないでくれ」
「うん。だって馬車に間に合わなくなりそうだったから」
「今日は、走ってばっかりだ……」
『ロマド、われはお腹が空いた。途中でモンスターを食していいか?』
「だめだよ。生肉は!」
『……わかった。ならば、ちゃちゃっと捕らえようではないか』
「うん!」
10万貰ってよかった。危なく馬車に乗れない所だったよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます