第40話 お肉騒動勃発

 僕がウキウキしていると、ダダルさんがドリームバードの羽根を黒い袋に入れた。そして、それを消した!


 「え~!!」


 「っぷ。お前、思った通りの反応だな」


 とダダルさんが笑ってる。どこにやったんだドリームバードの羽根!


 「大丈夫だ。異空間棚という場所にしまった。俺のスキルだ。冒険をしている時は、手ぶらで移動出来て便利だったぞ」


 「すごーい。消して持って歩けるんだ」


 「うーん。消してというか、違う空間に置いておいて、違う場所からそれを取り出すって感じかな」


 と難しい説明をするので僕は、セードさんを見た。


 「不思議かもしれないが、部屋にある物をどこにいてもとれるスキルというイメージだな」


 「え? すごーい」


 自分の部屋置いたり取ったりを違う場所で出来るって事だよね? それなら確かに持ち運ばなくていいから便利だ。でも……。


 「お家に置いてあったら盗まれませんか?」


 そう聞いたら全員に笑われたんだけど!!


 「お、お前、イメージだとセージさん言っていただろう」


 「俺しか入れない部屋だから大丈夫だ」


 なるほどそんな部屋があるって事か。って、みんな笑い過ぎ!

 うん? チェトが震えている? って笑ってる!?


 「チェトまでひど~い」


 『われは、笑い死ぬぞ。これはスキルを覚えても使えこなせるか心配になってきたな』


 「大丈夫だよ。説明文あるから」


 『詳しくないんだろう?』


 「うーん。でも今の所、それで大丈夫だけど?」


 「一体どんな会話してるんだか……」


 「スキルを使えこなせるか心配だっていうんだ」


 ユイジュさんに答えると、うんうんとこれまた全員が頷いた。

 もう今日のみんなは、意地悪だ~!



 むむむ。


 「まだ怒ってるのかよ」


 「別に~」


 僕は、チェトのお肉を買う為に精肉店に来たんだけど、ユイジュさんがついて来た。


 『悪かった。もうそんなに怒る事ないだろう』


 「だって……知らなかっただけなのにみんなして……」


 「わかった。もう笑わないから……たぶん」


 「だぶんって何!?」


 「いや、おかしいから笑っちゃうだろう? それにそれが嫌なら本でも読んで勉強したらどうだ?」


 「あ、そっか」


 本を暗記するればいいんだ! よし本屋に寄って……あ、そういうのはないか。冒険者商会に戻るのか~。


 「いらっしゃい。あ……チェトくんのお肉買いに来たんだね」


 ここ店主とは知り合いになった。ほぼ毎日チェトのお肉と、僕達のコロッケを買って行ってるからね。


 「すまないね。入荷してなくて売れる物がないんだ。先ほど全部うれちゃってね」


 「え~~!」


 「どうしてですか? 災害があったという情報は入ってませんが」


 「わからないから今調べてもらっているんだ。普段ならもうとっくに商品はついているんだが」


 「うーん。魔物か賊に襲われでもしたか? 単に馬車の故障だといいが」


 とユイジュさんが言った。襲われたらお肉届かないじゃないか!! なんとかしないと。


 「でもねぇ。故障した馬車を見たという者も魔物がいたという者もいないんだ」


 「……賊に連れて行かれたって事か?」


 「最後の休憩ポイントには寄ったようだからその間だ。一山あるが、襲われたとしたらそこだろう」


 「アジトがわからないとどうにもならないか……」


 「依頼は出したよ」


 依頼? 冒険者商会にって事かな?


 「おじさん! 僕が取り戻すからね! 行こうチェト!」


 「ロマドくんでは無理だ!」


 「おい! 待て!」


 僕は店を飛び出し、依頼を受ける為に冒険者商会に向かった。


 『まさかおぬし、賊と対峙するつもりじゃないだろうな?』


 「違うよ。お肉を取り返すの」


 『それを対峙するというのだ』


 「退治はしないよ! 奪って来るの!」


 「まてって! おーい」


 ユイジュさんが叫んでいるけど、走っている僕にはユイジュさんは追いつけないから待ってられない。


 バン! ドアは開いていたのでそのままカウンターに突っ込んでしまった。


 「ダダルさん! 賊の依頼ある?」


 「うん? びっくりしたな。カウンター壊すなよ。賊? そう言えばそんなのが……それがどうした?」


 「僕、それを受けます!」


 「……いや、賊のは個人での受け付けはしてないし、Dランク以上の仕事だ。Dランクの者も一緒じゃないと行けないからあきらめな」


 「でも、チェトのお肉!!」


 「あぁ。そういう事か。肉も含まれていたか。おい犬コロ、ちゃんと言い聞かせないと、死ぬぞ」


 『はぁ……。言われんでもわかってる。とりあえず肉なら他でも買える』


 「うん? あ、そっか」


 『それに賊は人間だ。相手は知恵を持っている。おぬしより弱くても頭を使って色々仕掛けて来るんだ。賊に対応している冒険者に頑張ってもらおう』


 僕より弱いって事はないだろうけど。


 「……うーん。わかった。じゃ、冒険者の街に買いに行こうか」


 『別に今日はなくてもよいぞ』


 「え~!! もしかしてお腹痛いの?」


 『違うわい。そこまでして肉じゃなくてもいいと言っている』


 「あ、じゃ、魚ね」


 『……魚は……やはり、肉が食べたくなった』


 「……もしかして、チェトはお魚嫌い? ダメだよ、好き嫌いは。大きくなれないからね!」


 『魚は物足りないのだ!』


 「っぷ。いやぁ、ロマドにかかると、聖獣様も形無しだな」


 『………』


 セイジュウ様?


 「はあ、はあ……まだいた。お前、早すぎ」


 「あ、ユイジュさん……。僕達、お肉を買いに冒険者の街に行くことにしました」


 「はぁ? だったら走らせるなぁ!!」


 って、ユイジュさんが切れてる。うーん。カルシウム足りないのかも!


 「明日、お魚持ってこようか?」


 「お前な……いきなりなんで魚なんだ」


 「お家にいっぱいあるから……」


 「ユイジュ、お疲れの所悪いがついて行ってもらっていいか。もしもの時は、止めろよ」


 「まじか……」


 ダダルさんに言われたユイジュさんは、ガックシとしている。走り疲れたみたいだね。

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