第39話 取り引きの仕方
「それじゃ、羽根は決まりと。これは、冒険者商会の方で預かり保存しておくけどいいか?」
「うん? 預かってくれるの?」
「高価な物だけど取っておきたいって時に、預かり保存をしている。期限は最大一年。更新も可能だ。預かり料金は、先払いだ」
へえ。そういうのもあったんだ。確かになくしたら困るもんね。
「じゃそれで……」
「ちょっと待て。お前はなんでも即決だな。いいか、判断するのに足りない材料があるだろうが!」
ダダルさんが申し出てくれたのに、ユイジュさんに止められた。
「あ、ユイジュさんが預かる?」
「そうじゃない! 預かり料金だ。お前あるのか?」
「………」
そう言えばない。って、やっぱりユイジュさんは払ってくれないよね……。
「そんな目で俺を見てもダメだ。払ってやりたくてもない! 預かる物によって預かり料金が違うんだ。しかも一年分だろう?」
「あ、そっか。一日いくらとかなの?」
「当たり前だ!」
うーん。だったら全然足りないじゃないか……。
「ユイジュ。今回は後でおすそ分けしてくれるというのなら、袋代だけ頂く。お前達に払えないのはわかっているからな」
「……ダダルさん、ありがとう!」
「すみません。恩にきます」
ユイジュさんもダダルさんに頭を下げた。
で、袋と言うのが真っ黒い袋だった。
「この袋はお買い上げという形になるので、羽根以外の時にも使えるぞ。で、相談なんだが、どうせ袋代も払えないだろうから殻の方を冒険者商会に売ってくれないか?」
「うん? 袋ってそんなに高いの?」
「10万だ」
10万!? 途方もない金額なんだけど。殻ってそんなに値打ちあるの?
「これに入れると完全保存になる。完全というのは、入れた状態そのまま保存される。温かいものなら温かいままで、一年後取り出しても入れた時の状態だ。つまり腐らない」
「うん? なんで?」
「時が止まる袋とでも思えばわかりやすいだろう」
ダダルさんの説明にセードさんが、わかりやすく説明をしてくれた。
時間が止まる袋。それって凄い!
「あ、じゃ殻を売ります」
「だからなぜ売値を聞かない」
「え? だって聞いても正しいかわからないし……」
「わからなくても俺達がいるんだからおかしいと思ったらおかしいと言ってくれる奴がいるだろう」
「え~。ダダルさんは、そんな事しなよ」
「そういう事を言ってるんじゃない!」
何故か凄くユイジュさんが怒っている。今日のユイジュさんは、キレやすいなぁ。
「ユイジュは、お前が今後もし万が一に一人でこういう場面に出くわした時の為に言っている。相手が誰であろうと、確認は怠るな」
とダダルさんが言うと、何か紙を持って来た。
「これが目安の価格表だ」
アイテムランクと評価ランクで値段が決まるみたいだ。評価ランクをつけるのは、鑑定が出来る者がするって書いてある。
「ダダルさんって鑑定できるの?」
「俺が出来る」
って言ったのは、セードさんだった。
「お前、気づけよな。ドリームバードの羽根が本物だと鑑定したのはセードさんだろう? ペンダントのライトだって……」
ユイジュさんに言われて思い返せばそうだ。
羽根を見つけたダダルさんは、セードさんに見せていた。
「えっと、ではセードさん鑑定お願いします。あ、これって鑑定料かかるの?」
「お、少しやりとりがわかってきたか? 普通に鑑定するとかかるだろうけど、冒険者商会では、冒険者商会に売る時の鑑定はただだ。勿論聞いて売らないという選択をしてもただ」
「え? だったら鑑定だけして売らない人っていっぱいでるんじゃない?」
「よほどじゃないとそんな奴いない。どこに売るんだ? 今回の様にドリームバードならあり得るけど、それ以外は売れないだろう? 大抵は買取の為、普通に行われるもんだ」
ダダルさんの言葉に驚いて言うと、ユイジュさんにそう言われてしまった。
たしかに、モンスターの牙や角なんて、ここにしか売れないか。
「この殻は、合わせると一個分の殻だ。そうなると一つで殻のランクは、Cランク」
おぉ!! Cランク!!
やったぁ最低10万からだ!
「ただし、その袋に無造作に入れていた為に、その鉱石で傷ついてしまっている。なので評価は最低ランクなる」
僕はがっくしと項垂れた。
うわーん。鉱石なんて持って来るんじゃなかった。
「では、20万だな。袋代をさっぴくと10万。鉱石はどうする?」
『いるぞ!!』
ダダルさんに聞こえないのにチェトが答えた。
「それはそのままほしいです。ってあれ? なんで20万?」
「今、セードさんが説明していただろう? 殻が二つあるから20万!!」
とユイジュさんが教えてくれた。
そっか。一個分が10万じゃなくて、半分になっている一つが10万なのか。
やったぁ!!
これで今日は、おいしいお肉を買える!!
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