第38話 スキル錬金の可能性
「まあレベルがあるスキルなんて、実際は使ってる本人が言わないとわからないらしいけどな」
とダダルさんが言った。
それって鑑定でもわからないって事だよね?
「熟練度との違いは、レベルが上がる事で出来る事が増えるって事だ」
「うん? それって僕のスキルが増えるのと同じって事?」
「うーん。そうではなくて……」
「熟練とは、それが上手になっていくって事だ。そのスキルがある事で、ないモノよりは、そのスキルを極める事で上手になる。その例として料理だ。料理など誰でも出来るが、スキルがある事によってスペシャリストになれるだろう?」
とダダルさんがうーんと唸っていると、セードさんが説明してくれた。僕はなるほどと頷く。
「レベルとは、ただ上手になるだけではなく料理だと創作が出来る様になったりと、それに関わる何かが得意になるって事だ。これを魔法などに置き換えると、ファイヤーなら普通は手元から火が出るが、それを場所指定して発火させられるようになったりする。そういう感じと言う事だ。レベルがあると幅が広がるって感じだな」
とセードさんは更に続けた。
ちょっと難しいけど何となくわかった。
「お前のスキル自体が、珍しいモノだからな。まあそれならいずれ出来る様になるかもな。ロマドが頑張って出した提案だ。後はユイジュが、その賭けにのるかのらないかだな」
とダダルさん。
別に賭けというつもりはなかったんだけど。言われてみればそうかも。
「あははは」
って、ユイジュさんが何故か泣き笑いしてるんだけど!?
「どうせ諦めていたんだし、その賭けにのるよ。お前のお守りは大変だけどな」
ユイジュさんは、目じりの涙を拭きながら言った。
もうお守りって何さ!
そして、ユイジュさんが右手を出して来た。
「え?」
「握手だ。宜しくなって事」
「うん。これで成立って事だね」
僕は、ユイジュさんの右手を握った。
――『握手』の条件が整いました。『握手』を作成しますか?
「あ!」
「どうした?」
「ううん。なんでもない。よろし……」
――『握手』のスキルを保留しました。
「え~~!!」
「今度はなんだよ」
「スキルの作成に失敗したみたい」
「どういう事だ?」
ってユイジュさんに聞かれてもよくわかんないよ。今までしないって言った事なかったし。って、そういう「ううん」じゃなかったのに~!
「まさかと思うけど、スキルを作成するのに問いかけがあるのか?」
「うん。作りますかって聞かれる」
「じゃ何か。今、ううんって言ってキャンセルになったとかいう落ちか?」
ダダルさんの問いに答えると、ユイジュさんが聞くのでその通りと頷いた。
「バカだろう、お前」
「なんでさ! 僕は、ユイジュさんに「ううん」って言ったのであって握手を覚えないっていうつもりじゃなかったんだ」
「握手? こんなんでも……」
って、ユイジュさんがバッと乱暴に手を放した。
そんなに嫌がらなくても自分からしようって言ったのに。
「ロマド、そのキャンセルしたスキルはどうなっている?」
「どうって?」
「スキル自体消えたのか? それとも元の状態になったのか? 保留になっているとか……そういう事だ」
そう言えば、キャンセルじゃなくて保留って出ていたような。
リストをみているると、『握手』は保留中になっていた。
「保留中になっている」
「解除とかできそうか?」
とダダルさんが聞くので、出来そうか色々やってみたけど、いまいちわからない。
「うーん。わかんない。どうやるの?」
「俺がわかるわけないだろう。とりあえず、問いかけがあるって事は、違う事に使うって事だろうな」
「え? 違う事って?」
「それはわからん。だが、スキルを取得すれば熟練度が増えるんだろう? それなら条件をクリアしたらそのまま覚えればいいだけだ。それをわざわざ聞くと言う事は、それ以外にも使い道があるって事だろうな。例えば、熟練度ではない何かに還元するとかな。保留中なのならば、レベルが上がったら使える選択肢が出てくるかもしれないな」
「なるほど!」
ダダルさんがそう言うと、ユイジュさんが頷いた。
全然そんな事、思いつきもしなかったけど、ダダルさんが言う通りかも。でも気を付けないと、レベルを上げる熟練度が足りなくなっちゃう。
次のスキルの数がわからないから安易に保留にすると、それ以上レベルを上げられなくなっちゃうって事だもんね。
「しかし、握手しただけで覚えれるなんてな。で、握手の効果ってなんだ?」
「え? うーんと、握手すると好感度が少し上がるだって」
「はぁ? なんだその好感度って……どうでもいいスキルだな」
聞いたからユイジュさんの質問に答えたのになぁ。でも確かに、冒険には役に立たないかもね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます