第37話 僕の提案
「俺の兄は、眠り病にかかっている」
とユイジュさんは、神妙な顔つきで言った。
眠り病ってなんだろう? 眠りっていうぐらいだからずっと寝ているのかな?
「その顔は、どんな病気かわかんないって顔だな」
ダダルさんの言葉に、その通りと僕は頷く。
「まあ言葉の通り、寝て起きない病気だ。原因はわからない。目を覚ます方法も実はよくわかってないんだが、唯一絶対に目を覚ますというのが、ドリームバードの羽根のお香だ。そのお香は眠らせる効果と起こす効果両方を持ち合わせている」
「え? じゃ、あの巣ってドリームバードの巣だったの?」
「いや違うだろう。ただその鳥は、稀に他の鳥の巣に卵を産むらしい。殻もあっただろう? 無事孵化したようだな。ドリームバードとバッティングしなくてよかった」
とダダルさん。
ドリームバードを見てみたい気もするけどね。
「あ、ドリームバードに会うと眠らされちゃうの?」
「子育て中の鳥は、気が荒い。殺されていただろうって事だ。まあ子供のエサだな」
「え~~。僕はミミズじゃないけど」
「君は、妙な運がついて回っているようだな」
ボソッと、セードさんが言った。
妙とはどんな運だろう?
「まあそう言う訳でその羽根は欲しいが、結局自分で見つけない限りは、お香にできないってわけさ」
「もしかして借金って、そのお兄さんに関係あるの?」
前にそんな事聞いたけど。
「あぁ。色んな方法を試したんだ。そのお金だな」
「そうなんだ。眠ってからどれくらい経つの?」
「一年過ぎたな……」
一年……か。そんなに人って寝れるもんなんだ。
「俺はもう諦めたからいいんだ。だからここに残った。兄の面倒は母親みていてな。たまに帰れる様にまったりしてるんだ。俺が死んだら収入がなくなるからな」
あ、そっか。ぎりぎりでもいいからって事なのか。
「その羽根は売るといい。そうしたら一生困らないだけのお金が手に入る。チェトのお肉で悩む事もない」
「え? あ、そっか」
『………』
僕は、膝の上にいるチェトを見た。何故かジーッと僕を見ている。お肉が欲しいのかな?
実際一生困らないお金ってピンと来ないんだけど……。
『われは、人が一生困らないお金を手に入れたらどうなるか知っている。大抵の者は、何もしなくなり傲慢になる。そしてお金で人を動かし堕落した別人へと変化する。われは、ロマドにそれを望まない。今まで通りスキルを増やして、魔力を増やして欲しい!!』
「………」
なんかチェトが難しい事を言っているけど、お肉より魔力って事だよね? まあお金は、ユイジュさんと一緒でギリギリでもいいかも。結構今回の仕事も楽しかったし。
だったら……。
「ねえ僕から提案があるんだけど」
「提案?」
「犬コロが何か言ったのか?」
ダダルさんが聞くから僕は首を振った。
「チェトは、スキルを増やせって。でね、僕が錬金術を出来る様になれば、その羽根を使ってお香を作れるって事だよね? それまでユイジュさんが僕とパーティー組んでくれる事で、錬金術代って事でどう?」
「お前、錬金術できないんじゃなかったのか?」
って、唾が飛んでくるほどに、ダダルさんが驚いて叫んだ。ユイジュさんは、何故か固まっている。
「あのね、まだ覚えてないけど覚えるんじゃないのかなって事……」
「……はぁ?」
この提案だめかな?
これならいずれ魔法持ちさんと組むまで僕は、冒険者をやっていけると思うんだよね。
Aランク目指さないといけいないし。
「それって、逆に覚えないかもしれないけどって事だろうが……」
と、ボソッとユイジュさんが言った。
それもそうなんだけどさ。魔法を覚えられそうだからあり得ると思うんだけどなぁ。
「うーん。いまいち仕組みがわからないのだが、スキルって条件を満たしたら覚えるんだろう?」
「えっと。よくわかんないけど、レベルがあって、スキルを覚える事で熟練度が上がるみたいなんだ。熟練度が一定値まで貯まるとレベルが上がる。そうすると、覚えられるスキルが増えるみたい」
「それってスキル錬金ってレベル制って事か? かなり有能なスキルじゃないか!」
僕の説明が通じたのか、ダダルさんがまた唾を飛ばして来た。
「そうなの?」
顔を袖で拭きつつ聞く。
「そうなのって。スキルって二種類あるんだぞ? レベル付きとそうでないのと」
うーん? 熟練度の他に? 知らなかった。
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