第32話 スキルのオンパレード

 僕は木のてっぺんまで登って、巣を探す。


 あった! 自分がいる場所より上にある。たぶんあれだ。

 更に登って確認すると、僕が丸くなって寝れそうな感じ。突き刺さっている袋を引っ張って、巣の元へ持って来た。

 巣には、割れた殻や、鳥が集めただろう布、紙などのゴミだと思われるものから小さな色とりどりの鉱石がちりばめられている。


 鉱石はまだいいけど、このゴミみたいのも一緒に持って行っていいのかな? 一応丸ごとってなってるからいいか。何かの研究に使うのかもしれないし。


 袋からロープを出して、巣を袋に入れようとするもなかなか難しい。『持つ』のスキルがなかったら無理だったかも。落ちないようにしながらなんとか入れて、それからロープをくくり付けて……。って太いロープを結ぶのって難しい。


 ――『結ぶ』の条件が整いました。『結ぶ』を作成しますか?


 「はい!」


 ――『結ぶ』のスキルを取得しました。


 結び終わったらスキルを覚えた! ちゃんと結び直そう。


 ――『ほどく』の条件が整いました。『ほどく』を作成しますか?


 「え? これも? はい」


 ――『ほどく』のスキルを取得しました。


 変だな。結ぶのも解くのもレベル2が解放されてからやってるんだけど。条件ってなんだろう?

 『太いモノで結ぶ』『結んだ太いモノをほどく』が条件だった。


 よし綺麗に結べた。後は、地面に降ろすだけ。ゆっくりとロープを使って下へと降ろして行った。


 ――『降ろす』の条件が整いました。『降ろす』を作成しますか?


 「また覚えた! はい」


 ――『降ろす』のスキルを取得しました。


 「チェト、ロープを落とすからちょっと離れていて」


 『わかった』


 ロープが当たったら危ないからね。


 ――『落とす』の条件が整いました。『落とす』を作成しますか?


 「え? また? はい」


 ――『落とす』のスキルを取得しました。


 降ろすの条件は『高い所から物を使って降ろす』

 落とすは『高い所から物を落とす』

 だった。まああまりやらない事だからね……。今日はスキルの大収穫だ。


 さてと後は僕が降りるだけ。うん? 鳥の巣と同じようなモノが見えた。

 そういえば、去年のもあるっていっていたっけ?


 近づいてみると、やっぱり鳥の巣だった。

 どっちが今年のかわからないけどいいよね。

 あ、鳥の羽根だ。


 「そうだ!」


 僕は腰の採取セットから軍手と採取袋を取り出した。手に軍手をはめてその鳥の羽根を手に取った。

 これ七色なのかな? 

 掲げて見てみるもここが薄暗いからよく見えないや。まいいか。チェトとこれで遊ぼう!


 後は、この鉱石みたいのももらって。これも掲げて見てみる。これ水晶っぽい。何かガラスの様に半透明みたいな感じ。鉱石じゃないのかな?

 この殻ももしかしたらチェト喜ぶかな? 羽根と一緒で何となく七色っぽい。


 ――『チェック』の条件が整いました。『チェック』を作成しますか?


 「あ、これがチェックなんだ? やっぱり確認とかとの違いがわかんないや。まあいいか。はい」


 ――『チェック』のスキルを取得しました。


 『おーい。大丈夫かぁ?』


 あ、チェトが心配している。行かないと!


 「大丈夫だよ! 今下りるね!」


 僕は、軍手の着けたまま慌てて木から降りた。


 『何をしていたんだ?』


 「あ、これ?」


 軍手を見てチェトが聞いた。さすがチェト。よく気づいたよ。


 「あのね。チェトと遊ぶのにちょっと選んでたんだ。帰ったら遊ぼうね。って、もう夕方かぁ」


 空を見上げると夕焼けだ。


 『楽しみにしている。もう今日は無理っぽいけどな。それより大丈夫なのか?』


 「何が?」


 『ロープは袋にしまえないが……』


 「え……本当だ」


 そっか。袋にしまえないからロープも持たないとダメなのか。

 あ、そうだ! 袋にグルグル巻きにしよう!


 うんしょ。うんしょ。


 『何をしている?』


 「グルグル巻きにして一つにしちゃおうかなって思って」


 『持てるのか、それ?』


 「大丈夫だよ。持ち上げる覚えたし……太いから巻くのがちょっと大変だけど……」


 『そういう事だったのか。そんなスキルまであるのだな』


 「うん。何に使うんだって思っていたけど、便利だねスキルって」


 ――『巻き付ける』の条件が整いました。『巻き付ける』を作成しますか?


 「あ……」


 『どうした?』


 「スキル覚えた」


 『何!? そんなので覚えるのか!』


 「うん」


 ――『巻き付ける』のスキルを取得しました。


 「そうだ。巻きなおそう」


 もう最後らへんまで巻き付けていたけど、スキルを覚えたのなら綺麗に巻けるかもしれない。

 って、面倒だからロープから袋を引っ張ってスポッと抜いた。やっぱりゆるゆるだった。


 ――『剥す』の条件が整いました。『剥す』を作成しますか?


 「え……はい」


 ――『剥す』のスキルを取得しました。


 「ま、いっか。ぐるぐるぐる♪」


 『凄いな。先ほどとは大違いだ』


 チェトが褒めてくれた。

 きっとさっきのままだったらその内に袋がロープの中からずり落ちたかもしれない。巻き直してよかった。凄く綺麗に巻けた。

 これを持ち上げて……。


 「うわ~。このロープ汚いね……。そうだフードを被ろう」


 チェトとお揃いのたれ耳つきフードを被り、荷物を頭の上で持ち上げる。

 あぁ……この真っ暗闇の森の中を歩くのかぁ……怖いなぁ。

 森の中は真っ暗闇で吸い込まれそうだった。

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