第27話 チェトが似合うと言ったので

 ふう。今日は疲れたなぁ。

 僕はベットに横になっていた。今日はいっぱい報酬を貰った。強い敵を倒したからポイントまで多く貰えたけど、もうあんな目に遭うのは嫌だなぁ……。


 『大丈夫か?』


 「うん。大丈夫だよ。お風呂に入ってぽかぽかで眠くなってきただけだから」


 『体は痛くないのか?』


 「うん……」


 本当は、まだ痛い。でも、心配させちゃいけないからね。


 『我もヒールはできないのだ。すまない』


 「ううん。何言ってるの。大活躍だったじゃないか!」


 僕は上半身を起こしチェトを抱き上げる。


 「でも心臓に悪いからもうしないでね」


 『わかった。肉だけ食す』


 「うん。肉だけ……って、生肉はダメだからね! モンスターの肉も食べれるみたいだけど、火を通さないとダメだからね!」


 『生がいいんだか……』


 「だーめ!」


 『……はぁ。わかった。ところで魔力が少し増えたようだが、スキルを何か覚えたのか?』


 あ、そう言えば覚えたっけ。


 「えーと、着地に風魔法に……」


 『何、風魔法を覚えたのか!』


 「うん。木から落ちたら覚えた」


 『……取得条件がいまいちわからないな。まあいい。明日、練習をしてみようではないか!』


 「なんか、凄く嬉しそうだね?」


 『魔法を扱える様になれば、魔力もどんどん増えるだろう? スキルを覚えるより早い』


 「そうだけど。そんなに魔力が増えてほしいんだ」


 『まあな。我の力は本来の一割もない』


 「そっか。大丈夫だよ。いっぱいお肉を食べさせてあげるからね! 大きくなれるよ」


 『……お肉もそうだが、魔力の方がいいのだが』


 「本当は、お肉をいっぱい買ってあげたいんだけど、一年分の税金を忘れない為に、今日納めちゃったでしょう。で、明日はユイジュさんに装備を整えろって言われて、一緒に買いに行く予定だから。お肉買えるかな……」


 『我の話はいつになったら通じるのやら……』


 「うん? 何?」


 『いや、明日に備えて寝よう。装備品を買ったら魔法の練習だ!』


 「うん! 楽しみだね。風に乗って空を飛べたらいいね」


 僕は、横になった。瞼が落ちて来る。


 『それはできん』


 「え!? 出来ないの? なーんだ。つまんないなぁ……」


 『おい。ユイジュじゃなくても突っ込むぞ、その台詞は! 魔法を何だと思っているんだ!』


 「うーん……」


 何かチェトが言っているけど、眠くてダメだ。明日、一緒に……。


 「……空を飛……ぼう……ね……」


 『はぁ……。我も寝るか』


 とっても疲れていた僕は、チェトの寝顔を見ないまま寝てしまったのだった。



 「おはようございます」


 「おはよう。体はどうだ?」


 「大丈夫です」


 ダダルさんに聞かれて、まだ痛いけど平気だと答えた。チェトが心配するもんね。


 「まああれだ、今日は買い物行ってこい」


 「え? 見回りは?」


 「戻って来てから俺一人でしておくよ」


 「別に大丈夫だけど……」


 「ほらいいから行くぞ」


 「わかりました。じゃ、買い物に行ってきます」


 僕達は、建物の外に出た。


 「そう言えば、装備ってどこに売ってるんですか?」


 「冒険者用の装備は、この街にはないよ。一時間かけて移動」


 「あ、あの冒険者の街に行くって事?」


 「そういう事。買いに来ないから店なんて出さないだろう?」


 まあ確かに、冒険者がユイジュさん一人なら店なんて出さないよね。

 僕達は、馬車で移動して冒険者の街へと向かった。


 そこは、活気にあふれていたけど、何と言うか男ばっかり? おじさんばかりだった。


 「わあ……朝なのに酔っ払いがいる……」


 「朝も開いているからな。夜に仕事したやつが飲んでいる」


 本当にどこを見ても冒険者って感じだ。


 『ここは、酒臭いな』


 「うん。そうだね」


 でも思ったより綺麗だ。清掃されている。


 「あそこだ」


 装備屋は、大きな建物だった。中には、ごっつい鎧を着た人が買い物をしていた。


 「ロマドが着れそうなのはこれか?」


 これかって、それ子供用!


 「小さいと思うけど」


 「そうか? 見た目からもぴったりだと思うけど?」


 「ひど! 僕だって鎧きたい!!」


 「ふ~ん。じゃ、持ってみるか?」


 あれ? 反対されなかった?

 って、鎧って重い……。


 「俺は、こんなの着たくないけどな」


 「僕もやっぱり鎧じゃないようがいいかな……」


 「だろう?」


 「あ、じゃこれなんて……あれ? これって……」


 「女性ものだな。いいんじゃないか? 大きさが」


 「え~~!!」


 「これ軽いな。俺でも着れる大きさがあれば着たいけど、お前が着れ!」


 絶対着たいなんて思ってないよね?


 『似合うと思う。もうそれにしろ』


 「そう? チェトが言うならこれにしようかな」


 「待て、まじでそれにするつもりか……チェトはきっと……」


 「チェトがこれがいいって!」


 薄い空色に縁取りは紺。襟が丸首だけど、上下セットでベルト付き。ベストみたいのに、フードまでついてる。


 「マジかよ……チェト、お前……俺は知らないからな」


 って、何故かユイジュさんがチェト話している! ユイジュさんも話せるようになったのかな?


 「ねえ、チェトどう?」


 『似合う! さあ、風魔法を練習しに行くぞ』


 「うん」


 着替えて僕は、そのまま着て行く事にした。なぜか横でユイジュさんが、ため息をついていたのだった。

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