第26話 食いしん坊のチェト
ドンッ!!
凄い衝撃が僕を襲った。そして、激痛も襲い掛かって来た。なんかクルクル回っている感じがする……。
――『体当たり』の条件が整いました。『体当たり』を作成しますか?
あぁ。そっか……僕体当たりしたんだ――。
□
「よかった。目を覚ましたか」
目を開けると心配そうに、ユイジュさんとチェトが僕を覗き込んでいた。
――『体当たり』の条件が整いました。『体当たり』を作成しますか?
――『土魔法』の条件が整いました。『土魔法』を作成しますか?
なんか、作成出来るのが一つ増えてるんだけど?
「大丈夫か?」
「はい……」
――『体当たり』のスキルを取得しました。
――『土魔法』のスキルを取得しました。
「しかし驚いたぞ。かなり転がったからな。地面が土でよかった」
安堵したように、ユイジュさんが言った。
あぁ、そういえば、土魔法の条件って土にまみれるだったっけ?
「チェト大丈夫?」
『我は大丈夫だ。すまないな。我の力不足で』
「ううん。チェトが無事ならよかった」
「お前な……。まあでも助かったよ。吹き飛ばしてくれたおかげで、一瞬モンスターが気を失った。俺が心臓を突き、チェトが首にかぶりついて倒した」
「チェト大活躍だね!」
「あぁ。そうだな。起き上がれそうか?」
「うん……。いててて……」
「たぶん、打ち身だ。暫く痛いだろう。キノコも採取したし帰ろう。おぶるか?」
「え? いや、大丈夫です」
起き上がって驚いた。オオカミ達が血だらけだった……。
「ひい……」
「あぁ。牙とか爪とか、色々取ったからな……」
僕が何に驚いたのかわかったユイジュさんが説明してくれた。僕は、採取だけにしておこう。
うん? って、よくみると、チェトが赤黒く染まっている……。
「ぎゃ~!! チェト! どうしたの!?」
「その犬、恐ろしいな。……肉を食っていたぞ」
「え~~!! 生肉食べたの? どうして止めてくれなかったのさ! おなか壊したらどうするんだよ!」
「げ、元気だな……。そう思うならもう連れてくるな! 犬まで面倒みないって言っただろうが」
「もうチェトの食いしん坊! ちゃんと買ってあげるって言ったでしょう! もう絶対に生肉なんて食べてはダメだからね!!」
『……だから我は犬ではないと言っているのに』
「犬じゃなくてもダメなの! おなか壊すでしょう!」
「本当に会話しているみたいだな」
「え? 本当に会話してるけど?」
スキルを覚えるのは信じたのに、チェトと会話しているのは信じてないの?
「それって、チェト限定? それとも犬限定?」
「チェト限定だと思うけど? 他の犬が話しているのは聞いた事ないから」
「なぜチェト限定?」
なぜ? 本当はスキルじゃないから? うん? でもなんでチェトだけ話せるんだろう?
「なんで?」
「俺が聞いているんだけどな。まあ、いっか。話せるならもう今日みたいな事はするなとちゃんと言っておけよ」
「うん。言い聞かせるね!」
『はぁ……どうやったら通じるのやら』
「まったく。凄く汚れちゃってるじゃないか!」
「お前もな……」
僕も? あ、本当だ。
全身土だらけ。転がったって言っていたっけ。
「しかし命拾いした。ありがとうな」
「うん? 倒したのユイジュさんでしょう?」
「俺だけじゃ倒せる相手じゃなかった……」
「えぇ!!」
「驚いたよ。一応ここは、Eランクの場所だからな。Eランクのモンスターまでしかいない事になっていた。あれはAランク」
「うん。チェトもそう言っていた」
「チェトも? 今更だけど、チェトって本当に犬か?」
「うん? 犬だよね? 猫に見えないよね?」
「いや、そうではなくて……」
はぁっとユイジュさんがため息をついた。
『普通ならそう思ってくれるんだけどな……はぁ……』
そしてチェトまでもため息をつく。
そういえば、前にチェトが犬じゃなくて……
「セイジュウ?」
『まて、それは内緒のはずだ』
「あ、やっぱり! あってた?」
『あってた? じゃない! 余計な事を言わなくていい!』
「あ、ごめんなさい。怒らないで~」
「聖獣? ……か」
「うん? 何?」
「いや、戻るぞ」
「チェトおいで」
『我は歩けるぞ』
「ダメ! 勝手に行っちゃうから抱っこする!」
「そうしとけ」
体中痛いけど歩ける。チェトを連れて帰らないとね。それにしてもダッシュ覚えておいてよかった。
僕達は、森を後にした。
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