第28話 みんなが振り向く可愛いチェト!?

 「ふんふんふ~ん♪」


 僕は、スキップしてユイジュさんの横を歩く。

 装備も買い替えたし、これから魔法の練習だ。空を飛べるかな?


 「頼むからここでスキップはやめてくれ……」


 「え? そう?」


 スキップしていたら楽しい気分になるのにね。


 「ユイジュじゃないか」


 声を掛けられ振り向けば、ちょっとごつい人だった。何か胸の辺りだけの鎧みたいのをつけ、腰には重そうな剣を下げている。年齢も僕達より十は上にみえるけど、ユイジュさんの知り合い?


 「ツオレンさん。ご無沙汰してます」


 軽くユイジュさんは、頭を下げた。知り合いだったみたい。


 「ふ~ん。Aランクのモンスターを倒したと聞いたけど、女をはべらせるなんてなぁ」


 昨日のAランクのオオカミのモンスターの事かな? うん? 女をはべらせる?


 「ねえ、女をはべらせるって?」


 「はぁ……お前の事だろう」


 意味がわからないのから聞いたのに、ユイジュさんは僕の事だと言う。どういう事だろう?


 「うん? 女だよな? はぁ? 男!?」


 僕を見て言うので、頷いた。もしかして女だと思ったの?


 「男ですけど? 女に見えますか?」


 「見えますかって……そのいかにも女が好みそうな刺繍入りの服に、犬を抱いてりゃ女だと思うだろう?」


 って、ツオレンさんが言った。

 酷いなぁ。チェトを抱っこしていたぐらいで女だなんて!


 「だからやめとけって言ったんだ……」


 ボソッとユイジュさんが呟いている。

 あれ? 勧めていなかったっけ?


 「もしかしてこいつ、こう見えて強いとか?」


 「……見たまんまだな」


 ツオレンさんの質問にユイジュさんがそう答えたんだけど、それって強いの? 弱いの? どっち!?


 「なるほど、そのままな。で、借金を返すメドついたか? Aランクを倒したんだったらそれなりに入っただろう?」


 借金!? ユイジュさんって借金があったの?


 「あなたには関係ないでしょう」


 「だな。……まあ、こっちに来れる日が来るといいな」


 そう言うと、じゃなとツオレンさんは去って行った。


 「行くぞ」


 「あ、うん。ねえ、僕って見たまんまだと強そうに見える?」


 「はぁ? 見たまんまだと冒険者にすら見えんわ!」


 「えぇ!! 酷い。冒険者用の服を着てるのに!」


 「あのな。いかにもファッション重視の格好で犬を連れているだけで、十分弱く見える」


 「え~。これ勧めたじゃないか!」


 「冗談を真に受けるな! って、決めたのはチェトの一声なんだろう? 俺の意見じゃないだろう。それに最後はやめろっていっただろう」


 「うん? そうだっけ? そんなに女性に見えるかな?」


 よく見れば、そでとかに~~~~みたいな刺繍はあるけど、ボタンも◇だったりするけど、フードにチェトと同じくたれ耳がついていたりするけど……。


 「チェトとお揃いなのになぁ」


 「もういい……なんか服の話をすると疲れる。それより今日はゆっくり休めよ」


 「え? なんで? 魔法の練習は?」


 「うん? 魔法の練習?」


 『それは我との話だろう』


 「あ、そっか。そうだった。ユイジュさんは知らなかったんだ。じゃチェト一緒にやろうね」


 『そうだな。あまり人がいなそうな場所を探して……』


 「一緒にやろうねじゃない! 説明しろ!」


 なんか、凄まれたんだけど……。


 「うーん。風魔法を覚えた」


 「……はぁ?」


 「だから風魔法……うぅうう」


 突然口をユイジュさんに塞がれた!?


 「声が大きい! 詳しくは、あっちに戻ってから聞く」


 「ぷはぁ。もういきなり口を塞がないでよ」


 「あぁ、悪い、つい。ここは、聞き耳を立てているやつもいるかなら」


 『結局こうなるのか……』


 「ダダルさんの所に行くの?」


 「そうだ。とりあえずそれまでは、その話は口にするな。いいな」


 「……じゃ、チェトのお肉先に買おうか」


 「なぜ、そうなる!?」


 「え~~。だって、お金余ったら買う予定だったし」


 「いいからさっさと帰るぞ! 向こうでも買えるから!」


 「チェトごめんね。少し待ってね」


 『わかった。何となくこうなる気はしていたから問題ない』


 「チェトは賢いね~」


 「はいはい。行くぞ」


 「ふんふんふ~ん♪」


 「だからスキップして歩くな!」


 スキップぐらいいいじゃないか。あぁ、この冒険者の街はつまらないなぁ。

 って、さっきからみんなチェトを見ている。チェトって可愛いから人気者だね。


 「早く返りてぇ……」


 ボソッとユイジュさんが呟いた。

 ユイジュさんもこの街はつまんないみたいだね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る