第20話 チェトの正体

 「ふんふんふふん♪」


 『ご機嫌だな。そんなにランクアップして嬉しかったか?』


 あわあわの体から顔だけだした可愛い姿のチェトが言った。僕は、うんうんと頷く。


 「おかげでレベルアップしてるはずなんだ~」


 『レベルアップ? レベルアップと言えば、ロマドは魔法を使ってないよな? それなのに魔力が増えて行っているのはなぜだ?』


 「え? 僕の魔力増えてるの?」


 そう聞くと、そうだとチェトは頷いた。

 僕の魔力って増えてるんだ。うん? あれ? 何でそんな事わかるの?


 「なんで魔力が増えたってわかるの?」


 『ランクもEになったし、部屋に行ったら我の事を話そう』


 「え? それって長い話かな。今日は……」


 ジッとチェトが僕を見つめている。聞いてくれないのかと、悲しい瞳で見つめている!


 「聞きます! チェトの話なら夜通しでも聞くから嫌わないで~」


 『嫌いにならないから大丈夫だ』


 「よかったぁ。じゃ、部屋に戻ったら話を聞くね」


 僕は、チェトのあわあわをお湯をかけて流した。そして拭こうとしたとたん、またもや体を振るって水をはらわれた。


 「だからそれ待ってって言ってるのに。また僕、濡れたじゃないか……」


 『いつも思うのだが、言っている台詞と顔の表情が合っていないぞ』


 だって何してもチェトは可愛いんだもん。



 ブラッシングまで終了したチェトはふわっふわなので、モフモフタイムです。あぁやわらか~。


 『話してもいいか?』


 「どうぞ」


 僕は、ベットに座りチェトを膝の上に乗せて撫でながら言った。


 『実は我は、聖獣なのだ』


 「え? セイジュウって名前だったの?」


 『そうではなく、ロマドが人間であるように、我は聖獣と言う事だ』


 「うん? それって犬じゃなくて聖獣って事?」


 『そうだ』


 犬にしか見えないけどな。あ、話せる犬って事かな?


 『で、我はロマドと契約状態にある』


 「契約!?」


 いつしたんだろう?


 「あ! あの時か!」


 従えた時だ。


 『そうだ。あの時だ! 名をつけてもらえて、魔力を体内に取り込む事ができ、九死に一生を得たのだ』


 「え? もしかして魔力がなくなると死んじゃうの?」


 『まあそんな感じだ』


 「あれ? 犬って魔力耐性ないんじゃなかった?」


 『だから聖獣だと言っている』


 なるほど。魔力がある犬を聖獣というのか? でも犬のお世話の本には書いてなかったけどなぁ。あ、ダダルさんに聞いてみよう。


 「なるほど。で? なんで僕の魔力が増えてるの?」


 『それがわからないから聞いている』


 「うーん。あ! チェトが使ったからじゃない? 取り込んだんだよね?」


 『取り込んだと言ったが、共有と言った方が合っている。我の魔力がなくなってもロマドにあれば大丈夫なのだ』


 「よくわかんないけど、原因はチェトではないと。なんでだろうね?」


 『思い当たる事はないのか? 魔法に似た行為をしたとか』


 「うーん。スキルを使ってるからとかかな?」


 『採取の事か?』


 僕は違うと首を横に振った。


 「本当のスキル名は、スキル錬金なんだよね。採取で経験値が増えたし、紛らわしいから採取ってギルドカードには記載してある」


 『なんだと! スキル錬金保持者だったのか! 道理でおかしいと思った!』


 「うん? スキル錬金の事を知っているの?」


 『あぁ。会ったのは初めてだけどな』


 まあそりゃそうだろうね。生まれて間もないんだから。


 「でも、チェトは物知りだね。ギルドの事とかも知ってるみたいだし」


 『まあ、長く生きているからな』


 うん? 長く? どういう事?


 『レベルアップしたとか言っていたな。今なんレベルだ?』


 「あ、確認してないけど、3レベルになってると思う」


 『だったらレベル2のスキルを一つ覚えると魔力は2増えていたはずだ』


 「え~~!! スキルを作っただけで魔力増えていたの?」


 『そう聞いた。スキル個数×レベルだとな』


 チェトって凄い! 僕よりずっと物知りだよ!

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