第18話 後ひとつ

 「もきゅもきゅもきゅ♪」


 恒例のシャンプータイム。

 この毛があわあわな姿のチェトも可愛いんだよね。

 指の先も洗って。あぁ、肉球がむにゅっとしていて可愛い。

 って、爪がにょきっと出て来た。


 「そういえば、爪切りもしないとダメだった。爪切りも買わないとなぁ」


 『それはダメだ!』


 「え? なんで? ちゃんと切らないとダメだよ」


 『外を走り回れば切る必要はない!』


 「うーん。そうなのか」


 うーん。爪のケアの所をあとでちゃんと読んでおこう。


 「よし、じゃお湯かけるよ」


 ジャバーっとかけると、チェトの体を包んでいた泡が消え、とたんに小さくなったように見える。


 「うわ。だからそれ、一旦拭いてからしないと、僕びっしょりなんだけど……」


 チェトが拭く前に、水をはらったので思いっきり濡れました。


 ――『洗う』の条件が整いました。『洗う』を作成しますか?


 おぉ! これは、チェトを洗っただけなのに。スキルをゲット! チェトさまさまだね。


 「はい」


 ――『洗う』のスキルを取得しました。


 そして、チェトの体を拭いていると、また出現した!


 ――『拭く』の条件が整いました。『拭く』を作成しますか?


 「はい」


 凄いな。いっぺんに三つも覚えたよ。


 ――『拭く』のスキルを取得しました。

 体を拭いた後、タオルにくるんで自分の部屋に向かった。

 そして、温風機に立たせる。これはお隣さんから譲って頂いたものだ。昔猫を飼っていた時に使っていたもので、横に一か所だけ穴が空いていて、そこから顔だけださせ、スイッチを押すと全体から優しい温風が出て来る優れもの!

 これで毛を乾かして、後はブラッシングするだけだ。


 『人間というものは、よく考えつくもんだな』


 「うん? これ? そうだよねぇ。犬を飼い始めたって言ったら使わないからってくれたんだよね。親切にしておくもんだね」


 隙間から中を覗くと、長い毛が凄い事になっている。面白い。

 あっという間に、乾いて完了。

 出て来たチェトは柔らかそうなハリネズミ状態。それも可愛い!

 ブラシで毛をとかすと、チェトは気持ちよさそうにする。そして、フワフワのチェトの出来上がり!


 色んなチェトが見れるのは、僕の特権だ!


 ――『ブラッシング』の条件が整いました。『ブラッシング』を作成しますか?


 え? これも? やったぁ!


 「はい」


 ――『ブラッシング』のスキルを取得しました。


 スキルっていくつになったかな? もうそろそろのはず。


 『しかしここまでしてもらったのは、ロマドが初めてだ』


 「うん? そう。よかった」


 もしかしてあそこにいたのは、育ててたけど捨てられたからなのかな?

 こんな可愛いチェト捨てるなんて!!


 「僕は、絶対離さないからね」


 チェトを抱きしめギュッとした。あぁモフモフ。

 そして抱きしめたまま、スキルのチェック。あ、それよりも熟練度を見た方が早いか。


 久しぶりにスキルカードをチェックした。熟練度は950だ。


 「後、ひとつ!」


 そうだ。速読にしよう。ベットにごろんと横になり、冒険者の心得を目で追って読む。これで、レベル3が解放だ!



 『ロマド。今日は見回りに行かないのか?』


 ほっぺを前足でむにゅっとされて目を覚ました。あぁ、チェトが僕を起こしてくれた。


 「ありがとう、寝過ごすところだったよ」


 上半身を起こすと、何かがベットの下に落ちた。拾い上げると……初心者の心得が落ちていた。


 「あー!!」


 『どうした?』


 「ううう。読んでいるうちに寝ちゃった」


 『その様だな。割とすぐに寝ていたぞ』


 「………」


 起こしてほしかった。

 時間もないし、帰って来てから読むかな。やっぱり横になって読むのはダメだね。


 さあ、今日も張り切って行こう!

 帰ってきたら速読だ。

 そして、今日でレベル3を解放だ!

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