第16話 チェトとの(小)冒険!

 僕は今、むくれている。


 朝起きたら思ったよりチェトは元気だった。ミルクに浸したパンをいつも通り食べ、撫でると嬉しそうに尻尾を振ってくれた。

 そのチェトを連れて冒険者商会に来てダダルさんに、昨日の事を話したんだ。そうしたら笑い出した!


 「いや、ごめんごめん。それリンリン草じゃないだろう?」


 「え? でも……」


 「あのなリンリン草は確かに毒草じゃない。だが魔力がたっぷりと含まれている草なんだ。それを調合する事により、適度な魔力を摂取できる薬にするんだ」


 僕はダダルさんの説明に頷く。


 「でな、魔力と言うのは、自分の許容量、つまり最大魔力を超えて摂取すると中毒になる。酒と一緒だな。酒と違うのは、魔力は魔法を使わないと消費出来ないって事だ」


 「あ、なるほど。で、そのままにしておくとどうなるの?」


 「死ぬ」


 「え~~!!」


 「特に魔力を持たない者は耐性がないから直接摂取した場合、数十分で死ぬと言われている。犬は普通、耐性がないからこうやって生きているわけがない」


 「え? じゃあれってリンリン草じゃなかったの? よかった~」


 「いいか。勝手に摘んで持って帰るなよ。そういう職業や冒険者以外の者が勝手に売買した場合、罪に問われるからな」


 「それだと僕、罪に問われないと思うけど?」


 「まあそうだが。知識もないのに危ないだろうって事だ。もっと実践を積まないとな」


 「はい! チェトの為にもそうします」


 って言ったらゲラゲラとダダルさんは、笑い出した。何がおかしいんだろう?

 チェトもカウンターにの上に大人しく座って首を傾げている。かわいい。


 「しかし、見た事ない種類の犬だな。どこかの国の犬か?」


 「さあ?」


 「毛、サラサラだな」


 「うん。毎日洗ってブラッシングしてます」


 「お前、結構マメだな。で、何食わせているんだ?」


 「うん? ミルクに浸したパン」


 「そんなんで栄養足りるのか? まあまだチビだから大丈夫か」


 ダダルさんがチェトを優しく撫でる。が、驚いたのかぴょんと僕にジャンプしてきた。


 「……いや、俺は怖くないぞ?」


 「あはは。僕と母さんしか知らないからビックリしたのかもね」


 「まあ、無事でよかったな。ほら一緒に見回り行って来い」


 「はーい! 行ってきます!」


 これってもしかして、チェトとの小冒険! じゃないか?


 「ふんふんふふん♪」


 僕はスキップして進む。その横を嬉しそうにチェトも歩く。


 「ここ覚えてる? チェトと出会ったところだよ」


 『覚えている』


 「そっか。覚えてるんだぁ……えー!! しゃべった!?」


 『直接話しかけている』


 「え? そうなの? 犬にもスキル持ちっていたんだ……」


 『……まあいい。誰にも言うなよ』


 「うん。二人だけの秘密だね!」


 『単純でよかった……』


 「え?」


 『いや何でもない。それより我は肉も食べたい』


 「……もしかして、パンじゃ物足りなかった? でもなぁ毎日肉となると、お金が……」


 『我、自身で狩るがよいか?』


 「ダメ! 絶対にダメ! 危ないからダメ!!」


 『……わかった。取りあえずロマドがEランクになるまで待つ』


 「……え? チェトって人間の事がわかるの? 賢いね!」


 『で、あれはリンリン草ではなかったから食べてもよいのだな?』


 「え? でもお腹壊すかもよ」


 『いや、逆によくなった! もっと、食べたい!』


 って、クリッとした可愛い澄んだ青い瞳で見つめられたら……。青!?

 僕は、ひょいとチェトを抱き上げた。


 「チェトの瞳って青いんだね。へ~。綺麗。全然気づかなかったよ」


 『我の話を聞いているか?』


 「なんだっけ?」


 『リンリン草……みたいな草を食べたい』


 「だーめ! ちゃんと調べたモノじゃないと」


 『そうか。わかった。従う』


 「よし、じゃ、冒険再会!」


 僕は、チェトを下ろした。


 「あ、待って!」


 走り出したチェトを僕は追いかけた。ダッシュを覚えたからチェトと一緒に走っても疲れない! 覚えてよかった。


 『ロマドは、走るの速いな』


 「うん。ダッシュあるからね~」


 僕は、チェトとの小冒険という見回りを堪能したのだった。明日も連れてこよう!

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