第15話 大事件発生!

 リーン、リーン。


 ぴょん、ぴょん。


 「あはは。凄い反応」


 リンリン草を鳴らすと、チェトは物凄く目の色を変えてとんで来た。そして、ぴょんぴょんとジャンプ。あー、なんて可愛いんだ!

 必死になってリンリン草に向かってジャンプしている。枝投げより食いつきがいい。


 外遊びを終え、体を洗った後にブラッシング。それは僕にとっては、楽しく安らぎの時間。それにこのぴょんぴょん時間も加わりそうです。


 リーン、リーン。


 ぴょん、ぴょん。


 「ロマド、ちょっと来て」


 「はーい。ちょっと待っててね」


 これどうしようかな。机の上に上がれないよね?

 僕は、机の上にリンリン草を置いて、母さんの元へ行った。


 「ごめんね。これ開けてもらえる?」


 「もうまた? きつく締めすぎなんだよ」


 ジャム瓶だ。ジャムを作るのが母さんの趣味。ちょっとべとつくせいか、開けづらい。だからいつも僕が呼ばれる。

 カポッ。


 「開いた。はい」


 ――『開ける』の条件が整いました。『開ける』を作成しますか?


 え? うーん。この世の中には、こんなスキル存在するんだからなぁ。


 「はい」


 ――『開ける』のスキルを取得しました。


 「ありがとう」


 「じゃ、僕戻るね」


 そうだ。お金が貯まったら開けやすい瓶をプレゼントしよう。


 「お待たせ、チェト……え?」


 ルンルンで戻った僕は、ドアを開け驚いて固まった。

 届かないだろうと思っていた机の上にチェトが上がっていたんだ。そして、リンリン草をむしゃむしゃと食べているじゃないか!!


 「わー! っぺ、しなさい! 口から出して!」


 と、チェトを抱き上げた。そしてリンリン草を引っ張る。

 それ、おいしくないだろう? 薬草なんだから苦いと思うのに、咥えて離さない。

 リンリン草は、ちぎれた!


 「お願いだから口を開けて!」


 嫌がるチェトの口を開けさせようと奮闘するも、もぐもぐをやめてくれない。


 「うわーん。チェトお願いだから食べないで! 死んじゃうから食べないで!」


 薬草は、毒だと聞いた事がある。調合する事で薬にするらしい。

 僕はなんてバカだったんだ。このままだとチェトが死んじゃう! び、病院へ! って、この村に動物病院なんてない!


 「チェト!! 死なないで!! うわーん」


 どうしていいかわからずに泣いていると、腕の中のチェトが大人しくなった?


 「チェ……ト? チェト~~!!」


 僕は更に、わんわん泣いた。

 母さんが何事かと来たけど、どうしようもなかった。そもそも病院に連れて行くだけのお金もない。


 ――『泣く』の条件が整いました。『泣く』を作成しますか?


 こんな時になんなんだ。


 「はい……ぐす」


 と思いつつも答えた。


 ――『泣く』のスキルを取得しました。


 うん? あれ? 少し落ち着いた。


 「大丈夫? ロマド」


 「うん……。もう遅いし明日、街の病院に連れて行くよ」


 母さんは、頷いた。そして、お休みと部屋を出て行った。

 チェトは、まるでぐっすりと寝ている様に見える。


 で、泣くの効果って何?

 泣く事で、落ち着きを取り戻す事が出来る。だって……。それで僕は落ち着いたのか……。なんか、複雑だ。


 そう言えば、リンリン草って魔力を増やす薬になる薬草だった。毒じゃないかも。明日、病院に行く前にダダルさんに聞いてみよう!

 冷静になった僕は、記憶した説明文を思い出した。うん。落ち着くって大事だ。

 大丈夫だよね? チェト。ごめんね、チェト。


 僕は、チェトを抱きしめ眠りについた。そして、不思議な夢を見た。


 チェトが僕とお話をする夢。


 『ロマド。ありがとう』


 なぜかお礼を言われた。苦しめた僕に……。

 僕こそありがとう。楽しい時間をありがとう。

 って、死んだらダメだからね~~!

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