第14話 チェトの為

 「ほら、チェト。えい!」


 僕は、枝を投げた。チェトが嬉しそうにそれを追いかけて行く。


 Fランクの間は、見回りだけしかないみたいなので、早く帰って来れる。帰って来るとチェトが思ったより元気だったので、外遊びだ。

 近くの公園で枝を投げては拾って来る遊びをしている。楽しいらしくて、中々やめようとしてくれない。


 「腕痛くなってきたなぁ」


 でもかわいいチェトため、飽きるまで付き合うよ!


 「そーれ!」


 タタタタタとチェトは駆けて行く。


 ――『投げる』の条件が整いました。『投げる』を作成しますか?

 ――『誘導』の条件が整いました。『誘導』を作成しますか?


 うわ、びっくりした。


 「両方ともはい」


 ――『投げる』のスキルを取得しました。

 ――『誘導』のスキルを取得しました。


 投げるはわかるけど、誘導って……。


 「よしよし」


 枝を持って来たチェトの頭を撫でる。そしてまた枝を投げた。

 あ、軽い。しかも、さっきより遠くに飛んで行ってしまったけど、チェト大丈夫かな?

 僕も駆けだした。

 どこまで飛んだ?


 チェトは、枝を咥えて戻って来た。


 「チェトは目がいいなぁ。ほーれ」


 今度は手加減して飛ばす。

 こうして日が暮れるまで遊んだ。


 疲れたのか、体を洗ってやってブラッシングしていたらチェトは寝てしまった。

 って、僕も疲れたなぁ。

 あ、そうだ。誘導ってなんだ?


 生き物を導く事30回で『相手を誘導しやすくなる』らしい。って、何に使うのこれ?



 「おはようございます」


 「来たか。今日からは、一人で見回ってくれ」


 「へ? えぇ!」


 冒険者商会に入った途端、ユイジュさんに言われた!


 「うわーん。見捨てないで!」


 「違うわ! ちょっと懐が寂しくなったから遠出する。2、3日で戻るから。誰かが一日一回しなくてはいけない事になってるから頼んだぞ」


 「そうなんだ。よかった」


 「形式上だからあの場所で、普通はモンスターはでない。誰かさんみたいに連れてこなければな」


 「あ、僕達の出会いの時の事だね」


 「美化するな!」


 「……してないけど」


 「じゃ頼んだぞ」


 「はーい。いってらっしゃい。お土産待ってるね!」


 「遊びに行くんじゃない!」


 って、どこまで行くのかな?


 「あははは。お前達見てると飽きないな。ほれ行ってきな。終わったら犬ころと遊ぶんだろう?」


 「うん。じゃ行ってきます」


 まあ道は覚えたし。ユイジュさんの言う通り、やる意味あるのって思ったのも事実。一応街は塀で囲まれている。その周りをただぐるっと一周するだけ。その道も結界石が埋め込まれている。

 すぐ横が森って所が多いけど、獣の鳴き声なんて聞いた事が無い。小鳥の可愛いさえずりが聞こえるぐらいだ。


 そうだ! そう言えば、この森にリンリン草があったはず。文は覚えても絵は覚えられないからなぁ。

 あった。絵師が書いただろうリンリン草が載っていた。

 リンリンと綺麗な音がする草らしい。その音の元になってる部分が、薬になるらしいけど……。


 僕は、森の中へ入った。どこかなぁ。背が低いからかきわけないと見えないか……あった!

 スポッと抜いた。


 リーン。


 本当に草とは思えない音色だ。

 大きさによって、微妙に音が違うらしいから大きさが違うのを探そう。

 チェトへのお土産だ。喜んでくれるかな? それともこういうのには、興味がないかな~。

 あった。さっきより大きい! 他は? あぁ、これは小さい。 あ、ここにも。って、色違い?

 リンリン草は白いけど、これは青い。違うのかな? あ、亜種か。色違いも存在するだって。

 もっと探そう!


 ――『探す』の条件が整いました。『探す』を作成しますか?

 ――『見つける』の条件が整いました。『見つける』を作成しますか?


 びっくりした。夢中になっていたら突然現れるんだもん。


 「両方ともはい」


 ――『探す』のスキルを取得しました。

 ――『見つける』のスキルを取得しました。


 うーん。どう違うんだ?


 探すは、探し出すのが得意になる。

 見つけるは、発見しやすくなる。


 ……同じじゃないの? これ? まあいいや。結構覚えたよね。レベル3まで後少しかも。

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