第34話 キュウの かいたくちの いちにち(ごご)

「これー」

「グウ」


 さんにんでえらんでると、ガウとクァオがふくをもちあげた。おきにいりのがみつかったみたい。

 ふたりのおててはどうぶつのままだから、わたしがきせてあげる。


 ガウのふくは、おおきなしろいぬのを、からだにまきつけるように、きんいろのピンとかボタンでとめたもの。まちにあった、せきぞうがきてる、むかしのふくそうみたいだけど、せのたかいガウがきるとかっこいい。

 クァオは、そでがなくて、こしをおびでとめる、ピンクいろのふくとスカート。ゆったりしてて、そでがあったらカエデのふくにちょっとにてる。スカートはきれめがついてて、きんいろのしっぽがちゃんとそとにだせてた。しっぽのねもとには、あかいリボンもついてる。マールくんとおなじ、けがわのむねあてはつけたままで、そでのないわきのしたからちょっとみえてた。


 わたしも、きめた。しろと、みずいろの、かたからひざまである、ながいふく。せなかがあいてて、かぜがふいたらきもちよさそう。

 サンダルとベルトはそのまま。サンダルはロンのだし、ベルトはまえからつけてたくびわ。これはぶかぶかじゃないし、どっちも、つけていたい。


「あらあら、それではいけませんよ」


 ふくをきたじぶんのからだをみてたら、カエデがこっちにきた。


「ちゃんと隠すところは隠さないと。女の子なんですから」


 これだけじゃ、だめだったみたい。

 カエデが、ケープっていう、みじかいマントみたいなぬのをもってきて、わたしのかたにかけた。あしには、スパッツっていう、ぴったりしたふくをはかされる。

 ケープは、ふくとあわせたみずいろ。スパッツは、ロンのかみのけとおなじ、くろっぽいみどりいろ。


 クァオもスパッツをはかされてた。スパッツが、しっぽのつけねにひっかかってて、ちょっとずれてる。

 ガウは、わたしのケープと、のこったふくを、こうごにみてた。ガウもケープがほしいのかな。


「クックックッ、こんなのもありましたよ」

「こ、これはダメじゃろう……」

「ほわぁ~」


 クォンとリアラさん、ユニは、ずっとひもをいじってた。ひもも、けっこうしゅるいがあるみたい。

 だけど、クォンはいつのまにか、あたらしいふくをきてた。

 そでがみじかくてしろいシャツをきて、おなかのところをちゃいろいかわで、ぎゅっとしめてる。コルセットっていうみたい。

 おおきいむねのうえに、ベルトがいっぽん。こしに、ベルトにほん。こしのベルトには、カバンがついてる。

 クォンがわたしたちのほうをちらっとみて、おててをぽんってたたいた。


「ククッ。皆さんお好みの服も決まったようですが、そろそろ発声練習の時間です。ねえリアラ様?」

「んおう!? そう、そうじゃな!」

「あー、あたしも発声練習に行っていい? リアラの荷物の中におもしろそうな楽器があったしー」

「ではユニ様もこちらで。カエデ様はどうされますか?」

「皆さんが発声練習に行くなら、私は残った服を片付けてから夕食の下準備に入りますよ。この服はいったん私の部屋に置いておきましょうか」

「ククッ、お願いします。後で、予備の服などを取りにうかがいますよ」

「キュウさん。お料理のことを教えますので、空が赤くなるころに食堂に来てくださいね」

「あい!」


 わたしがへんじすると、カエデはにっこりしてうなずいた。


「それじゃ、いってみよー」


 ユニはわたしたちのまえにたって、ずんずん、すすんでいく。おおきなまるいたまのついた、きのぼうをふって。

 ぼうをいっかいふったら、たまのなかからシャカシャカって、ふしぎなおとがする。

 マラカスっていう、がっきなんだって。

 あれ、たのしそう。あとで、かしてもらおう。

 ユニのふくのなか、むねのあたりで、マラカスとおなじくらいの、まるいたまがふたつ、おなじリズムでゆれてる。

 あれって、ユニのむねなのかな。よびのマラカスなのかな。ユニはいつも、ぶかぶかのふくをきてて、むねのおおきさがよくわからない。あれがむねだったら、クォンよりもおおきそう。


 そとにでて、いつものひろばについたら、みんなでよこいちれつにならぶ。わたし、クァオ、クォン、ガウのじゅんばん。クーは、みはりとうばんだから、おやすみ。


「「「「LA~LALALALA~♪ LU~LULULULU~♪」」」」


 リアラさんのハープの、ぽろろろん、っていうおとにあわせて、みんなでこえをだす。

 きょうは、ユニのマラカスのおとも、まざってる。ぽろろろん、シャカシャカ。ぽろろん、シャカッ。

 たまにリアラさんがまちがえて、ハープからへんなおとがでる。

 ぽろろろん、ぽろろろん、びょん。


「……違うんじゃよ」


 リアラさんがぼそっといって、ちょっとまえからやりなおす。

 いつものリアラさんなら、ごあいきょうじゃよっていって、そのままつづける。

 おんがくも、こえも、すこしくらいまちがえてもきにしないで、つづけるほうがいいんだって。

 でもきょうは、びょん、ってすることがおおいし、ごあいきょうっていわない。

 かおもずっとあかいままだし、さっきのひもっぽいしたぎのこと、まだきにしてるのかな。

 そういえば、あのひも、すくなくなってた。だれか、もっていったのかな。だれだろ?


「うぬぬぬぬ……」


 しばらくつづけてたら、リアラさんがしたをむいて、うなりはじめた。


「だめじゃのう。今日は調子が悪いのじゃ」


 かおをあげたリアラさんが、わたしたちのほうをみる。みみが、まだちょっとあかい。


「すまんが、今日はここまでとさせてもらえんかのう」

「ありゃりゃ」

「ククッ。仕方ありませんよ。そんな日もあります」


 ユニはざんねんそうだったけど、クォンはきにしてなさそうにわらった。


「しょうがないかー。みんなどうするー?」

「私たちはご主人のところに戻りますよ。ククッ」

「そっか。キュウちゃんは?」

「アエエ、と、おうい」

「んー? ああ、カエデと料理ねー」


 うなずいたユニが、マラカスをしょくどうのほうにむけた。


「なら、私も一緒に行こっかな。おいしいのを食べさせてもらうって約束だったしー」


 クォンたちとわかれて、ユニとふたりで、しょくどうにむかってあるく。

 ユニはマラカスをふりながら。

 むねのほうからは、シャカシャカっておとはしない。あれは、ほんものの、むねみたい。

 しかたないから、むねじゃないほうのマラカスを、いっこかしてもらった。


 ざくざく、シャカシャカ。ざくざく、シャカシャカ。

 つちをふむのにあわせて、マラカスをふってあるくの、けっこうたのしい。

 こういうふうに、がっきをつかえるのも、りゅうからひとになったから。

 りゅうだったとき、ロンがつかってたラッパにいきをふきかけたけど、おとはぜんぜんでなかった。

 マラカスなら、ふるだけでおとがなるし、りゅうでもつかえるかな?

 でも、りゅうのおててだとマラカスをつかめないから、やっぱりむりかなぁ。うでに、ひもでむすびつけたら、どうかな?


「あらあら? 早かったですね」


 しょくどうについて、おててをあらってたら、ちょうりばでほうちょうをもってたカエデがこっちをみてびっくりしたこえをだした。


「発声練習が早く終わっちゃったからねー」

「あらら。それでここに来たのですね。ユニも?」

「あたしはー、おいしいものを食べたいからー」

「なるほど」


 ほうちょうをおいたカエデが、こまったようによこをむく。


「しかし、まだ準備ができていないのですよ。キュウちゃんには、お野菜を洗うところからやってもらおうと思ってたのですが、食材が倉庫から来てないのですよね」

「そのお肉はー?」


 ユニがむけたマラカスのさき、まないたのうえに、おおきなおにくがのってる。


「これは私の練習と、実験料理に使うつもりのものでした」


 そこまでいって、カエデがわたしとおにくを、こうごにみた。


「そうですね。予定を変更して、お肉の下ごしらえからやってみましょうか」

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