第4話 キュウが かわった ひ

<<飛竜キュウ視点 夜明け前の馬小屋>>


 きらきらしてた。

 ちょっとさむくて、きらきらがまぶしくて、わたしはそれでめがさめた。


 そとはまだくらくて、でもたまに、むらさきいろに、きらきらしてる。

 あのきらきら、なんだろう。みたことない。


 たいようのきらきらは、あったかいけど、あのきらきらはなんだかさむい。


 となりに、ロンがねてる。

 もうふをあたままでかぶってて、くろくてちょっとみどりの、かみのけだけがそとにでてる。

 あのきらきら、ロンなら、みたことあるかな?

 でも、ぐっすりねてるし、おこしたらかわいそう。


 けど、さむいなあ。

 さむいから、ロンにくっつこう。

 ロンはいつもあったかい。もうふといっしょなら、もっとあったかい。


 もうふのなかに、あたまをいれると、ロンのにおいがした。

 あったかくて、いいにおい。

 このまま、もうすこしねようかな?


 ロンのおなかのうえで、ロンのおかおをみたら、さむいきらきらがみえた。

 ロンのくびすじの、ふくのなかから、きらきらがはみでてる。

 きらきらしてるのは、ロンのせなか?


 ロンはくるしそうじゃないけど。いたそうじゃないけど。

 なんだかおかしい。やっぱりおこそう。


 ロン。ロン。


 おかおをなめると、ロンのあせのあじがする。


 おきて。おきて。


 ほっぺと、おめめと、おでこをなめる。


 ロンが、わたしのせなかをなでてくれた。

 いつもよりあったかくて、きもちいい。

 

「起きるよ。起きるから、目をなめるのをやめてくれ」


 ロンのこえ。いつものこえ。

 でも、きらきらはいつものじゃない。


 しんぱい。しんぱい。まだなめてたい。

 めはだめでも、はなならいいよね?


 ロンがめをあけた。まだねむそう。

 ねてるのに、ごめんね?


「おはよう、キュウ。今日は早起きだな」

 

 ロンのおはながぴくぴくしてたから、わたしはすこしかおをはなした。


 ロンのめが、ねむそうじゃなくなった。

 めをまんまるにして、なんだかすごく、びっくりしてる。

 どうしたんだろう? ぴかぴかのせい?


「ちょっと、待って、くれないか」


 ロンがまっててっていったから、ロンのおむねにあたまをのっける。

 あったかい。いつもよりあったかくて、どきどきしてる。


 ロンがうえをみて、こっちみて、ゆびをこっちにだした。

 ロンのゆび、ちょっとあせかいてる。

 なめていい? なめていいよね?


 くちにいれたら、ちょっとつめたいけど、いつものうすしおあじ。

 ロンもさむいのかな。

 あったかくなるまで、なめてよう。


「夢か」


 ゆめ?

 まだねてたのかな?


「さあ、キュウ。起きるから指を放してくれ」


 おきたみたい。

 ゆびはまだあったかくないけど、はなしてあげた。

 あとでまたなめよう。


 ロンのよこにどいたら、いつものおすわり。

 いつでもわたしにのれるように、おしりをさげて、おててをゆかにつく。


 しろい、おててが、わたしのまえにでた。

 しろい、にんげんの、おてて。


 ロンのおててじゃない。

 だれのおてて?


 でてきたおててをさわろうとしても、おててがうごいて、さわれない。

 わたしのみどりのおててが、でてこない。


 これ、わたしのおてて?


 このしろいの、わたしの?

 ほそいうでも、わたしの?


 ロンをみた。ロンもこっちみてる。

 いつものロンの、やさしいめ。

 だけど、いつもよりおおきい。いつもよりせがたかい。


 ちがう。

 わたしがちいさいんだ。

 おてても、からだも、ちいさくなってる。


 こんなちいさいからだじゃ、ロンをせなかにのせられない。 

 こんなほそくて、つめのないおててじゃ、だめだよ。


 りゅうきしの、りゅうは、よわくちゃだめ。

 ほかのりゅうに、こうかんさせられる。


 ロンのこと、まもれない。

 ロンといっしょに、いられない。


「ほら、大丈夫だよ。どんな姿でも、お前はキュウで、俺の相棒だ。そうだろ?」


 ロン。ほんと?

 わたし、いっしょにいていい?


 わたし、ちいさくなっちゃったよ?

 ほら、くびわも、おちちゃったよ?


 ロンはまたびっくりしたけど、わたしにもうふをかけてくれた。

 ちょっとさむいけど、まだすこしあったかくて、ロンのにおいがする。


 もうふのにおいをかいでたら、ロンがもうふごと、わたしをだっこしてくれた。

 ロン、おっきくて、あったかい。

 わたしがちいさくなっても、ロンはやさしい、いつものロンだ。

 ロンのかたにかおをのせると、いつもよりちょっとつよくて、おちつくにおいがした。

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