世界の進歩にあずかってくれ

 俺より頭いい人達、何で小説なんて書いてるの?


 世界の進歩にあずかるべきじゃない?

 高い希望の若者達、日々に励むべきじゃない?


 医者なら一人でも多くの人を救うべきだし、薬剤師なら一人でも多くの人に薬を届けるべきだし、獣医師なら国内の畜産業の発展に寄与すべきじゃない?

 プログラマーは国内のITインフラを整備すべきだし、歴史家は未だ解明されてない歴史の謎を紐解くべきじゃない?



 ナンデ!? ナンデ、ミンナ小説書クネ!?



 あんたらが小説という少ないパイを食い合っている市場に出てくると、小説しか書いてこなかった人間が泣きを見るじゃろうがい!


 村上龍が言ってたでしょ!

 小説家はいつでもなれる最後の砦って!(13歳のハローワークより)

 アナタ、まだこっち来るべき時じゃないよ!

 本業にいそしんでいておくれよ!


 え、本業もちゃんとやってる?

 余暇!?

 余暇で書いてるの!?


 頭いい人達、基本、みんな人間としてのスッペクが高いので、本業もしっかり勤め上げながら小説も書いてしまう。

 やめてくれ。

 中途半端な人間の心を折るのはやめてくれ。


 余暇は家族を幸せにする為の時間にあててくれ。

 もしくは他の趣味を見つけてくれ。

 趣味でやってたらいつの間にか書籍化してバカ売れしてましたみたいなことやめてくれ。


 あと、新しい趣味を見つけた先でも、ありあまるバイタリティでひとかどの人物になったりはしないでくれ。

 新しい趣味の界隈の人達が可哀相だから。

 本業で成功している人は、他の事は「ちょっと苦手です」ぐらいでいてくれ。

 俺ら凡人の精神安定の為に。


 こちとら、MPが足りなくて自分が書いた小説を読み返すのも億劫だ、みたいなことぐちぐち言ってんのに、どうして週末だけしか執筆しない人がそんな文字数書けるんだ……。


 その無尽蔵のMPはどこから湧いてくるんだ。


 憎い。


 何をするにも中途半端な自分が憎い。



【タヌキが出ます】

『桃源水滸伝』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893542939



 俺、ファンタジーが好きなんです。


 俺はファンタジーがこんなに流行る前、「ちょっとファンタジーには詳しいぞ」みたいなノリで小説を書き始めました。


 もうちょっと言うと、「今は学園もの以外はラノベじゃない、みたいに言われている。ファンタジーを書くやつは馬鹿だと言われている。けど、いつか絶対にファンタジーは復権する。いや、俺の手で復権させてやる」みたいなノリで書いてました。


 言うは易しですな。


 結局、俺という一石は一切の波紋を起こさず、別の場所から大波が来ていつの間にかファンタジーが復権してしまいましたが。


 そして、ファンタジーがこんなにも流行ってしまうと、過当競争が起きるんですよね。

 本格ファンタジーとなると、歴史の素養がある人が強い。

「ちょっと詳しいぞ」というノリで書いていた俺程度じゃ太刀打ちできないぐらい詳しい人がわんさか出てくる。

「お、ファンタジー流行ってんの? いっちょ書いてみるか」みたいなノリで。

 俺は「ちょっと詳しい」を武器に乗り込んだのに、「ファンタジー趣味が高じて歴史に興味を持ち、博士号を取りました」みたいな人がうじゃうじゃ参入してくる。


 勝てない。


 復権する前から書いていた、なんてのはなんのアドバンテージにもなりはしないのだわ。BSSになんの権利も生じないのと一緒で。

 ちなみにBSSというのは『僕が 先に 好きだったのに』という、失恋系のお話を表すジャンル名だそうです。


 分かってはいる。

 ただ、つらくはある。

 BSKよ。

(僕も 先に 書いてたのに)


 歴史家は歴史を学んでてくれ……。

 歴史の知識を応用してファンタジー物を書こう、だなんて、一体誰に吹き込まれたんですか。

 いいじゃない、書く方にまで手を広げなくて。


 さらには頭のいい人達、「本業は医者ですが、医者が異世界転生する話書きます。ファンタジーについては詳しくないので少し勉強しました」みたいなことを言って、俺よりファンタジーに詳しかったりする。


 人間としての基本スペックが高いから、何をやっても高性能。

「ファンタジー世界の設定? あぁ、学校で習った歴史を元に作ったよ。選択科目じゃなかったからあまり真面目にはやってなかったけど、受験勉強もたまには役に立つもんだね」みたいなことを言う。



 と、止まれ!

 止まらないと撃つぞ!



 エリート枠を作ってくれ。

 俺は汚染された地上で生きるから、エリートだけが住むことを許される衛星軌道上の空中都市で小説を発表してくれ。




 そうしたら俺は地上で「ちょっと詳しい」程度の知識で、ドヤ顔でファンタジーを書くのになぁ!




 まだまだ愚痴りたい事はあるけど、今日は終わり。

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