第2話明日が来るなら私は今日を終わらせたい。

暴力という言葉がこの世界に何故存在するのか不思議に思うことがある。力で人に苦痛を与えるなど残虐だ。力無き者は抗えない。こんなに残酷なことがあるのか。力で人を支配する時代は永遠と繰り返されるのだろうか。誰がそれに終止符をうつのだろうか。終わらないよね。

私が初めて『死にたい』という感情を持ち始めた時には何もかもが遅かったのかもしれない。いや、始まりだったのかもしれない。


これから描く話は実話です。私に対して 大人に対してどう思うかは自由です。ですが分かってください。人という者は簡単に壊れてしまいます。不快になられた方 申し訳ありません。嘘偽りなくここに残します。


初めて殴られた。理由は分からなかった。ただすごく両親がお酒臭かったのは覚えている。私の両親は夜に家にいたことがない。なんの仕事をしているか未だに分からないけど 夜に家にいることなんて年に一、二回くらいだと思う。当時五歳の私は保育園に行かせてもらえなかった。でもよく外で遊んでいた。好きだった。毎日が違う景色に見えて、毎日空になりたいと願った。今思えば滑稽な夢なのかもしれない。笑ってしまう。私の夢はそれほど大きかったのか。今もそうなのだろうか。この時の私よ。今の私に問いてみてくれ。きっとそうだと答えるだろう。

私の両親は昼間は家にいる。幼い私はそれが怖くて仕方がなかった。また怒られる。また殴られる。毎日毎日怯えていた。そんな私を両親はどう思っていたのだろうか。どうも思っていないか。

私はきっと可笑しいのだ。人間だというのに 私は私らしく生きれなかった。そもそも私らしくとはなんだろうか。どこからが私で どこからが私ではないのだろうか。たまに、自分が二人いるのではないかと思う。例えるなら

『好きな自分』と『嫌いな自分』だ。好きな自分はきっと笑っている。どんなことがあっても笑っている。私は笑ってる自分が好きだ。何もかもを許せる自分が好きだ。

嫌いな自分はきっと全てなんだろう。存在自体が嫌いなんだろう。五体満足。不自由なく生きている自分が憎くて仕方がなかった。泣いても泣いても消えない自分。消えてくれ。お願いだ。私は私を憎みたくないんだ。

絶えることのない暴力は日に日に増していく。五歳の私は身体中に痣や傷ができた。最初は痛くて 辛くて 苦しくて 泣いていた。どうして。どうして自分だけがそうなんだろうか。「私が何か悪いことをしましたか」「私の何が必要ないんですか」と聞いたことがある。五歳でだ。一般的な五歳がこんなことを言うのか知りたいが 知ることが出来ないのし聞いたこともないので私は『異常』な人間だ。

その問いに対して私の両親はこう言った。

「お前の存在が邪魔なんだ」

「お前は生きている意味がない」

「お前は産まれてくるべきじゃなかった」

と。

そうか。私は邪魔なのか。生きている意味はないのか。産まれてくるべきじゃなかったのか。私はいらないのだ。『私』という存在が。貴方たち大人にとって『私』とはそういう存在でしかないのか。存在していないのか。『私』という者は。この世界には。

その日 私は全てをやめた。『生きたい』と思うことも 『泣く』ことも。『笑う』ことも。『助けて』と思うことを。全て捨てた。この日から出来上がったんだ。私という玩具が。ただ、両親の暴力を素直に受け入れ 抗うこともなく、生きることを捨てた私は憂う人となる。


私はこの世界が嫌いだ。人が人を傷つける。

人が人を殺す。人が人を愛す。人が人を悲しませる。平和という言葉は存在してはいけない。あと何百年。この世界は同じことを繰り返せば平和になるのだろうか。どのくらい泣けば どのくらい傷つけば 私は生きている意味を見つけられるのだろうか。


いいや。私は知っている。私はもう人間ではない。望むな。羨ましがるな。笑うな。泣くな。抗うな。お前は玩具だ。その使命を忘れるな。それが楽なんだ。それが私らしいんだ。

お願いです。私を救ってください。

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