手紙
悪役公爵令嬢に手紙が届いた
差出人は・・・・・覚えがない、椅子の職人のようだ
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前略、突然のお手紙失礼いたします
私は城下で椅子の製造をしている職人でございます。この度令嬢様にお手紙申し上げましたのは、私はここに私の事をお伝え、そしてお詫びを申し上げたいと思ったからでございます。
私は子供の時に椅子職人の親方の所に弟子入りし、それから親方について椅子の製造を学んでおりました。そして、長年の苦労がみのり、私は親方のところから独り立ちしたのでございます。独り立ちした後は、まずは一般庶民が座る安価で簡単な椅子を作っておりました。そうしておりますうちに、私の椅子が安くで、また丈夫で、使いやすい、座りやすいという評判を受け、それから、だんだんと上等な椅子を作るようになったのでございます。
最初はオフィスで使う椅子でございましたが、そして書斎で座る椅子、そして、居間で座る安楽椅子などを手がけるようになってまいりました。
私は、椅子を作る前に、色んな型紙を作って、またクッションのバネ等も色んな金物を研究して、座る人の体重に応じた椅子を作るようにしておりました。
そして長年の研究の成果で、バネとクッションの組み合わせによって、重い人でも、軽い人でも、同様に座って楽な椅子を作ることができるようになったのでございます。
大抵の椅子は、軽い人には反発が大きすぎて座りにくく、また、重たい人には沈み過ぎて座りにくいものでございます。しかし、私の作ってる椅子は軽い人でも重たい人でも同様に座りやすい椅子なのでございます。
この話を始めますと、本一冊を書くくらいになってしまいますので、この点で割愛いたいします、私はその技術のおかげで大層繁盛したのでございます。
ある時、私はとある大金持ちの商人から居間で座る一人がけの椅子の注文をうけました。その椅子は、とある大貴族の方が注文されたという事で私は全霊をかけて作ったのでございます。
そしてその納品の直前の日、私は借金取りの急の訪問を受けたのでした。実は椅子を作るのに高価な木材、高価なバネ、高価なクッションや生地を使っておりますので、些か大きな借金を作っておりましたのでした。
そしてこの椅子を作ってる最中は、他の仕事をすべて断って、その椅子を作るのに集中しておりましたので、借金取りに返すお金がないのでした。
そして、私は、急に思い立って、椅子の中に隠れてしまったのでございます。
私が今、作っております椅子は、バネの改良によって、人が丁度一人隠れる位のスペースがございます、他の職人ですと、椅子の中はクッションと羽毛と綿で一杯になるのでありますが、私は、そのおかげで、軽くて丈夫で、座りやすい椅子を作ることが出来たのでございます。
借金取りが部屋に入って来た時には、私は椅子の中に隠れてしまっておりますので、借金取りは、そのまま帰ってしまうと、私は考えておりましたのでございます。
と、なんということでしょう、借金取りは、私の入ってるこの椅子を、持ち上げて、そのまま持って帰ってしまったのでありました。
それから、その借金取りは私の入ってるいるを金持ちの商人の所にもっていきました。
「私は前々から椅子職人にお金を貸している借金取りでございます、この度、永らく放置されておりました借金の取り立てにいったところ、どうやら椅子職人は逃げ出してしまっておりますらしく、この椅子が取り残されて降りました。
商人様は椅子職人に椅子を発注されております事を聞こえております。どうでしょう、この椅子は椅子職人の残した椅子で、たしかに商人様の発注された椅子であると見受けましたので、ここに参りましたしだいでございます」
「そうだな、この椅子は職人に見せてもらった図面とそっくりで、たしかに私のが発注した椅子に違いない、お前は椅子職人に金を貸して、その金がそのままになっておるのだな、では、その借金の金額でお前からその椅子を仕入れた事にしよう」
商人はそうやって椅子を買い取ったのでございました。
それから翌日に、商人はこの椅子を大貴族のお屋敷に運び入れたのでございます。
「公爵様におかれましてはこの度は私に椅子をご注文いただきまして誠に光栄に存じます、ここにご依頼いただいておりました椅子が完成いたしましたので、持ってまいりました、当方の職人が全員一丸となって作った最高級の椅子でございます。
そうすると、公爵様でしょうか、その椅子に座るのがわかりました。
公爵様の体重を感じなら、私はドキドキしておりました。
「うむ、この椅子はよく出来ておる、しかし、私はこのように長身で、この椅子は少し背が低いようだなあ」
「あ、そうでございますは、しかし、頭の上の方まで支えてしまいますと、逆に頭が前のめりになってしまいますので、最近はこのようにクビの上の部分までの椅子が流行でございます。」
「そうか、それが最近の流行というものなのか、ああ、令嬢、こっちに来なさい、どうだ、この椅子は、座ってみなさい」
「お父様、この椅子が座りやすくて私には丁度でございますわ、お父様はどうでしたの?座りやすかったでしょう」
「私には少しやわらかいみたいだ、どうだ、お前が気に入ったのならこの椅子はお前の部屋に運ぶ事にしよう」
「ありがとう、お父様、私、この椅子で本を読みますわ」
「商人、このようだ、私の為の椅子が私の娘の為になった」
「はい、はい、ありがとう御座います」
そうして私はお嬢様の部屋の椅子となったのでございます。
それからお嬢様は、毎日この椅子に座っておいででした。お嬢様の体重やお嬢様の香り、温かさを私は椅子の中で毎日感じておりましたのでございます。
ああ、食事やトイレは、お嬢様が休んでいるときを見計らって椅子の中から這い出て、トイレに行き、また食堂で食料を取っておりましたのでございます。
そして私は毎日お嬢様と一緒におりましたのでございますが、何とかしてお嬢様に私の気持ちを知ってもらいたいと思いまして、ココに手紙を描いた次第でございます。
どうか、お嬢様が私の気持ちを知っていただけますように
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「えへへ〜〜〜どう、悪役令嬢様の部屋のあのキレイな椅子、あれを見てて思い立って、書いてみたの」
「ヒロインちゃん、あなた、小説家の素質があるようね、文壇デビューしたら本を買わせてもらうわ。
でもね、この椅子は、そんな椅子じゃないの、この椅子はねっ!」
悪役令嬢が肩口のボタンを押すと、椅子がカタカタと変形した
「この椅子は、変形ロボットなのよ!」
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