ヒロインと対決する悪役令嬢様

「ねえ、あなた、ちょっと来て」

朝、悪役令嬢が校舎に入るとピンクヘアの女学生に呼び止められた。

昨日、校舎裏の木陰で逢引していた学生だ、どこかの男爵令嬢のようだ。

「何ですの?私、あなたには用は無いのですけど」

周囲を生徒が通り過ぎる。

「昼休みでいいわ、ちょっと顔貸して」

余計に怖い。

まあ、私には魔術があるからこの女性一人くらいならどうってことはない。


昼休みに校舎裏に

「あんた、昨日見てたでしょ!」

「何をですの、昨日ってなんの事ですの?」

「とぼけないで!あんたは、もう、終わってしまってるんじゃない!」

なんやとこら、こっちはまだ18やど・・・あらいけないわ本性が出た

「あんたはここではモブですらないのだから、単なるメモリーの消し忘れ。消しゴムのあとみたいなものなのよ」

お前は何をいってるんだ?


ここはすっとぼけていろいろ聞き出してやろう。

悪役令嬢はとにかく情報集めにかかることにした

「はあ、なんのことでしょうか」

「せっかくうまく行ってるのに、関係ない人間がウロチョロしないで!ここはねえ私の世界!私はこの世界のヒロインなのよ!」

と、その時

「ちょっと待ったぁ!私こそこの世界のヒロインよ!」

と、違うピンク頭の女学生が出てきた。

と、

「ちょっとちょっと、勝手なこと言ってないでよ、私がヒロインなの!!」

「ちょっとまったぁー!!私がヒロインなのよ!」

次から次へとピンクヘアの女学生が出てきて、悪役令嬢はもう誰が誰か区別がつかない。

顔はほぼ同じだけど、髪の毛の色とグラデーション、髪型が少しずつ違う・・・のか?

「私が本物よ!」

ピンクヘアが叫ぶ

「嘘をおっしゃい!私こそ、本家ヒロインよ」

「何を言ってる、私はヒロインスーパーゼロ!」

「何を自分達ではなししてんの!私こそヒロイン本家本元!」

「私はヒロインレジェンド!」

「じゃあ!私はヒロイン本舗!」

「ならば私はヒロイン・オリジンよ!」

「そんなら私はヒロイン・スーパーワンよ!」

ピンクヘアが叫ぶ

と、

「ちょっとあなた、人の婚約者に手ぇ出すんじゃないわよ!」

と、金髪縦ロールの女学生達がいろんなところから登場する

「は?あなたはぁ伯爵令嬢ぉぉぉーーー???!!」

空間を断ち割って飛び出てくる金髪縦ロール達

#ffd700 やら明るいのやらグラデーションがかかってるのやら

「人の婚約者に手ぇ出すんじゃないわよ!」

「そんなっ!私は伯爵令息様が好きなだけですっ!」

うるうる目で訴えるヒロイン達

「なによこの泥棒猫がぁーっ!!」

「私こそがヒロインなのよぉー!!」

「男爵令嬢のくせしてぇー!!」

ピンクヘアを追っかけ回す金髪縦ロールの達

「婚約者の居る男性にみだりに触れてはいけないのよぉぉぉーーー」

「悪役令嬢キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」

「私が!」

「だって、学校では、自由じゃないですかっ!」

「私が!」

「私が!」

「私があぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「わああっ!」

あまりのことに悪役令嬢はそのまま家まで走って帰ってしまった。

お迎えの馬車が夜になってもお嬢様が帰ってこないとか言って大騒ぎしてたが、そのときには彼女は部屋でベッドに潜り込んでガタガタと震えていた


悪役令嬢は生まれて初めてひどい寝汗をかいた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る