第7話 街道にて ⅲ
野盗たちを一瞬で制圧した後、ハクローは彼らを地面に転がしていた。
「や、やめてくれ……」
「降参するならそれ相応の作法があるだろう」
それを聞いて三人は、ガバッと地面に頭を叩きつけた。土下座だ。まさか異世界で土下座を見ることになろうとは。
「逆だな」
「ぎ、逆って……!?」
「――仰向けになって腹を見せろ」
「はいぃ!!」
三人は言われるがまま、土下座の姿勢からひっくり返ってお腹を見せた。
「ちょっとちょっとハクロー」
大の大人が死んだカエルのようになっているのを見るのは忍びない。
「サキ、怪我はないか」
「おかげさまでなんともないけど……」
かと言って、こういう野蛮な人たちをこのまま野に放つのも、また被害者が出る気がする。
「この世界に警察みたいなのはないの?」
「……ちょうど来たようだ」
ハクローが見ている方を向くと、町の方から何かが飛んできていた。翼が生えた馬!?
綺麗な鎧を身に付けた人が、手綱を捌いてあたし達のそばにその不思議な生き物を着地させた。
町の衛兵だ、とハクロー。いや、それも気になるけれど、その衛兵さんを乗っけている生き物も気になるんですけど。え? ペガサス? へぇ……。
「何があったんですか?」
あたしたちと地面の三人を交互に見ながら、衛兵さんはハクローに問いかけた。
先ほどのゴーレムとの騒ぎに気がついてこちらに向かってきたんだ。
「野盗に襲われたが、返り討ちにした」
「野盗?」
あたしと同い年くらいの衛兵さんは、相変わらずお腹を上に見せている三人を怪訝そうに見た。
「ゴレムズ団と言っていました、ね、ハクロー」
簡潔に説明したハクローの補足をすると、衛兵さんの顔が驚いた。
「えっ、あなたがあの、ハクローさん!? こんな間近で会えるなんて……」
そっちに驚いてるのかよ。
なんだ、ゴレムズ団って、野盗たちがドヤれるくらいホントに有名なのかな?
「ハクローを知ってるの?」
「僕らの間ではその活躍を知らない人はいないですよ!」
あたしの問いかけに、衛兵さんは上気した様子で語ってくれた。
「電撃的に現れた魔物ハンター! 素性が一切わからない謎の男で、その実力は折り紙付き! 先の黒竜との戦いで、僕たちが苦戦する中、颯爽と叩き伏せたって話は大ニュースでしたよ」
そこまで話して、佇まいを直した。
「――と、ご、ご本人を前に、失礼しました」
ハクロー、そんなことをしていたんだ。で、熱狂的なファンに褒められて、何嬉しそうにしてるのよ。
「いや、いい。それよりもこいつらの後始末を任せていいか?」
「任せてください」
威勢のいい返事に、少し不安はよぎりつつも、あたしたちがこれ以上どうこうするようなことでもないので、若い衛兵さんによろしくお願いする。
「……で、なんでこいつらはこんな格好を?」
あたしのペットが異世界転生してご迷惑をおかけしているってホントですか!? みずたまり @puddle-poodle
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