第36話 再訪

 ひざまずいたアルベルトが俺の手を取り、忠誠を誓う。


「殿下、おやめ下さい。シンはただの用心棒です。殿下のおっしゃるようなではありません。」

「君に何がわかるというのだ!この者は間違いなくドミナターに選ばれた者だ。四代目になり得る者だ。」


マキナはアルベルト王子の圧に負け、後退りをする。そして助けを求めるように俺を見つめる。俺はこの状況を好機と見て、王子に頼み事をする。


「それでは、殿下。一つ頼み事をしてもよろしいでしょうか?」

「なんなりと。」

「ドナルドの部屋への入室許可をいただきたいのです。彼の死は不自然な点が多すぎる。」


アルベルトはすぐに立ち上がり、使用人部屋の鍵を俺に手渡す。


 俺とマキナはアルベルトの部屋を後にし、ドナルドの部屋へ向かう。


「シン!よく分からずにという立場を利用するのは得策ではありませんよ!後々面倒なことになるかもしれませんよ!」

「考え過ぎて好機を逃すような真似はしたく無いんだ。」

「あなたは考え無さすぎです!」


道中マキナはずっと文句を言っていたが、俺はそれを適当に流した。


 ドナルドの部屋にたどり着いた俺たちは、ゆっくりとその扉を開く。ドナルドの部屋に入るとすぐに彼の死体が視界に入った。


「死体は腐っていないようだな。半日近く常温で放置しても意外と大丈夫なんだな。」

「彼の遺体のすぐそばに冷気の魔具が設置されています。魔具が効かないシンには分からないでしょうが、その魔具によってこの部屋はかなり低い温度が保たれています。まだ遺体が腐っていないのはそのためでしょう。」

「なるほど、そういうことか。」


俺はベッドに寄りかかるように座っているドナルドの死体に近づき、彼の身体に何か不審な点が無いか確認をする。彼の首には小剣が刺さっており、傷口は小剣のサイズ以上には広がっていなかった。無抵抗だったのか、それとも死んでから刺されたのか。俺が彼の首元に触れようとした時、マキナが何かを見つけた。


「シン、あれはなんでしょうか?」


マキナは窓際の机の足元に落ちていた古い本を指差す。


「・・・死の手帳カルネデモルト。あの呪い師の言っていたことが正しければ、それは死の手帳カルネデモルトだ。」


マキナはすぐに歩みを止め、その本から距離を取る。


「とりあえず、開いてみるか?」

「な?!絶対にやめた方がいいですよ!何が起きるかもわからないというのに・・・」


俺は彼女の忠告を無視して、その本を手に取る。マキナは俺の腕にしがみつき必死に止める。なんとかその本を開くと、その内容は衝撃的なものであった。


「ダメです!閉じて!シン!死ぬかも知れませんよ!」


マキナはどうにか俺の手から本を離そうと俺の身体を何度も力一杯に揺らす。


「おい、やめろよ。なんともないから。大丈夫だから。」

「ほ、ほんとですか?」

「あぁ、こんな本に殺されてたまるか。」

「一体その本には何が書いてあるんですか?」


俺はその本を閉じて、俺が見た全てを彼女に話す。


んだ。どのページもだ。」

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