第4話
ナユタの死後――四カ月後。
カナタは新たにユクロという少女を連れて地下階層へ潜っていた。
猫耳フードの少女だ。少女には名前がなく、孤児だったことを食事の場で教えてくれていた。
ナユタに拾われ、一緒に冒険していた。戦う術はリュウとカイリ、ナユタに任せっきりで見ていることしかできなかったことを悔いながら話してくれた。
「私ね、孤児院の出世なの。地下階層16ユード町の出身。幼いころの記憶はほとんど覚えていないの。その代り、今の記憶を大切にしようと日記につけたり地図にして描いたりして、ナユタたちに褒められていたの」
「それをなぜ俺に話す。俺はナユタを切った。言い換えれば、君にとって復讐するべき犯罪者だよ。」
平然とするカナタにユクロは答えた。
「ナユタのことは……もういいよ。ナユタを楽にしてくれてありがとう。ナユタずっと苦しそうだった。私たちのように一緒に食事をとることはしなかった。いつも一人離れて食事をしていた。いま思えば、あの時すでに……」
食事を止めるユクロにカナタはせかした。
「食わないなら食っちまうぞ。ここは有限だからな。」
「有限…」
「そう。ここ以外の食堂は高くて食べられないのさ。貧乏人が寄り添ってくるから、客に提供する時間も客が食べる時間も少ない。そのため、時間かけて食う奴や食べ残す奴は出禁してしまう。そうなりたくないから、さっさと食べろと命令しているんだ」
食堂は一人一人食べる時間が決まっている。入れないお客を考慮してからなのか客に時間を設け、それ以内に食べられなければ食事代が倍になってしまううえ、追い出され出禁にされてしまう。
この食堂以外ではとても高くて買えない店が多い。
この店から出禁されてしまえば、食っていけなくなってしまう。
「命令されなくても食べるわよ」
フォークとナイフをつかみ取り、口の中へ頬張っていく。ガツガツムシャムシャと食べていく。
「うまいだろ。ここのシェフは一流人だ。他じゃ食えたもんじゃないって思うほどだ。ナユタに教えてもらったお店だよ。アイツはここを気に入っていたからな。思い出の場所を失いたくないからな」
ユクロは力いっぱいに口へ放り込んでいく。
ナユタの思い出が詰まったこの場所を、私のせいで失わせたくはないと、ユクロなりのせいっぱいだった。
「「ごちそうさま!!」」
腹いっぱいになり、次の仕事を見つけようと掲示板へ向かった。
そのとき、広場の方から叫び声がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます