第44話 訓練 12 圃場8
ふむ。
こんな感じかな。
とりあえず、僕は拳銃を持ち上げて構えてみた。
拳銃で構えるけど、なんとなく ・・・・ 違う気がする。
「片手か、片手で構えて撃つなんざ、ちと早いな。
基本的な撃ち方はだな。
両手だな。
両手で銃をしっかりと持つ、それが基本だ。
そして、構えて狙いをしっかりと付ける。
両の足を肩幅程度開け」
「はい」
僕は言われた通りに両の足を開いた。
「効き足はどっちだ」
「み 右です」
「右足を半歩出せ」
「はい」
「両手で銃を持って構える事になる。
まずは、両の手を下げた状態だ。
銃口は常に下を向ける。
だから、自分の股間の前に銃を持つ形になる。
いいか、これが基本中の基本の構えになる。
銃口は常に下だ。
万が一暴発した時に備える、そして、誰にも危害を与えない。
わかるな。
引き金に絶対に指を掛けるな。
用心金に指を沿わせろ。
銃口は常に下、これをたえず意識してくれ。
簡単に銃を持ちあげるな、それは徹底して意識しろ。
銃を持つという事は危機に対する抵抗だ。
銃の力を用いて危機の源を排除する。
いいか、拳銃は基本的に身を護る為の武器だ。
陸軍で使う突撃銃や狙撃銃とは、根本的に違う。
自分に降りかかる火の粉を振り払う、その為にある。
だから、自分の感覚、五感を最大限に拡げて敏感にしろ。
周囲を警戒し、危機を感知しろ。
拳銃を持つという事は、そう言う事なんだ、そこを深く意識しろ。
自分の五感を最大限して、危機を認識する。
そして、いよいよ危ないと感じたら、危機の源に銃を向けろ。
銃の構え方は、こうだ。
両の手で構えて、膝も軽く曲げろ。
身体の重心を下げる感じに、膝を曲げろ。
いいか、狙いを定める為に体を安定させる、その為に軽く重心を下げる。
身体の重心を下げて、体を安定させる。
その方が狙い安い、だから、軽く膝を曲げて銃を持ち上げる。
理解できるか、と言っても初めてだからわからんだろ。
アタマでの理解とは違うぞ。
身体動作を伴っての理解、つまり、カラダに覚えさせる。
いいか。
それは反復で同じ動作を繰り返しての身体記憶だ。
走り幅跳びなんかの跳躍姿勢の練習、あれと同じだ。
わかるな。
何回も同じ動作を繰り返して、身体反応としての記憶する。
これを身に付ける。
咄嗟の時の条件反射だ。
10回や20回で身に付くモノじゃない。
身に付くまで繰り返し練習する。
これは、ひと、それぞれによってカラダにしみ込ませる時間が違う。
100回でできる者、500回でできる者、2000回でできる者、ひとそれぞれだ。
できるまで反復練習することになる。
つまり、条件反射としてカラダに身に着ける。
単なる条件反射じゃないぞ。
自己の危機に対する鋭敏な感覚と判断を伴っての行動だぞ。
いざという時に、身体反応が供わなくてオタオタしていたら死ぬぞ
生き残りの為の拳銃操作だからな。
生き残りの為の発砲だぞ。
しっかり練習しろよ。
死にたくないなら、練習するしかない。
プールで泳ぐ練習と同じだ」
中尉の言の葉は僕の心を覗き込むように、そして、僕の心を鷲掴みにしていく。
『拳銃を使う』と言う危機の時に、その心構えを真剣な言の葉で投げかけてくる。
重い言葉とキツイ眼差しの中に、僕を心配してくれているのがわかる。
今、僕は、正に銃の取り扱い、その初歩の手ほどきを受けている。
ああ、僕は間違いなく軍人としてのその一歩を歩もうとしている。
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