第42話 訓練 10 圃場6
ふう ふう ふう ・・・・・
死にそう。
足が ・・・・
足が ・・・・ 上がらない ・・・・
だめだ ・・・・ 攣ってしまう。
「あ 足が攣りました 」
「おう、靴を脱いで養生しろ。休め、大休止にする」
伍長さんらすぐに僕の軍靴を脱がしてくれて、攣った足の親指を引っ張ってくれる。
ひぃ ひぃ ひぃ いてーよ。
たまらなく痛い。
ぐいっと親指を引っ張られる。
くうぅぅぅ、いてーよ。
痛いのは痛いけど筋肉の攣り加減はだいぶマシになる。
ふくらはぎの筋肉がぱんぱんに張っているのをほぐしていく。
足の裏の筋がキンキンになっている。
大学生になってから、これといった運動をしていなかった。
3回ほど山に行ったぐらいだ。
運動不足がそのまま僕の体力劣化になっている。
身体が訓練に耐えられるまで地獄のような苦しさだよな。
でも ・・・・ 中尉の言う通り ・・・・ ただ泳げだもんな。
不愉快で理不尽な訓練じゃない。
話に聞く新兵訓練での理不尽な訓練 ・・・・ そんな訓練じゃない。
だから、その分、僕は恵まれているか。
なんにしろ、中尉が言う通りに生き残るの為の体力だ。
これから僕の生活には体力錬成が常に必要になる。
死にたくない。
溺れて死ぬなんて、まっぴらごめんだ。
おい。
我が脚よ。
しっかりしろ。
僕は自分自身を叱咤激励して、ふくらはぎを揉み込んだ。
「ヘロヘロだな。
午前中はこの位にするか。
無理して怪我してもまずいからな。
全員、シヤワーを浴びろ。
熱いシヤワーを浴びて、体力錬成は午後からやろう。
シヤワーを浴びたら拳銃の取り扱い訓練だ」
へっ?
拳銃?
拳銃!
うぉ ・・・・ 拳銃か。
初日の訓練から銃器を扱うのか。
やっぱり僕の訓練は特殊なものになっている。
おもしろそう ・・・・
正直、そう思った。
ヨタヨタと歩く。
歩く事にも辛い。
下半身の疲労感がどうしょうもなかった。
中尉が15分ほどのんびりとシヤワーを浴びろと声を掛けてくれる。
熱いシヤワーはご褒美だった。
へろへろの身体に熱いシヤワー、ふくらはぎを揉み込んで疲れをとる。
熱いシヤワーを浴びて、冷たいシヤワーを浴びる。
ちょっとマシになる。
シヤワーから出ると、中尉が食堂へ行けと手ぶり。
伍長さんらがオレンジジュースを飲んでいた。
僕にもオレンジジュースが回ってくる。
美味い。
甘みが身体に吸収されていく。
酸味が気付けになって、シャッキとする。
伍長さんらががじっと見ている。
その眼差しは「 がんばれよ 応援するぞ 」という暖かい物。
ありがたい。
中尉から「よし、やるぞ」と声が掛かる。
そのままプールへと戻る。
プールで拳銃の訓練?と思っていたら、プールの奥にある扉へ移動だった。
中尉がポケットから扉の鍵をだして、ガチャリと開けていく。
そこは、まっくら。
中尉が壁のスイッチを入れる。
パッと明るくなり、短い通路だった。奥に扉があり、そのままそこへ進む。
その扉には鍵は掛かっていなかった。
扉を開けると、同じくまっくら。
ただすぐに気づくのは、そこには火薬の臭いと独特のこげくさい臭いが漂っていた。
中尉が電灯のスイッチを入れる。
明るい電灯の光、そこが射撃訓練場になっていた。
6人が訓練できるようになっていて、長さはプールと同じくらい。
奥は土嚢が天井まで大量に積まれていて、それの一部がボロボロに崩れていた。
横長の受付用?の机があり、金庫型の脇机が置いてある。
中尉が用意していた鍵でその脇机を開いていく。
そこから取り出したのは回転式の拳銃だった。
それを手にして、ガチャリと弾倉を ・・・ 何と言うのかな。
振り出すとでも言うのかな。
弾倉の部分が横に出てくる。中を確認する中尉。
一通り確認が済むと弾倉の部分を元に戻して、僕に手渡してくれる。
思ったより軽い。
もっとズシッと来るのかと思っていた。
まあ、鉄のカタマリみたいな物だから、それなりの重さはある。
正直この程度の重さなんだと思った。
中尉が続いて、銃を取り出していき、そのまま二人の伍長さんに手渡していく。
伍長さんらは手早く弾倉の部分を確認している。
その操作というか、いかにも手慣れていますよという感じだった。
中尉が僕の瞳をしっかりと見て、説明が始まる。
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