第一章 訓練

第33話 訓練  1

「 ここが私の執務室だ。

  入りたまえ 」

そこはこじんまりした部屋だが、ビシッときれいに整えられている部屋だった。

少佐のかっちりとした性格が出ている気がする。

「 そこに座りたまえ 」

僕は少佐に指し示された椅子に座った。

「 これからの君の予定について少し話をしよう。

  明日から、二日間の休暇を予定している。

  ただし、外出には憲兵隊が常に警護する事になる。

  だから帝都の案内を彼等にしてもらうといい。

  のんびりと帝都観光したまえ。休暇のあとは訓練に入ってもらう。

  君の訓練は正規の軍の訓練と異なるものになる 」


少佐はそこで一度会話の間を空けて、僕を見た。

僕の視線をしっかりと捉えつつ、僕を観察している。

どうも、[ 正規の軍の訓練と異なるものになる ]この言葉の効果というか、

その言葉に対して僕が動揺しているか、その辺を探っている様子 ・・・・

正直に言って、帝都ここまでくるのに僕は騙されてきているのだから、そんな言葉で動揺しないよ。

しかもね、宮様という雲上人まで会うなんて、びっくりの連続 ・・・・

だからね、いまさらね、異なると言われてもね、またかよというのが本音だよ。

少佐は僕の視線が変化していないのを確認すると、また、話を続けていく。



「 君は帝国軍のある特殊な訓練場へ行くことになる。

  通称「 圃場 」と言われている。

  正式名称があるが、知らなくていい。

  秘密だ。

  場所も極秘になっている。

  だから、入る時も、出る時も、視界を妨げて出入りする。

  ある特定の訓練を実施する為の施設だ。

  大体1ヶ月から6ヶ月の予定でそこで訓練する。

  期間は定めていない。

  たぶん、長ければ最長、6ヶ月ぐらいになるだろう。

  そこはある特定の技能を身に付ける施設になる。

  そこでその技能を身に付けられたら、別の訓練に移行する。

  君がその技能を早く身に付けられたら、いわゆる『 圃場 』から出られる。

  『 圃場 』での訓練は終了になり、海軍工廠での勤務訓練となる。

  我々は君については心配していない。


  たぶん、3ヶ月もあれば充分だと思っている。

  今の警護隊、君を警護している憲兵たちだ。

  彼等と供にそこに入る事になる。

  そこは基本的に憲兵隊の訓練施設だからだ。

    

  まず、憲兵隊について少し話をしよう。

  帝国は5軍制になっている。

  陸軍・海軍・沿岸警備隊・国境警備隊・憲兵隊の5軍だ。

  この中で、「隊」の名称があるものが司法警察力に分類される。

  つまり地方自治体の行政警察と違う司法警察権力になる。

  もちろん、平時での話になる。

  有事には陸海軍を補完する軍組織として機能する。

  沿岸警備隊はその文字通り沿岸・港湾における警察組織となる。

  国境警備隊は国境専門の司法警察力だ。

  それぞれに国外不法勢力に対する直接な司法警察組織になる。

  それゆえに帝国臣民ではなく、不法勢力に対処する為に、

  極めて強力な「力を行使する機関」となっている。

  そして、憲兵隊だ。

  憲兵隊は別名「軍警」、軍に対する司法警察力だ。

  憲兵隊の機能はまだある。

  行政警察で対応できない犯罪、それに対する対処組織だ。

  ゆえにもっとも強力な警察権力を与えられている。

  ここが他の警察権力組織と大きく異なる。

  具体的に言うと広域犯罪組織に対する我が帝国の楔になる。

  州をまたぐような組織犯罪や公職内の組織犯罪を取り締まる組織。

  それが憲兵隊になる。

  もっとも広域犯罪捜査に関しては秘匿されることがほとんどだ。

  犯罪組織に対しての法執行機関として、その活動は常に秘匿されている。

  なぜならば広域組織犯罪に対しては、特殊な手段による捜査が行われるからだ。

  一般的な科学捜査も用いるが、盗聴や囮捜査などが用いられる。

  彼等は犯罪組織に潜入し、情報を収集、それを分析し、対策を立て、

  そして、対処として法を執行する。

  時には政府の意向により、政治的な特殊な業務を行う。

  活躍の多くは秘匿されて、表には出ない。

  それぞれ特殊技能を持った憲兵捜査員が、今この瞬間にも犯罪組織の中に潜み、

  非常に危険な捜査活動している。

  そんな特殊技能を教育する場が『 圃場 』だ。

  君がこれから訓練を受ける所になる。

 

  君の訓練する場所の重要性とその背景に説明した。

  ここまでいいかな。

  質問があれば答える 」


うあぁぁ ・・・・

なんてこった。

僕は何をやらされるのかな ・・・・



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