第18話
プロローグ18
ふむ
なんでこいつが最新鋭の輸送機まで使って帝都に送られてきたか
少しわかった気がする
最初に見た時は、なんでこんな奴の警護なんだと思ったがな
何の訓練も受けていない素人があんな行動をとれるなんて
こいつの反応機敏なところは大したもんだな
やっぱり、特別警護対象者だけに、見た目だけでは判断できないな
正確な判断あっての、あの行動だからな
瞬時の判断、判断の正確さと、俊敏な反応行動
この3点だけをみても、こいつは俺達憲兵が必要としている資質を持っている
たぶん、こいつは、まだまだ潜在能力を持ってる
訓練すれば、間違いなく優秀な兵になるな
それだけでも、こいつが特別召集になる理由に充分な要素だな
だから、なんらかの計画に就く為に呼ばれたのだろう
もしかしたら、秘匿軍籍になるかもしれんな
どれ 気合いを入れて警護するか
* * * * * * * * *
まさか、目の前で報告書通りの反応の良さを見る事になるとは ・・・・・
計画に必要な資質を持っているのは間違いない
敢えて、彼の俊敏性を確認をする過程は必要ないな
間違いなく ・・・・・ 我々に ・・・・・
必要な人材だな
なんとしても計画に入れる ・・・・・・・
* * * * * * * * *
見物人というか、野次馬というか、物見遊山というか、多くの人が集まってきて、何事かと好奇の眼で見ていた。
ひったくり犯をとっ捕まえた憲兵さんは、僕に顔を向けてヨシッと頷いてくる。
僕も、その憲兵さんにお疲れさんの意味を込めて、うんと頷き返したよ。
ひったくり犯は、足にも手錠を掛けられてパーペキに動けない状態にされている。
忌々しそうに、周りに向けて敵意むき出しの表情を向けている。
あの偉いさんの憲兵さんに話を聞くと、このひったくり犯は何回も何回もひったくりをしていた指名手配犯で、なんでも老人ばかり狙っていたそうだ。
被害に遭った老人の中には、後方から手に持っていたカバンをひったくりに遭い、転倒してしまい、その際に打ちどころが悪く、それが原因で亡くなられた方もいるとの事。
もちろん、無理やりに手にしていた物を取られるわけだから、取られまいとして、バランスを崩して転倒してしまうケースがほとんどらしい。
だから普通に怪我、つまり骨折してしまう。
被害に遭った方々は年齢を重ねているが故に、予後が悪くなる骨折になってしまう。
そんな被害が多発した故に、帝都治安総局は警察はもちろんの事、帝都を警備する憲兵隊やその他関係部門に手配書をまわしての徹底取り締まりを出している最中だった。
早い話、帝都で極悪人扱いになっている、そんな奴だった。
その意味で、こいつは強盗殺人犯と同じ扱いだね。
あの若い憲兵さんが、なぜあんなに容赦なく打撃を加えていたのか、話を聞いてなるほどと思ったよ。こいつは唾棄すべき存在、なんとしても厳罰を与えられるべきだ。
すぐに警察車両がやってくる。あの若い憲兵さんが犯人を逮捕したので、憲兵隊の車両も当然やってくる。
憲兵隊と警察の車両、合わせて5台もやってくる。そうなると、当たり前のように人だかりも大きくなってしまう。
見ていたら、なんか犯人をどちらで取り扱うか、なんか相談しているみたい。
管轄の問題か、結局、警察で処理するみたい。
ひったくり犯は多くの野次馬に見られながら、警察官に両脇からかかえるようにして、警察の車両に移送されていったよ。
捕まえた憲兵さんと被害者らしい女性が別の車両に乗って走っていった、事情聴取になるって。
僕もその憲兵さんと一緒にという話だったけど、あの将校さんが断固として止めたみたいだった。
そうだろうね、なんせこれから
僕はね、うーんとね、そんなお偉いさん達が顔を寄せて相談しているのを横目にね。
朝食を再開、しっかりと食ったよ。
あの偉いさんの憲兵さんが、お前、食っているなという顔で、なんか笑っている。
結局、その捕り物騒ぎで僕たちはすぐに駐車場に戻ることになった。
駐車場で車に乗り込む時、前二人、後ろ二人になると思ったら、やっぱりと言うか、どうしてもというか、後ろに三人、また、挟まれて乗り込むことになる。
うむ、なんかものすごく閉口してしまう。
車は、来た道を戻り、あの南北街道を逆に走っていく。河を渡ってからは道が変わり、南北街道とは違う大きな6車線の道を走り出していく。
帝都のどの辺を走っているのだろうか。
わかった。
建物の色が白に近い灰色、くすんだ白色でまとめられている街並みから白通りと言われている。
帝国の中枢たるお役所が建ち並んでいる場所、
でかい。古くて威厳のある石造りの建物。
ものすごくかっこいい。
これも写真でしか見たことがない。
もっとも、今、見えているモノすべてが初めて見るものばかり。
窓に顔を付けて見たかった。
観光客が写真を撮っている。
議会を背景として、笑顔の写真か。
ちょっと、うらやましい気がする。
僕も観光するなら同じように写真をバシバシと撮るよな。
そんな観光客を見つつ、車は
帝都一番の街並み、三億八千万臣民の生活を支える為の
まさか、予備検査でここに来るなんて思いもしなかった。少しだけ、これからの成り行きに不安になる。
まあ、面接で色々聞けばいいや。
ある四つ辻で右折してすぐにとある敷地へと入っていく。
大きな建物だった。
ああ、そうか。
軍務省だった。
建物の真ん中が出入口・玄関になっている。
そこに衛兵が
制服が赤と黒のものすごく派手な制服。
有名な制服だった。
赤黒のだんだら模様になっているその制服は近衛連隊のみが着用を許されていた。
200年前からの近衛兵の制服をそのまま身に纏って
そこにも観光客がいて写真を撮っていた。
めったに見る事ない古典的な近衛兵の制服、入れ代わり立ち代わりけっこうな数の観光客が写真を撮ろうとして、列になって順番を待っていた。
伝統の古典的な制服、見栄えのする制服だから一種の観光資源になっていると思う。
車はそのまま、建物の横すり抜けて裏側へと走っていく。ややスロープになっていた。
建物の裏手が駐車場になっていた。駐車場に入る前に車は停止する。
「よし、降りたまえ」
言葉通りに車から降りて、その将校さんの後を付いていく。
通用口があり、
そのまま顔パスで入っていく。
その通用口には海軍総隊と書かれていた。
やや薄暗い廊下、でも広い。車2台まるまる通る幅の廊下になっている。
ある程度歩いたら、階段があって、そこから2階へ。
2階へ上がると、そこが受付みたいになっており、僕だけ大きなバッジを付けさせられる。
来客という表示のバッジになっていた。
僕がはっきりと部外者だと判るようなバッジだよね。
バッジを付けてから、女性の秘書官?に彼女の案内に従ってくれと言う言葉だった、
そのままどうぞこちらへと案内されていく。
第18応接室という表示がある部屋へだった。
こじんまりとした応接室だった。
ソファとテーブルが置かれている。
「こちらで、しばらくお待ちください。
少佐はまもなく来られます」
指し示されたソファに座り込む。
ポツンと僕ひとり。
5分ぐらい待たされただろうか。
あの海軍将校さんが入ってくる。さっきまで持ってなかった書類ファイルを持っていた。
「中尉も同席してくれ。
これからも色々と頼むかと思う。
この件は君の上司の許諾をもらっている。
だから、その為にも同席を頼む」
あの偉いさんの憲兵さんが頷いて、僕の横のソファに座り込む。
案内をしてくれた秘書官がお茶を出してくれる。
けっこう美人な人だった。
軍務省の制服なのか、農灰色のスーツが格好いい。階級章は・・・・見当たらないね。
お茶を用意してくれると、その秘書官はドアの所まで行き一礼して退室していった。
いよいよ面接だった。
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