第15話

 プロローグ15



 僕が乗った車が止まる。

 ドアが開いて、憲兵さんたちが降りていく。

 あの憲兵さんが目で、降りろと ・・・・・


 降りたら、僕の目の前には地味だけど高級感を出している建物、3階建てだった。

 ガラス張りのエントランス、一般人には入れない雰囲気だった。

 その出入口エントランス真上には、

 看板じゃねーぞ、ネームプレートだぞとばかりに、オシャレな感じに【海軍ゲストハウス】と表示されていた。


 海軍の飛行機!? 海軍ゲストハウス? 

 でも陸軍の適性検査? なぜ、陸軍? 海軍? 

 そして、憲兵 ・・・・


 わからない ・・・・・ 


「このまま付いてきたまえ」

 あのたぶん、偉い憲兵さんが、そのまま、ガラス張りの出入口エントランスへと ・・・・・

 ガラス張りのドアが自動で左右に動いていく。


 魔法かよ。

 確か ・・・・・

 確か、帝都で自動で開く扉が流行していると、去年ラジオで聞いたな。

 やっぱり帝都か、スゲーな。

 そのままエントランスからホールへ、受付のカウンターに男性の海軍のホテルマン?

 その人がサッと敬礼して、そのままだった。

 ここも顔パスかよ。


 偉いさんの憲兵さんはズンズンと奥へ進んでいく。

 昇降機エレベータがその奥に設置されていた。

 ガッシャンと昇降籠の扉を押し開くようにして開けると、

 眼で、早く乗れ ・・・・・

 わかったよ。

 乗るよ。


 全員乗るとガッシャンと派手な音をたてて扉が閉められる。

 ゴィィィィィン

 鈍い音を立てて、

 籠が上へと・・・・

 3階まで上がる。


 そのまま、廊下奥、突き当りの部屋に案内される。

 広い部屋だった。

 質素な部屋だが、高級な作りになっているのが判る。

 ゴダゴタした装飾なんか一切ない。

 ただ、その部屋に置かれているテーブルなんか高級品と一目で判るものが使われている。

「ここが君の当分の宿舎となる。

 その奥にシャワーがある。

 シャワーを浴びて、明日に備えてくれ。

 明日はたぶん8時に責任者がくる。もう夜中の1時を回っているから寝てくれ」

 僕はベットに腰かけて、あの憲兵さんの話を聞いていた。


 間が開く。


 厭な間だった。

 あの憲兵さんの顔を見る。

 指揮を取っている憲兵さんの顔が、また、怪訝な顔になっている。


 その顔は、[ なぜ 返事をしない ]。


 僕はまっすぐに眼をみた。


 その憲兵さんはしっかりと僕の視線を受け止めてくれる。

 憲兵さんの顔が[ わかったよ すきにしろ ]と。

 そして、たぶん、部下なんだろう、他の憲兵さんに部屋から出るぞと視線を送り、

 そのまま、ドアを開けて出ていく。


 忌々しい感覚でいっぱいだった。


 すぐにハダカになってシャワーを浴びる。


 熱いシャワーはやっぱりきもちいい。

 10分程度浴び続ける。

 ささくれ立った気持ちが少しだけ、さっぱりする。

 シャワー室から出て備え付けのタオルを使う。

 すんげー高級なタオル。

 ふかふかのモフモフと言ったらわかってもらえると思う。


 5日間、下着を着替えていなかった。

 雑嚢を開けて支給してもらった陸軍の下着を着替える。

 大佐はやっぱり、僕がここに泊まるのを見越していたみたいだな。

 余分に下着が入っている。

 喜んでいいのだろうか。

 なんかものすごく複雑な気分。


 でも、肉体的にはものすごくさっぱりしている、気持ちが少しマシになる。

 部屋の壁の時計を見たら、夜中の1時45分。

 財布を入れていたあの袋、僕の腕時計も一緒に入れてある。

 腕時計の時間は10時45分 ・・・・・

 3時間の時間差、やっぱり、帝国くにを横断している。


 初めての帝都。


 騙された気分。


 403駐屯地に予備検査に来てから、そして、今、僕は帝都にいる。


 おい。


 これってどーよ。


 少し、外の空気が吸いたくなってきた。


 陸軍の作業服を着て、防寒マントを羽織る。


 ドアを開けた。


 あの憲兵さんが立っている。


「こんな夜中にどこへいく?」

「ちょっと外の空気を吸いたくなって」


 僕はストレートにその憲兵さんの眼を見て言った。


「そうか、俺たちは君の行動を妨げるつもりは全然ない。

 ただ、俺たちは君の警護を仰せつかっている。

 24時間ずっと君の警護警備が俺たちの仕事になっている。

 だから、君はイヤだろうけど俺たちは君を警護するために一緒に行動する。

 すまんな、これが仕事なんでな。

 ちょっとだけ待ってくれ。

 俺の部下が二人、隣の部屋で着の身着のまま仮眠を取っている。

 すぐに起きる。

 仕事だからな」

「ちょっとまってください。

 24時間、警護?

 ほんとですか」

 「ほんとだよ、だから、君の部屋の前で俺が立哨警備立ち番している。

  2時間交代で部屋の前で警護する。

  まじのまじだよ。

  現に俺がこうして立っている。

  これが仕事なんだ。

  俺達のね」

 

 シヨックだった。

 うそだろう。


「 ああ あのずっとついてくるのですか 」

「 すまんな 」


 なんてこった。


 「すいません、じゃ寝ます」

 「わるいな、そうしてくれると助かる」


その憲兵さんはニヤリと笑う。

こえーよ。


僕は部屋の扉を閉じた。





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