第12話
プロローグ12
「我が帝国陸軍は大所帯の組織だからな、いろんな仕事があるわけだ」
軍曹の陸軍なのに大型船舶を扱う、その話にへー・・・と感心してしまう。
そんな話を車内で軍曹としていたら、目の前の道路が照明で明るく照らされている。
道路だけじゃなかった。
トンネルに入る前に見た滑走路、ものすごく明るくなっていた。
全面的に照明が点灯していて、滑走路が夜間にもかかわらず昼間の様に照らされていた。
僕があれっと驚いていると、そのまま車はあの飛行場の中へと走っていく。
煌々と照らされた飛行場には大型の飛行機がエンジンがかかったまま駐機している。
そこにぽつんとだれか立っている。
よく見たら、大佐だった。
大佐が待っていた。
僕が乗っている車はそのまま大佐のところまで行き停止する。
「降りたまえ」
軍曹が強い口調で僕に車から降りるように促している。
えっ、もしかしてこれに乗るの?
降りたら、飛行機のエンジン音が煩わしかった。けっこうでかい音でプロペラが回っている。
わからなかった、なんで飛行機?
大佐がニコニコ顔で僕を見ている。
「それで一番最初に説明した通り、次は面接になる。
残念だが面接する場所が少し遠い処になってしまっている。
これに乗ってくれたまえ。
着いた場所で面接を予定している」
えっ・・・・
着いた場所で め ん せ つ ・・・・・
やっぱり乗るの? これに?
そのまま軍曹に背中を押されて誘導されてしまう。
鈍い銀色で輝いているでかい飛行機・・・・・・
大型のエンジンとプロペラ・・・・・片翼にエンジンが3発・・・・・・
胴体が長い、頭から尾翼まで・・・・・
それらを横目で見ながら、後ろの部分が大きく開いていた。普通、飛行機って搭乗タラップなんかで入るはず、この飛行機は後ろからスロープみたいなものを上っていく。
ブルブルと回っているプロペラの風切り音とエンジン音がものすごく耳障りだった。
後ろのスロープから入る。
中は明るく輝いている。
誘導されて前へ前へと、飛行機の中はがらんとして何もなかった。
座席もない、これってもしかしたら ・・・・ 輸送機 ?
「前へ行きたまえ」
そのまま軍曹に背中を押されながら、機内の一番前にあるドアがあり、そこは開いていた。
そのドアをくぐって入ると、操縦席だった。
三人の軍人が僕を見ていた。
僕が来るのを待っていたみたい。
「そこに座りたまえ」
座ったとたん、ベルトをさせられてしまう。四点方式の安全ベルトに似たベルトだった。
座った席は・・・・操縦席から少し離れた後ろの席・・・・
ここって飛行機の一番前の部分だよな。
僕が座っている席は真ん中の通路の左側になり、僕の横には赤と黒の斜線で注意喚起だと思う、その赤黒線で囲まれた窓がある。
よく見たら上に緊急脱出窓の表示がなされていた。
軍曹と入れ替わりに、大佐が荷物を持って来てくれた。トンネルに入る前に僕の私服を入れたあの雑嚢だった。
それと現金と財布を入れた袋も同じく持ってきてくれて、封がされているのを確認するべく、それを僕に見せてくれる。
「君の財布だ。誰も中身は触っていない。封はそのままだね。いいね、まちがいないね。
着いたら迎えがある。その迎えの係の指示に従ってくれ。
それとこれを持っていきたまえ」
大佐は僕のひざの上にたぶん陸軍の防寒マントだと思う、それを置いてくれる。
「えっ、これくれるのですか」
「違う、いいか、君、これは官品だ。
だから君にくれてやる訳にはいかない。
あくまでも貸出になる。それと雑嚢も貸出になる。もちろん今着ている作業服もだ。
まあ、簿外品扱いになる。だから君に永久貸出にしよう。
いいか、大事に使ってくれたまえ」
「あっ・・・ありがとうございます」
永久貸出って、それってやっぱりくれる事といっしょだよね。
「あの大佐、この飛行機はどこへ行くのですか」
「うん、だいじょうぶだ。
すぐ着く。
心配はいらない、着けばわかる。
それと、腹が減ったろう。
弁当を用意している。
気流が安定したら食べたまえ。
機長が指示してくれる。
それとトイレはこのすぐ後ろにある。
使用したい場合は声を掛けたまえ。
大丈夫だ、心配いらない。
おっと忘れていた。
面接が終われば、協力金が支払われる。
まあ、それを取りに行くと思ってくれ。
夜間飛行は地上の明かりがものすごくきれいだ。
楽しんで乗ってくれたまえ」
大佐は僕の問いに答えてはくれず、ニタッと笑ってそれで終いだった。
「では、機長、よろしく頼む」
大佐は操縦席に向かって、そう言うとドアから出ていってしまう。
はっと操縦席に座っている人と眼があった。
だいじょうぶだから、しんぱいするなという顔だった。
そりや不安になるよ。
飛行機に乗るなんて、聞いてないよ。
初めての飛行機がこの軍用機か。
その人がマイクを持って何か話をしはじめていく。
管制塔って言葉からやっぱり管制塔と交信しているみたいだった。
専門用語と僕の知らない用語で何を言っているのか、わからなかった。
すぐに飛行機が動き始めていく。ゆっくりとゆっくりと動いている。
ごろごろごろごろという振動というか、まるで荷車に乗っている感覚になる。
ふと、窓を見たら大佐が見ていた。
僕が会釈すると、大佐はビシッと敬礼を返してくれた。
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