第2話

プロローグ2


ドアを開けて中に入る。


誰もいない。


 そこには大型のパテーションで仕切られていて、全体が見えないようになっていた。

目の前のパテーションの前には、長テーブル置いてあり、何やら注意書きが表示されている。

それには「最初に来た人は1番のバッチを取ってください。あとからの人は番号順にバッチを取り、胸につけてください、そして矢印の方向へ進んでください」と書かれている。

そして1番から20番までの番号が付いたバッチが並んでいた。

どうやら僕が一番目で、1番のバッチを付けなければならないというわけだよな。

バッチを胸につけて矢印の方向へ進んて行くとパテーションによって通路が作られおり、待合所と看板がある処に誘導されていく。

そこにはパイプ椅子が20脚用意されていた。

とりあえず椅子に座って検査が始まるのを待てということだよね。腕時計をみると8時30分、あと30分待てばいいわけか。

僕が椅子に座っているとパテーションの陰から迷彩服を着た兵士が顔を出して僕を見ていた。

 目と目が合ったので会釈するとパテーションの陰に隠れるように姿を消してしまう。オッ、来ているなという感じだった。

それからしばらくしてから、僕より年上の20代後半と思われる人が入ってくる。けっこう体格がいい、ふくらんでいるというか肥っている。


 まあ、表現は悪いけどデブだよな。

 

チラッと僕を見て、2番のバッチを胸につけながら僕の二つ隣に座り始める。この人と僕の二人だけか、今日の予備検査は。

腕時計を見ると8時58分、もうそろそろ時間だよね。

そう思っているとバタバタと駆け込むように男が入ってくる。ふう、間に合ったという顔をしている。

僕よりやっぱり年上に見える。見た目は25才ぐらい、並べられている椅子の真ん中にドカッと座り込んで手にしていたバッチを胸に付け始めていた。

時間に間に合うようにここに来たのは、僕を入れて3人だけのようだ。

腕時計を見たらちょうど9時になる。

もうそろそろだなと思っていたら、さっきパーテーションから顔出していた兵隊さんが出てくる。


「おはようございます、9時になりましたので参軍志願者予備検査を行います。

では、出頭命令書を回収します」


命令書を手渡すと、その場で①と番号を書き入れていた。同じく2番の人は②と書き込まれていく。

命令書を回収すると、また声を張り上げて僕たちに指図していく。


「最初に身体検査を行います。私の後に続いてください」


なんというか、毎日この文言をしゃべっているのだろうなと思わされる味気ないもの言いになっていた。

椅子から立ち上がって言われたとおりに後をついていくと、また、パーテーションで区切られた広間みたいにしてあり、案内をしてきた兵隊さんが床を指し示す。

そこには1番から20番まで番号が描かれている木箱が並んでいる。


「はい、胸に付けた番号と同じ番号の箱にそれぞれ衣服を入れて全裸になってください。

ポケットに入れている財布や家のカギ、当然、腕時計もです。

持ち物全部ですよ」


えっ、ここでハダカになるの。

 うひゃ、まじかよ。

 

裸になるというのはうすうす聞いていたけど、マジで裸、全裸になれってか。

その指図した兵隊さんの顔は冗談を言っている顔じゃない。おまえらさっさと服を脱げと言いたげな顔になっている。

仕方ない、1番の箱の前に立って、服を脱ぐ。

僕が服を脱ぎだしたので、他の二人も脱衣していく。全員が全裸になると、また指示があった。


「はい、靴の袋を最後に入れてください。

カギを手渡しますから、蓋をして自分でカギをかけてください」


そういって、僕に1番と書かれた札と紐が付いたカギといわゆる養生テープを手渡してくる。


「いいですか、もう一度言いますよ。

しっかりとカギをかけてください。

カギを掛けたら次にすることは、養生テープを使います。

いいですか。

カギ穴の上から十字に養生テープをはってください。

十字ですよ。

十字に養生テープを張り付けてください。

わかりましたか。

そして、そこにサインしてください。

封印のサインです。

あなた自身で封印をしてください」


「はい、1番の人、十字封印したら2番の人に養生テープを渡してください」


すぐにカギをかけて、言われたとおりに、十字封印というらしいそれをカギにに施した。こんなちゃちな封印って意味あるのかな。


終わったら、あの肥った人に養生テープを手渡したら、目が合った。

その表情が面白かった。

なんでココはこんなにめんどくさいところなんだという顔している。


くそう。

その表情に、僕はおもわず笑いそうになったけど、歯を食いしばって堪えたよ。


「はい、このペンでサインですよ」


 そう言って、指図している兵隊さんが僕にサインペンを手渡してくる。

書き終わったら、さっきと同じように2番にペンを手渡していけという表情になっている。

はいはい、わかっていますよ。ちゃんと手渡しますよ。

自分の名前を書き込んで、ペンを2番の人に手渡した。

指図している兵隊さんが、僕たち三人が一通り十字封印とやらをし終わるのを見届けると、また声を張っての指図、たいへんだな。


「おわりましたか。

では、いいですか。

カギは首にかけてください。

首にかけてください。

三番の人、三番の人、かけてください。

三番の人、首にかけてください。

これからは番号で呼びますからね。

いいですか。

三人ともこっちに来てください」


僕たちに指示している兵隊さんは、お前らとっととやれよ、早くしろと言いたげな顔になって、また声を張っている。


たいへんだね。


こうして僕たちは素っ裸で身体検査を受けることになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る