28話 学園対抗戦(2)
◇◇◇◇◇
(マシェ)
カリナはさも当然のように勝利して戻ってきた。
……次は私の番。
マシェは大きく息を吸い込む。
魔法の勉強は十分してきたつもり。リーノにも色々特訓をしてもらった。
戦う訓練もたくさんしてきた。負ける要素はないはず……。
そう思いながら前に出る。
すると実況してる人が大声を上げて紹介してくる。
「次の対戦はライゼンフォルト学園からはマシェ・ロックウッド!! ライゼンフォルト学園はまさかの入学生二人をメンバーに入れているぞ!」
まわりから大歓声があがる。
「対するはミューズ学園の代表、ミラアリス・ユーズリアだー!」
歓声とともにマシェの前に現れたのは先程カリナと言い争いをしていた少女だった。
「私が出るしかないからね。ここで負けたら終わりだし」
「……負けない」
学園の代表と言われてるだけあってかなりの腕を持っているはずだ。
どこまで自分で対抗できるのか……。
少し不安になりながらもマシェはぐっと気合いを入れていた。
向かい合うミラアリスは杖を構えている。
どうやら彼女は魔法をメインで戦うタイプのようだった。
マシェも同じように杖を構える。
リーノが倒したドラゴンの素材でできた杖……。
振りやすく、魔法も使いやすくなるこの杖はもう使わないことを考えられないくらい毎日使っていた。
「ふーん、武器はいいものを使ってるのね。でも、扱いきれるのかしら?」
ミラアリスが挑発をしてくる。
カリナにもしていたことを考えるとこれが彼女の本気のスタイルなのだろう。
「……見ればわかる」
挑発を受けることなく、軽く流すとすぐに魔法を使えるように準備する。
すると審判が声を上げる。
「試合開始!」
その瞬間にミラアリスが詠唱を始めていた。
「新緑なる風よ。我が力を糧にかのものを――」
かなりの早口で詠唱するミラアリス。ただ、詠唱が終わるのを待つマシェではなかった。
軽く杖を振ると氷の矢がミラアリスを襲う。
「う、うそ、む、無詠唱!?」
驚きの声を上げるミラアリス。
詠唱を途中で中断すると飛んでくる氷の矢を必死になってかわしていた。
さすが代表に選ばれることだけあって、氷の矢は全てかわされてしまった。
ただ、それで攻撃の手を緩めずに更に魔法を使っていく。
さっきと同じように氷の魔法を放っていく。
「同じ魔法だと当たらないわよ!」
「……うん、わかってる」
同じようにかわそうとするミラアリス。
しかし、今度は体が動くことはなかった。
「う、うそ、ど、どうして足が固まってるの!?」
「……拘束の魔法」
ミラアリスの足は凍りついており、その動きを完全に封じていた。
氷の矢に意識を向けさせて、その先に足元を固める。
まだ、この魔法はリーノほど安定して使えないから別のところに意識を向けさせる必要があったけど、上手くいってよかった……。
ホッとするマシェ。
そして、最初に出した氷の矢がそのままミラアリスに降り注ぐ。
「ぼ、防御を……。み、緑の風よ、我を……きゃあぁぁぁっ!!」
ミラアリスは必死に詠唱を唱えていく。しかし、それより早くマシェの氷の矢が降り注いで悲鳴を上げていた。
ただ、相手は強敵だ……。
マシェは油断することなく、相手をジッと見ていると巻き起こった煙が晴れて、ボロボロの姿になりながらもゆっくり前に進んでくるミラアリスの姿があった。
「わ、私は……、負け……」
気力だけで立っていたのだろう。
数歩進んだ後で倒れて、そのまま気を失っていた。
「勝者、ライゼンフォルト学園のマシェ・ロックウッド!!」
観客の誰もがミラアリスの方が勝つと思っていたのだろう。一瞬場が凍り付く。しかし、すぐに大歓声が起きる。
ただ、当の本人はそれを気にした様子はなく、リーノ達のもとへと戻っていった。
◇◇◇◇◇
「マシェ、すごかったな。やっぱりその無詠唱魔法、うらやましいな」
カリナ先輩が嬉しそうにマシェを褒めていた。
ただ、マシェは僕の方に視線を向けてきていた。
もしかして、僕に褒めて欲しいのだろうか?
「うん、すごかったよ。圧勝だったね」
よしよしとマシェの頭を撫でると彼女はようやく嬉しそうに笑みをこぼしていた。
さて、次は僕の番だね。
グッと両手を挙げて伸びをするとそのまま闘技場の方に行こうとする。
するとカリナ先輩に止められる。
「どこに行くんだ?」
「えっと、次は僕の試合ですよね?」
「いや、この試合は二勝した方が勝ちだからな。もう、我々の勝ちだ」
あれっ、これだと最後まで僕の出番がないんじゃないの?
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