27話 学園対抗戦(1)

 そして、ついに学園対抗戦の日がやってきた。


 僕達は対抗戦に出るために王都へとやってきていた。

 年に一度のお祭りのためか、王都はお祭り雰囲気に覆われていた。

 そんな中、僕たちはライズに大きな闘技場へと連れてこられた。

 その中に入ると控え室のようなところで順番を待つことになった。

 じっと待っていると側にいる男性がカリナ先輩に話しかけてくる。


「よう、やっぱりお前が出てきたか」

「……ミハエル」


 カリナ先輩がミハエルと言った男性は、クスクスと嘲笑してくる。


「それにしても、せっかく優勝候補なのに子守か? もっといい人選が出来たんじゃないのか?」

「いや、これが優勝するためのメンバーだ。あとから泣きを見ても知らないぞ」


 カリナ先輩が笑みで返していた。


「そうか、それなら楽しみにさせて貰うよ。決勝までに倒されないでくれよ?」


 ミハエルは笑いながら去っていった。

 そんな彼の言葉を聞いて、カリナ先輩は心配そうに僕たちをみてくる。


「安心しろ。お前たちの強さは私がよく知ってる」

「えぇ、そうですね。ここまできたんですからやれるところまでしましょう!」


 僕がぐっと両手を握りしめると、その仕草が面白かったのか、カリナ先輩は小さく微笑んでいた。


 ◇


 そして、しばらく待つと僕達の出番になる。


「まぁ、無理はするなよ」


 ライズがため息交じりに言ってくる。

 やっぱり生徒である僕達が傷つくのは見たくないってことなのかな?


「くれぐれも相手を消し飛ばすなんてことはするなよ」


 ライズはもう一度僕を見て言ってくる。

 あれっ、僕の心配じゃないの?

 ライズの心配に首を傾げながらも僕達は闘技場の方へと出て行く。


 ◇


 闘技場は円形の石造りの建物でその中央部に出てきた。

 まわりは観客席のようで、そこは空席なく埋まってきた。

 そして、僕達の登場と主に大歓声が起こる。


「ついに出てきました。優勝候補の一角、カリナ・レインが率いるライゼンフォルト学園です。対するはミューズ学園だー!」


 まるで爆発音にも似た大歓声が再び起こる。

 そして、僕達の前には三人の男女が現れる。


「ふっ、優勝候補が聞いて呆れるわね。まさかこんな小さな子供を連れてくるなんて」

「言ってると良い」


 カリナ先輩と女性が睨みを利かせあう。

 そして、背を向けると解説の人が説明を再開する。


「今回の学園対抗戦は一対一の戦闘を行い、先に二勝した学園が勝利となる個人戦です。では、まずは先鋒戦、対戦メンバーの発表だー! まずはライゼンフォルト学園、カリナ・レイン! おおっと、まさかのライゼンフォルトにその人ありと言われたカリナ・レインが先鋒戦で出てきたぞー!」


 この解説の言葉に歓声とブーイングが入り交じっていた。


「卑怯だぞー! そこまでして一勝が欲しいのかー!」


 そんな言葉が聞こえてきてカリナ先輩は苦笑を浮かべていた。

 でも、この順番には理由があった。

 相性の兼ね合いだと思うが、カリナ先輩は初級魔法の無詠唱を完全にマスターしたマシェを相手に勝ったり負けたりを繰り返していた。

 年下の入学したばかりのマシェに負けたのがよほど悔しかったのだろう。

 だからこそ、この順番になった。

 ただ、これほどのブーイングを前にしてもカリナ先輩は落ち着いていた。

 そして、ゆっくり中央へと進んでいく。


「対するミューズ学園からはミック・リッパーだー!」


 ゆっくりと男性が前に出てくる。


 ◇◇◇◇◇

(カリナ)


 相手はおそらくミューズ学園の三番手……。さすがに後れを取ることはないだろう。

 ゆっくり剣を抜くと精神を落ち着かせる。

 色々と罵詈雑言が飛び交っているが、不思議と気にはならなかった。


 まぁ、その分観客は驚くだろうな。マシェの無詠唱やリーノの強さを見たら……。


 少し微笑むとじっと相手を見つめる。


 相手も同様に剣を構えているが、こうした大舞台は初めてなのか緊張した様子で少し顔色が悪かった。


「ど、どうして俺がカリナを相手に……」


 青白い顔をした相手に本気を出すのは申し訳ないなと思いながら、これも試合だからとグッと剣に力を込める。


「では、試合開始!!」


 中央にいる審判の人が合図をする。

 その瞬間に足に魔力を込めていく。

 前までは発動に数秒かかっていたのだが、リーノと特訓をすることによって、その発動はかなり短縮できた。


 そして、相手が動き始める頃には既に勝負がついていた。

 高速で相手の腹に剣の柄で殴りつける。

 そこで相手は地に伏していた。

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