26話 訓練、リーノvsシーナ
カリナ先輩にさっき思いついたことを説明すると「さ、早速試してみる」と言って訓練場の隅で一人魔法の練習を始めてしまっていた。
えっと、一応僕達もした方が良いのかな?
僕と向かい合うようにシーナが立っていた。
「二人とも、準備は良いか?」
ライズが尋ねてくる。
「私は大丈夫だよ、リーノ君は?」
期待たっぷりのシーナが聞いてくる。
「僕も大丈夫だよ」
シーナに対して笑みを見せると彼女も笑って返してくれる。
しかし、すぐに真剣な目つきに変わっていた。
「では、はじめ!」
ライズのその声とともにシーナが詠唱を行う。
「雷鳴よ。天より降り注ぎて、かの者を浄化したまえ。
シーナの詠唱が終わると同時に空から巨大な雷が落ちてくる。
「まさか上級魔法を!?」
ライズから驚きの声が漏れる。
しかし、それを気にすることなく僕も指を鳴らし、同じ強さの魔法を放つ。
ドカァァァァァン!
同威力の魔法は空中で衝突すると激しい音を鳴らして爆発する。
「やっと上級魔法が使えた……」
シーナは嬉しそうに微笑む。
「まだ少し魔力の調整が荒いかもしれないね。狙いも僕から少し離れていたし……」
あのまま落ちていたとしても、魔法の威力が大きいから当たっていただろうけど、中心からはズレていた。
「うーん、やっぱり細かい操作って苦手なんだよね。でも、リーノ君は相変わらず無詠唱できるんだね」
「練習すればシーナもできるよ。試してみる?」
「む、無理だよー。まだ……」
シーナが少し困った表情を見せる。
「ま、まだってことはいつかはできるってことなのか!? だって上級魔法だぞ!?」
カリナ先輩は少し驚いていた。ただ、さも当然のようにマシェが答えてくる。
「……リーノが使える。だから私もいつか使える」
「とにかく今私ができる全てをぶつけてみる!」
シーナが今度は得意としている雷の槍を出してくる。
ただし、その詠唱はなかった。
「嘘だろっ!? 中級魔法を詠唱破棄だと! ついこの間までかろうじて使える程度だったのに」
ライズが驚きの声を上げる。
それを見て、学園長は「ほっほっほっ……」と笑みを浮かべていた。
うん、やっぱり得意の魔法だけあって、かなり上手くなったね。これなら牽制くらいには使えそうだ。
あとは、もうちょっと強い魔法を使えるようになれば、冒険者としてやっていけそうだよね。
ただ、今はまだ僕の敵にはならないね。
雷の槍をサッと手で払うと一瞬で砕け去った。
「やっぱりリーノ君には勝てないや……」
やれることを全てやったシーナは残念そうに笑みを浮かべる。
「でも、シーナも順調に成長してるね」
いつか僕も抜かされるかもしれないね。
そんなことを期待していると、シーナは顔を真っ赤にして答える。
「り、リーノ君に勝てる未来なんて想像できないよ!」
すると、それに同意するようにマシェも頷いた。
「……うんっ、リーノには勝てない」
「試合終了……でいいんだな」
ライズがおどおどと確認をしてくるので、頷いてみせる。
◇
「やっぱり、リーノはすごいな……。もしかして、私たちもリーノに教われば強くなったりするのか?」
カリナ先輩が期待しながら聞いてくる。
「えっと、カリナ先輩に教えることなんてありますか?」
スタイルはもう完成されている気がするし、あとは純粋にきたえていくだけのような気がするけど……。
「いや、私も行き詰まっていてね。例えばリーノに使ったあの技とか……。未完成だから学園対抗戦までにはものにしたい……」
なるほど、目標があるなら教えやすいかも――。
「俺は……やはり今回の学園対抗戦は辞退させて貰う。改めて自分の未熟な部分を思い知らされたよ」
アラン先輩が突然、辞退の宣言をしてくる。
「い、いや、突然そんなことを言われても代わりのメンバーはどうするんだ?」
「マシェ……、君が代わりに出てくれないか? 一応メンバーの交代はまだ認められていたはずだ」
皆の視線がマシェに集まる。
そして、マシェもどうするか考えていたようだが、最終的に小さく頷いていた。
◇
アラン先輩は訓練場から去って行った。
そして、僕達五人は毎日訓練場で特訓を行って学園対抗戦に備えていた。
ただ、なぜかみんな僕に魔法の使い方を聞きに来ていた。
一応、尋ねられたことは答えていったけど、それで本当にみんな強くなるのかなと不安には思った。
それでも、「リーノ君、ありがとう」と笑顔で言われると僕も嬉しくなってきた。
そんなある日、訓練場にライズがやってきた。
「リーノ、お前にお客さんだ」
「えっ、僕に……ですか?」
「あぁ……、なんでも渡したいものがあるそうだ」
渡したいもの? なんだろう……。
少し考えてみたが全く思い当たる節はなかった。
でも、それも会いに来た人を見たら吹っ飛んだ。
「よう、約束の武器を届けに来たぞ」
やってきたのは以前町にドラゴンが襲ってきたときに助けたおじさんだった。
その手には大きな四つの袋包みがあった。
「まずは剣が二本、短剣が一本、杖が一本だ。本当なら剣を三本にしようとしたんだが、多分あんたには短剣の方が使いやすいだろう?」
確かにおじさんの言うとおり僕は短剣の方が使いやすかった。
早速短剣の袋包みを開けてみるとそこにはいろんな宝飾が施された、武器については何も知らない僕が見ても思わず見惚れてしまう短剣が出てきた。
「えっと……、さすがにこれは高価なものなのじゃないですか?」
「いや、命を救って貰ったんだ。このくらいはさせてくれ。それにドラゴンの骨のおかげで実際はもうけすら出てるんだ。逆に受け取って貰えないと俺が困る」
それなら遠慮なく受け取らせて貰おう。
「ありがとうございます。大事に使わせて貰いますね」
「おう、それじゃあ約束は果たしたからな。ただ、手入れが必要になったらいつでも来てくれ。あんた達には無償で手入れをしてやるから」
それだけ言うとおじさんは手を振って去って行った。
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