29話 学園対抗戦(3)

 それから僕はただついて行くだけの……、いないような生徒の扱いを受けていた。

 まぁ一度も戦っていないから仕方ないんだけど、なんだか腑に落ちないなぁ……。


「まぁ、仕方ないさ。リーノが出ると確実に一勝を取れるんだから私もなるべく隠しておきたいんだ」


 カリナ先輩が苦笑いしながら言ってくる。

 それに同意するようにマシェが何度も頷いていた。


「でも、さすがにそろそろ出て貰わないといけなくなりそうだな。そろそろ相手は優勝候補の一角になる」


 僕達の前に自信ありげな三人組が出てくる。


「カリナ、今日こそは勝たせて貰うぞ!」


 カリナ先輩にライバル意識を燃やしているのか、少年がビシッと指を向けてくる。


 しかし、当のカリナ先輩はそんな様子を気にすることなく彼らの中央にいる少女へと目を向けていた。


「お、おいっ、無視するな!!」

「久しぶりね、ラミネ」

「えぇ、ご機嫌麗しゅう」


 スカートを軽く掴みながら挨拶をしてくる少女。

 カリナ先輩とは頭一つ分くらいの背丈の差があり、お世辞に言っても強そうには思えなかった。


「今度こそ勝たせてもらうわよ」

「ふふふっ、それはどうかしらね」


 不遜に笑うラミネと言われた少女。

 どうやらカリナ先輩は一度この少女に負けているらしい。


 そんな相手ならとてもじゃないけど、油断は出来ないね。


 するとそんな隣で怒りをあらわにする少年。


「すまない。今回は私がラミネと戦わせてくれないか?」


 僕達に向けてカリナ先輩が頼んでくる。

 別に戦う順番なんて気にしたことがないから僕は何番でも良いかな。


 僕が頷くとそれに合わせるようにマシェも頷く。


「恩に着るぞ」


 カリナ先輩が頭を下げてくる。


「ラミネ、これで戦う準備は出来たぞ! 出てくるといい」

「また負けたいのかしら? いいわ、その挑発に乗ってあげる」


「おおっと、ここで対戦選手の順番交代があるようだ! ライゼンフォルト学園からは変わらずにカリナ・レイン。対するムスリーズ王都騎士学園からはラミネ・フォウードだ!!」


 解説の人の声で今までで一番大きな歓声が起きる。


「うおぉぉぉぉぉ!! まさか去年の決勝を争った二人がここで戦うことになるとは!!」

「どっちもがんばれーーー!!」


 そっか……。去年はこの二人が戦ったんだ……。

 でも、カリナ先輩を倒したなんてすごい能力を持ってる人なんだろうな。


 期待を目に僕は二人の戦いを見守っていた。


 ◇

(カリナ)


 あいつは去年も様々な魔法で私の足止めをして、最後に大きな魔法を使ってくるという戦法をとっていた。

 典型的な魔法使いタイプ。

 今年はマシェのおかげで徹底的に対策をとれた。

 これならよほどのことがない限り負けることはない。


 ただ、私が知っているのは去年までのあいつだ。

 私同様去年より大幅に強くなっていると考えるべきだろう。


 ならばまずは様子を見るべきか。


「試合開始!」


 審判からの合図があったが、それよりもラミネの動きにジッと集中する。

 ラミネの方も詠唱を開始せずにお互いがその場から一歩も動かなかった。


「おい、もう試合は始まってるぞ!」


 観客からヤジが飛んでくるが、それは耳には入ってこない。

 ただ、このままジッと様子をうかがっていてもどうすることもできないな。


 ラミネがこの後どう動いてくるかを予想しながら私は先に軽く剣を振るった。

 剣を振るったときに起きた衝撃波がラミネに向かって飛んでいく。


炎の玉ファイアボール


 ラミネは衝撃波を軽く交わしてくる。そして、それと一緒に火の玉を投げつけてくる。

 それはそのまま剣で防ぐ。


 以前のラミネならどちらも魔法で防いでいたが、どうやら身体能力をかなり上げてきたようだ。

 ただ、それだけならまだ私の方に分があった。

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