第53話 大阪府警
若い警察官が、女性ライダーを抱えたまま「こっちです」と手を挙げる。
「事故の概況を説明出来ますか?」
続けて救助隊のうちの1人が声をかけて来たので、安が手をあげて事故の状況を説明しに行った。
「わかりました。護衛に関しては西崎社長から聞きましょう。事故の状況についてお聞かせください」と、年配の警官が言われたため、阪神高速守口線に入った途端、3台のバイクに突然襲われたため、仕方なく自衛手段としてベンツをバイクにぶつけて逃げた事などを話した。
若い警官が近づいて来た。鑑識の車や、覆面パトカーなどが次々到着し現場の状況を確認する。事情を聞いていた警官が、若い警官に言った。
「あのベンツに乗っている西崎美咲と言う人が、ハンナリマッタリーの女性社長で、彼らの雇い主らしいので、事情を聞いてくれないか。秘書も乗っているらしい」と言った。
「その自衛のためというのが、何処まで認められるかですよね」と、警官が頷きながらバインダーの白い紙に何かを書いていた。こちらの携帯電話の番号を確認し、それもバインダーの挟んだ紙に書き込んだ。
若い警官が先にベンツに向かった後、覆面パトカーから2組の男性が降りて来るなり、こちらに真っ直ぐに向かって来た。大阪府警時代の元同僚の犬神優と白石一博だった。犬神は、外見からして刑事と言われないと、反社会勢力の人間にしか見えない。眼光鋭く全身筋肉の塊のようで、このまま道路で弾んでドリブルが出来そうだ。一方白石は、真逆でシュッとして感じでネチネチと下からジワジワと来るようなタイプだった。
「阪神高速守口線で、蛇喰とかいう珍しい名前の私立探偵が、バイクで事故を起こしたらしいというので来てみたら、やっぱりおまえか」
白石が、自分の右手の爪先を見ながらそう言った。
「一応、全部話は聞けたか?」
そう言って、白石が先程まで話を訊いていた警官に訊ねた。警官が頷いた。
「後は俺たちがやるわ」
そう言うと、警官はベンツに向かって立ち去って行った。
「いつまでもこちらを気に掛けてくれていたとは、嬉しい限りだ。ハッタリマッタリーの副社長藤澤氏に、推薦してくれた恩もある」
そう言うと、白石の眉毛が上に上がった。白石が何かを答えようとした瞬間、犬神が喚くように言った。
「誰がおまえを気に掛けるんだ?何、面倒な事を起こしやがってと言っていれんだ」
「面倒を起こしたくて起こしているんじゃない。そこは間違うな」
「何だとお!てめー、よくもそんな口の利き方が出来るなあ」
犬神が激昂した。白石が犬神を宥めるように言った。
「まあ、待て。蛇喰、何が起こったんだ?おまえのおかげで阪神高速は大渋滞だ」
「俺たちは被害者だ」
安が救急隊に事情を説明して戻って来た。救急隊が心臓マッサージをしながら、救急車にストレッチャーを載せると、病院の調整をしているのかなかなか動かなかった。
安の顔を見て、犬神と白石が驚いたような顔になった。犬神が思わず訊ねた。
「蛇喰と一緒にいるのか?」
「何か悪いのか?2人でいると、国家転覆を図る恐れがあるから接近するなとでもいうのかい?その偏見に満ちた顔を辞めたらどうだい?蛇喰さんは、あんたらのような偏見に満ちた対応はして来なかった。他の誰より数倍信頼出来る」
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