第52話 事故の概況説明
「その2台も俺たちを襲って来たんだ」
「えっ、つまり都合3台のバイクが、あなたちを次々と襲って来たという事なんだね?」
安が頷いた。
「よくわからないんだけど。君たち2人は、このバイクに乗っていたの?」
何でそうなるのだ?と言った顔を安がした。
「あそこにベンツGLEを乗っていて被害にあったんだ。日本刀を振り回してきたり、ゴルフクラブを振り回して来たんだ」
「他のYAMAHAとHONDAの事故したバイクはあっても、乗っていたライダーがいないんだよ。事故現場近くで捜したんだけど」
警官がぼやくようにそう言った。無線を終えた若い方の警官が、「代わります」と言って、こちらが女性ライダーを背中を抱えていたのを交代した。ゆっくり立ち上がった。
「そんなに歩けないんじゃないかな?YAMAHAのXSRが転倒した際、後続のハイエースにライダーの足が轢かたようだったがな」
「あのバイクの持ち主が蛇喰さん?そして、バイクの運転もしていたんですよね?」
「ああ。今、少し先の路側帯に寄って停まっているベンツが見えているだろう?あのベンツGLEを護衛しながら京都方面に帰ろうとしていたら突然バイク3台に襲われたんだ」
「俺はベンツGLEに乗っていた側だ」
安がそう言うと、年配の警官が不思議そうな顔をした。先程安が言ったアルバイトという言葉とベンツという言葉とが警察官の中で結びつかないからだろう。
「バイク3台に襲われたというのは、交通トラブルか、何かですか?」
「いいや。バイクに乗った人間が、交通トラブルでいきなり日本刀を振り回してくるのか?普段からバイクに乗るライダーが、ゴルフクラブか、日本刀か何かを持ちながらバイクを走らせているのか?そんな訳ないだろう?」
そう安が呆れるように言った。
また他のサイレンの音が次々に聞こえて来た。他の警察の人間が、事故現場を封鎖しようと動く。別の警察官が交通渋滞を緩和しようと車の誘導を始めた。
「じゃあ、事前に彼らが準備をして来たというんですか?」
「普通はそう考えないか?」
安が冷たく言い放った。
「よくわからないので、何度か同じ質問をするかもしれませんが、そもそも護衛って何ですか?バイクで、ベンツを護衛したのは何故ですか?」
警官は、意味がわからないと言った風に、こちらをイラつかせないように丁寧に確認しようとしていた。何のための護衛なのか?バイク単独でする護衛とはどういう出来このなのか?普通考えてもいくらでも質問事項が出て来るだろう。
「あのベンツGLEに、今回の護衛に関しての依頼人が乗っている。西崎美咲という女性でハンナリマッタリーの社長だ。また秘書も乗っているから話を訊いてくれ」
「わかりました。後で聞きましょう」
「いや、今すぐに聞いてくれ。こちらは業務委託されているんだ。いくら警察に聞かれたといっても、雇い主の了解無しに話していいのかわからない」
そう言うと、安が太い腕を胸の前で組みながら何も言わずに頷いていた。赤色灯を回しながら、救急車が到着した。3人係でストレッチャーを下ろして降りて来ると、「怪我をされている方はどなたですか?」と訊ねながらこちらに向かって来た。
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