第28話 アミューズメント事業
弘宗が、馬面コンサルタントの顔を見た。世良が、せかせかと身体を揺すりながら話だした。
「よく検討してくださいな。ハンナリマッタリーが、このままことごとく中国資本との入札競争に負けたり、開発事業に参入出来なかったりしてしまうというなら、座して死を待つより新規事業を起こし動くべきだと思いませんか?」
「それらは、役員会で検討してからというのではないでしょうか?」
藤澤の言葉に、馬面コンサルタントは餌の入ったカイバ桶を突然取り上げられたような顔をした。
「役員会が上手く機能していないから、こんな事態を招いているんだろう?違うかい?下條先生からの提言って、待っくないんじゃないですか?」
弘宗が、そう言って声を荒げた。
「弘宗さん、僕はクラブを買い取るのがベストだと言ってませんよ。クラブも含めたアミューズメント施設を買い取る事で、新たらな事業展開をスムーズにロスなく提言出来るといったまでだ。あくまでも不動産購入だけでなく他のやり方を模索すべきだと言ったまででね。はっきりと何処そこを間違わないで欲しいんですよ。フルタヌキ一本で施設を買い取れとは指示していませんから。いわゆるそのクラブとかアミューズメントとか、若者のカルチャー分野では得意なのが、弘宗さんですからね」
上がり3ハロンを駆けて来たように、世良が鼻息を荒くそう言うと、弘宗は「そうそう」と頷く。
「中国資本と札束で競争するより、違った形を模索した方がいいんじゃないっていうことなんだよ」
「それがクラブなんですね?」
嶋田が、思わず口を挟んだ。
「先日西崎社長から、フルタヌキを買い取る件で相談を受けましたので、クラブを所有するカネハラ興産に問い合わせをしたしました。ところが先方からは、これは売るつもりはない。もしもどうしてもというなら、45億円を支払うなら考えてもいいだろうと言われました」
「シーちゃん、そうなの?45億か。用意出来ないの?」
弘宗から「シーちゃん」と呼ばれた嶋田が、困惑した顔をして西崎の方を見た。
「ヒロ君。45億円は向こうの言い値なのよ。事業と土地の評価からいえば20億くらいが妥当だと思うけど、私たちにはアミューズメント施設のノウハウがないから、経営的に成り立つのかはどうかで言えばギリギリの線だわ。それを45億って、かなり吹っかけられているわ」
「カネハラ興産のアミューズメント事業は、他の物はわかるくらい調子が悪くて、特に抱えているのが不採算店舗パチンコ事業の縮小、閉鎖も続いていて、唯一の稼ぎ頭がフルタヌキで、それらをどうしても売るならば、高く売りたいという思惑はあるでしょうね」
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