第23話 報告
「キャー!」
スマホを見つめていた嶋田が手の平にドブネズミが飛び乗ったかのように悲鳴を上げた。そして、スマホを2度と見ることが出来ないと言った風に両肩をすくめ震えていた。
「ビ、ビックリするじゃないの?!」
西崎が怒りながら、嶋田に苦情を言った。
「す、すみません。で、でもこれ見てください!」
そう言って、自分が見る事が出来ないから見て欲しいという風に、顔を背けながらスマホを見せる。
「こ、これが、ボヌールフィギュエールのInstagramにし、写真を、だ、誰かがiPhoneから上げているんです」
西崎が「えっ?」という顔をして嶋田の差し出すスマホを覗き込んだ。
「な、何よ、これ?」
西崎が嶋田の持つスマホを奪うように掴むと、こちらに見せて来た。見ると、ボヌールフィギュエールのInstagramに今先、誰かが店に警察官が来ている様子を投稿していた。そしてその写真の下に書き込みがあった。
「何があったのかな?この店、最近ヤバくない?怖いよー泣」という白々しい書き込みが添えてあった。余りにもタイミングが良すぎる。投石をした犯人が書き込んだ物だろうか。だが、Instagramの書き込みならまだ削除が出来る。しかし、わざわざ削除出来るのに、何のためにこんな事をするのだろうか?愉快犯といったところだろうか。
アイドルのフィギュアを頭から舐めまわしていたオタク並みに気持ちが悪かった。スマホを嶋田に返した。
西崎が訊ねて来た。「これは偶発的なことなのかしら?」
「相手は警戒している事だけは確かだ。殺すとか、壊すとか。今のままでは名誉毀損くらいでしか争えないだろう」
「では、どうすればいいの?」
「今は、相手の出方を待つしかない」
西崎が不満そうな顔になった。
「相手の出方を待つ?」
「ああ。どんな人間が、こんな行動を起こすのか、プロファイル出来る要素もまだ少ない。色々な事を考えながら動くしかないだろう。違うかい?」
冷静にそう言うと、何も言う事が出来なくなってしまった西崎は「チェッ」と舌打ちをした。その姿は、経営者としては相応しくなかった。場内指名がいつまでも取れないキャバクラ嬢の姿のように思えた。経営者として、こんな直情的に感情を現していては、誰かに対して恨みを買う原因になるのではないかと感じた。
スマホが鳴った。画面の表示を見ると、安からだった。西崎に「安から電話だ」と断り電話に出た。
「今、SONETエレクトリックカンパニーの前にいるんだが、人の気配が全くしない。その会社の前に、3台車が停められる駐車場があるんだが、1台も停まっていない」
「全員出払っているのだろうか?」
「それはわからないな。もう少しこの会社を見張っていようか?」
「そうだな。じゃあ、頼む」
電話が切れた。西崎が頭を少し右に傾け訊ねて来た。
「何て?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます