第22話 事情聴取2
「ある程度はね」
星倉が、メールをコピーした物を持って来てくれた。さすがエステサロンの店長だけはある。白い肌が瀬戸物のように光っていた。
「いただいていいですか?」
警官が訊ねた。星倉が頷きながら「どうぞ、差し上げます」と言って手渡した。
「このステンドグラスは、ドイツ製で本当に高かったんだから、犯人を絶対に捕まえてよ」
西崎が、他の警官に喚くようにそう言った。警官は、引きつったような顔をしながら答える。
「わかりました。そのために、我々も今情報を集めて犯人逮捕に繋げるように努力していますから」
尋問していた警官が、受け取ったメールにさっと目を通す。
「このメールを送信した者が、果たして投石をしたと考えますか?」
そうこちらが訊ねると、警官は「うーん」と唸り声を上げながらメールを読んでいた。
「何かわかって?何か!」
その様子を見ていた西崎が、詰問するように割り込みながら訊ねた。後ろに控えていた嶋田が、余りの剣幕にドギマギしながら困っていた。
「これらのメールからは、脅迫とまでは捉えられるような書き方はしていないな」
「今回の投石だって、別の偶発的な出来事の可能性だってある」
「バイクも後をつけていたかどうか、はっきりしたことはわからないからねえ」
「だから何んなのよ。じゃあ、始めから捕まえる事は出来ませんって言うの?」
西崎が、警官の胸元から覗き込むようにそう訊ねた。
「そうは言っていません」
西崎は顔を背けると、嶋田に言った。
「とりあえず、建設会社に電話して、割れたステンドグラスの代わりにガラスを手に入れて頂戴。これじゃ、防犯上良くないわ。ガラスが間に合わなければ、コンパネか何かを業者に言って貼ってもらって!」
「か、かしこまりました」
嶋田が、携帯電話を取り出し急いで連絡を取る。
「カラコンカラン」と玄関のベルが鳴りドアが開いた。
「あのー。本日予約していた榊原ですけども」
そう言って、キョロキョロと店内を見渡しながら女性客が入って来た。
「いらっしゃいませ」
星倉が、慌てて接客を行う。
「大変申し訳ございません。バダバタしてしまいまして。榊原様、下のお名前もお教えいただけますか?」
「榊原早苗です。何かあったんですか?パトカーが停まっているし」
「近くを通ったトラックが石を跳ね上げ、窓に嵌めていたステンドグラスを割ってしまったんですよ。ご心配をおかけしまして申し訳ありません」
星倉の説明は、核心をついてそうで突いていない見事な言い逃れだった。
「本当、この辺りよく大型のトラックが通るのよねえ」
榊原がそう答えると、星倉に案内され奥の部屋に消えて行った。
鑑識係が、現場などの写真を撮り終え片付けを始め出した。警官も聞き込みも終わらせると店を出て行き静かになった。
西崎と今後のボディガードのやり方を協議する。
「まだメールの内容と、今回のような事が繋がるのかどうかはわからない」
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