第3話 執事
楕円形の廊下の天井の両端は、観葉植物に光が当たる工夫がなされていた。白い壁に観葉植物の緑が、非常にリラックスさせる。そのような効果も考えているのだろう。
廊下の行き先が、行き止まりになっているのだが、とにかく先を行くしかない。行き止まりだと思っていたところは、白い壁に見えた自動ドアになっていた。ドアが開き中に入ると円形の玄関ホールに出る。床に反響する靴音が大きくなった。
床にはピンク色の大理石が敷かれ、壁には数枚の絵画がかけられていた。中央には、上の階へ続く黒く塗られた螺旋階段があった。その手前に、紺のスーツに蝶ネクタイを締めた白髪を2ブロックに分けた60代半ばの男性が立っていた。こちらの姿を見つけると、深々と頭を下げた。少し安心した。一瞬、蝋人形に見えたからだ。やっと人に会えて正直嬉しかった。
「蛇食様。お待ちしておりました。執事の石田でございます。こちらの螺旋階段をお上がりください。自動ドアの奥のカウンターの上に電話があります。受話器を取り米印を押して、03と番号を打ってください。西崎の部屋に繋がります」
そう穏やかな口調で話しかけて来た。手すりに掴まり螺旋階段を上がる。螺旋階段の先には、宇宙船の開口部のようなデザインになっており、天井には円盤型の照明器具がついていた。
螺旋階段を上がると、また白い大理石が敷いてある玄関口が出てきた。自動ドアが開き、白いカウンターが正面にあった。各部屋に繋がる内線番号が書いてあった。受話器を取り、石田から言われた通りの番号を押した。
「ツーツー」と内線が繋がる音がした。
「はい」
「蛇喰です」
「ようこそ。カウンター横にあるエレベーターで3階にお上がり下さい」
「かしこまりました」
そう言って受話器を下ろした。自分自身で話した言葉に驚いた。「『かしこまりました』」だって?大阪府警の刑事だった時代にはおよそ考えられない言葉遣いだった。
エレベーターのスイッチを押すと、ドアが開き中に入った。3Fのボタンを押すと、「上にまいります。ドアが閉まります」と、エレベーターが喋った。ドアが閉まり3階に着いた。エレベーターのドアが開いた。玄関ホールのような場所に出た。ドアをノックする。
「どうぞ」
その声に反応し、ドアを開けて驚いた。どこもかしこも皆、ピンク色だった。勾玉の形をした机の前に、派手な化粧をしたピンク色の上下のスーツを着た女性が立ち上がった。以前活動していた女性政治家のようだった。
「ようこそおこしへ」
そう言って、白い片手を差し伸べた。
西崎を見て年齢を推測する。50代半ば?30代前半くらいにしか見えない。処女の生き血でも吸っているのだろうか?
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