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「前にも言っただろ。存在している以上、その存在は否定できないんだよ。

 ましてそれは僕自身だ。あと、たぶん発想の元としては、ニンニクに限らない魔女けとされる香草やハーブの類と同じだと思うよ。

 大体においの強い植物は、薬効か毒があるからね」

「……おにいちゃん、ほんとに血を飲んでんの?」


私は、自称と状況証拠を握ってこそいれども、その吸血の現場自体を押さえたことはなかった。

結局、押さえずじまいになった。

たぶん、それで良かったのだと、今では思っている。

おにいちゃんは完全にきょかれたようで、何か言おうと口を開いて、それから一言も発さずに閉じた。


「私は、おにいちゃんの自己申告で知ってるだけだもん」

「…………そうだね」

「おにいちゃんが人じゃない何かってのはわかるけど、吸血鬼であるという判断をするための情報は私にはないもん」


おにいちゃんは返事にきゅうしたのか、バツが悪そうな表情で文庫本を膝の上に置いた。


「……痛いとこ、つくようになったなあ」

「おにいちゃんと話してれば、そりゃね」

「……物好きだよ、みぃちゃんは」


そう言っておにいちゃんは困ったように眉尻を下げて笑った。


「こんな化け物をおにいちゃんと呼び続けるなんて」


あきれたように笑ったおにいちゃんはそう言って、私もそれにつられて苦笑した。


「最初に気付いた時点で、何かするつもりはないっぽいってわかっちゃったからねー」


今思えば、それは九割方、おにいちゃんが持ったままだった醤油しょうゆせんべいのおかげだろう。


「……本当に目指せ光源氏ではないんだよね?」

「ああ、うん、あり得ないかな」


即答だった。

前にも似たような事を何度かいていたが、おにいちゃんはいつもそれはないと即答した。


「……人間を血液製造工場と見た上での発言ではないよね?」

「畜産やってるつもりもないし、それ、僕の、みぃちゃんの血を吸う気はないっていう言葉が嘘であること前提だよね?」


おにいちゃんは私の言いたかった事を的確に理解した上で、そう返してきた。

まさしく、つうと言えばかあの仲だった。


「信用ないなあ」

「いや、信用してるよ? ただ物好きなんていうから」


私はいつもの単なる意趣返いしゅがえしのつもりだった。

おにいちゃんはまた眉尻まゆじりを下げて、力なく笑った。


「だって、物好き以外になんと言えばいいのか」


そんな、物好きだとかなんとか、そういう事ではとうになかったのだ。

ただ、おにいちゃんは、私の前に当たり前に長くり過ぎたのだ。

だから、私はこう言ったのだ。


「だって、おにいちゃんは私のおにいちゃんでしょ?」

「……」


それを聞いたおにいちゃんは、色を失うと呼ぶに相応ふさわしい表情をした。

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