第八話 It's the only neat thing to do
コリアーナ魔国とシンシナーン魔国を打倒した
会議の場所は新造した護衛艦DDH‐一八三〈いずも〉の士官室で行っている。〈いずも〉はヘリ空母だという突っ込みは全て却下する。ヘリコプター搭載型の
ぶっちゃけると〈いずも〉は建造は可能だったが戦闘機運用能力獲得改装は不可能だった。つまりF‐三五Bは残念ながら実装されない。実装できるかと期待して建造してみたが駄目でした。
以前の戦闘で喪失した〈きりしま〉〈みょうこう〉〈しまかぜ〉〈たかなみ〉の穴埋めに〈いずも〉〈かが〉〈ひゅうが〉〈いせ〉を新たに建造した。それによりヘリコプターによる哨戒が捗り、各方面への偵察任務は順調に進んでいる。
「そういえば勇者たちは今はどこにいる?」私が尋ねるとオスカー副官から報告が入る。
「勇者三人は人族の軍勢とともにルシアーナ魔帝国に侵攻を開始しています」
「ルシアーナのどの辺り?」と地図を見ながら質問をする。
「彼らは魔森を抜けてマリーズ湖にてルシアーナと交戦。勝利して今はオプワを目指して進軍しています」
勇者トリオは順調にルシアーナを進軍中と……。
「ルシアーナの様子は?」
「ルシアーナは魔王による親征が行われています。主力である近衛軍、東方管区軍、南方管区軍を率いて勇者を迎撃するようです。現状の行軍速度を考えますとリーディーの辺りで会戦となるでしょう」
「それでルシアーナの南側は手薄なのか」
今はシンシナーンとコリアーナとルシアーナの国境にある内海に停泊して偵察を行っているところだ。今停泊しているところからリーディーまでは約千キロメートルぐらいある。今から出撃して間に合うかどうか?
「副長、艦隊をリーディーまで進めるのにどれぐらいかかる?」
「条件にもよりますが最大速度で航海して二〇時間前後かと」
「それなら間に合いそうだな。これより魔王との決戦の場に赴く! 勇者に加勢出来るようなら加勢しよう。詳しい航路の算定と作戦の立案は参謀に任せる」
「イエス、マム!」
…………
「なんとか間に合ったな、副長」
「はい、提督。現在位置は……」
私達は間に合った。戦場から南へ三〇キロメートルほど離れた場所にて艦隊は半包囲の陣形にて待機中だ。
今は〈いずも〉の
「観測ヘリ〇二からの映像入ります!」
ヘリからの映像は丁度、両軍が激突するところからだった。
「やっぱり飛び道具の魔法はあれど闘いの中心は剣と槍か……。これだと遠距離からミサイル攻撃とかは難しいな」
「イエス、マム。流石に精密誘導兵器でも両軍が至近距離で入り混じっていると誤爆します」
「今のところは互角かな? 若干、連合軍側が押しているようにも見えるが……」
「提督、観測ヘリ〇五の映像を見てください。魔族側に動きがあります」
「なんか、高級将校ぽいのが前進しているな」
「旗を見る限り、近衛軍、東方軍管区軍、南方軍管区軍の司令官だと思われます」
「へー、あの旗にはそんな意味もあるのか……」
「提督、観測ヘリ〇八の映像を見てください。連合軍にも動きがあります」
「こっちも大将クラスて感じだな」
「そうですね。偵察情報によるとエリック・ルーデンドルフ陸軍大将、バーナード・スター陸軍大将、オマール・シュリンプ陸軍大将のようですね」
「ふーん……。あっ、激突した。……いやいやあれは人間なのか?」
目の前には森を吹き飛ばしたりと地形を作り変える勢いで戦場を暴れまわる六名。
「この世界の住民は魔法によって肉体を強化していたりしますので大将クラスならあれぐらいは普通のようですよ?」
「現代兵器の出番あるのかな……? 勇者が勝つならそれでいいけれど」
「提督! 観測ヘリ〇三の映像を見てください! 魔王が動きます!」
「あれが魔王か……。何するつもりかな? 後方にある岩山に移動したな」
映像の中の魔王は岩山を蹴りつけた。
「あっ……!? 今、岩山を蹴ったよね……?」
「イエス、マム」
魔王が蹴り上げた岩山は宙を飛んだ。それを追いかけるように魔王もジャンプして岩山を追い越すと空中でバク転して岩山の軌道を変更して戦場中心部へと叩き込んだ。
「あれ、喰らったら〈いずも〉沈むよね……」
「イエス、マム」
「提督、観測ヘリ〇八の映像を見てください。勇者に動きがあります」
「ドラゴン倒しちゃうような勇者だから心配はないと思うが……。 うっそーん。勇者が剣を振るっただけで、先程の岩山が真っ二つなんだが……」
「あれを喰らったら〈いずも〉は沈みますね、提督」
「あっ、やはりオスカー副官もそう思うか……」
「魔王一人で勇者三人相手によくやるなー。このまま勇者が押せば勝てるかな?」
その時、魔王が変身して全身鎧姿になった。
「ここに来てパワーアップか……。なんかニチアサ見ているみたいだな……」
「提督、魔王の魔力も先程より上がっているようです」
「魔力が見れるのはファンタジーだよね」
勇者三人の猛攻により魔王が吹き飛ぶ。
「やったか!?」
「提督、それはフラグでは?」
「しまった! つい言ってしまったじゃないか」
「提督がフラグを立てた所為ではないとは思いますが、魔王から魔力が溢れていますよ」
「魔王の後ろから何かでかいものが出てきたな」
「なんか魔王と合体しますよ」
「なんかロボットになった!? ここ、ファンタジー世界だよね?」
「提督がそうおっしゃるなら、そうではないかと思いますが……」
魔王は合体してロボットとなって勇者と闘い始めた。
「今まで格闘していた魔王が飛び道具使っているね。勇者勝てるかな……?」
「提督、このまま勇者が負けたら困るのでは?」
「そうだ! ここで加勢するぞ! 予てからの作戦通りに『たったひとつの冴えたやりかた作戦』発動!」
「イエス、マム!」
「第三艦隊、第七艦隊、第十一艦隊は前進!発射位置に付け!」
「発射位置に付きました!」
「〈ズムウォルト〉〈マイケル・モンスーア〉〈リンドン・B・ジョンソン〉主砲発射用意! 弾種はHVP!」
先日ロストした〈カーティス・ウィルバー〉〈ハワード〉〈ダニエル・イノウエ〉の後継として建造した〈ズムウォルト〉級ミサイル駆逐艦。米海軍の最新鋭駆逐艦だ。色々と先進的な仕様にしたために高額になりすぎて三隻しか建造されなかったという駆逐艦である。ステルス対策を最大限にしたために完成した艦を見ても三DCGで出来ているとか言われたものである。
〈ズムウォルト〉級の二門の主砲。AGS 155ミリ砲にHVP(Hypervelocity Projectile)が装填される。日本語に訳すると超高速発射体と呼ばれる弾種は円錐型で工事現場とかに並んでいる三角コーンのような形の砲弾である。砲に装填されるときは四分割される筒状のキャニスターに挟まれた状態で装填されて、撃ち出されるとキャニスターを分離して砲弾だけで飛翔する。砲弾には四枚の翼が付いており、この翼で姿勢を制御することで目標を目指して正確に命中させるのだ。
観測ヘリからの映像では勇者と魔王が激突して剣で押し合っていた。狙うなら動きの少ない今しかないだろう。
「主砲攻撃始め!」
「一番砲ファイアー!」
「二番砲ファイアー!」
〈ズムウォルト〉級、計六門の主砲から轟音が響くとHVPが撃ち出されて飛翔を開始して目標に向けて殺到する。
息を呑む戦闘指揮所内の乗組員達。
「弾着ー。今!」
「おー!」
「成功ですね!提督」
第一砲塔から発射した三発のHVPが全て魔王の結界に弾着して砲弾が内蔵している炸薬が結界を破壊する。僅かな時間差で第二砲塔から発射された三発のHVPが魔王を貫く。
「いや、まだだ。まだ魔王の鎧を抜いただけだ」
後は勇者が頼みだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます