第六話 勇者対魔王 その二
最初の激突が終わると勇者と魔王は互いに距離をとった。既に小山だった土砂も吹き飛び戦いの激しさを物語っている。
「おい、見ろよ。あの手甲反則じゃね?」
「自動修復とかゲームかよ!」
「ウェーイ!」
勇者トリオが指摘したように魔王の鎧である
「ここはDPSを上げるしか無いな!」
この場では常にリーダー格である
「そうだな!」
と
ここで
「DPSてなんなの?」
「「はぁ!?」」
力丸依千也が説明を試みる。
「いいか、りょうちん。ダメージ・パー・セカンド。一秒あたりのダメージの意味だよ」
「へー、そうなんだー」
「いや、今回はその意味ではない」
斗有慎平が否定する。
「しんちゃん、それどういうことだよ!」
「今回はデス・パー・セカンドだ。オレたちの業は一撃必殺がモットーだろ? だからゲームみたくHPをチマチマ削るような攻撃ではなく、一撃必殺の業をどれだけ短時間で叩き込めるかで勝負が決まるんだと思う。そもそもリアルじゃ、HPゲージもないしな」
「「なるほど〜」」
「わかったところで行くぞ」
どちらかというと「キル・パー・セカンド」ではなかろうか? という無粋なツッコミは誰もせずに淡々と戦闘は進んでいく。
さて、ここで話している間、魔王は呑気に待っていてくれたわけではない。勇者トリオは片時も魔王から目を離さずに牽制をしていたのだ。異世界ではあるけれどゲームでもなければ物語でもない。現実の世界では敵に背を見せたら確実に殺られるのだ。
四人の威圧によって周囲には雑兵ごときでは簡単には寄っては来れないのである。相変わらず三将軍対三将軍の戦いは続いてはいるのだが、ここだけ別世界のように静寂に包まれている。
再度、動き出した勇者トリオ。今度は三人が連携して攻撃を仕掛ける。慎平が袈裟斬りを仕掛けたら魔王が防ぐ間もなく依千也が蜻蛉の構えから猿叫を発しながら剣を打ち込む。そして涼が死角からぬるりと現れては槍を突き刺す。
この光景を傍から解説するなら高速餅つきであろうか。昔ながらの杵と臼で餅をつく時に、高速で杵で餅をつき、杵が持ち上がった瞬間に高速で手を入れて餅を返す絶妙な職人技と似ているかもしれない。
勇者トリオが三人で振り下ろす杵の一つずつに対処して餅を返す魔王……。
それはさておき、勇者トリオの猛攻により魔王の鎧の自動再生も追いつかず、遂に魔王の本体にダメージを入れることに成功する。
「「「きぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」」
「ぐっはぁぁぁぁっ!」
まともに攻撃を受けた魔王は受けた衝撃によって百メートルほど飛ばされるが、
双方とも死力を尽くして闘い、流石に息も乱れてくるので呼吸を整える。
「流石、魔王の天敵である勇者よ。しかし魔王である余が勇者に簡単に負けるなど言語道断! 余も奥義にて相手しよう!」
「おいおい、ここで残りHPで強化されるパティーンかよ!?」
「まさかのゲーム展開!」
「ウェーイ!」
「来い!
魔王の背後にブラックホールが開くと、ブラックホールから巨大な鎧が徐々に出てくる。巨大鎧が完全に姿を現すと鎧の腹部や胸部や脚部といったパーツが開き、魔王が磁力で引き寄せられるように鎧に向かって浮かび上がる。
「あれはヤバイぞ! いっちー、りょうちん!」
「あぁ、とんでもない魔力量だ!」
「激マズじゃん!」
三人は急いで攻撃を仕掛けるが、全ての攻撃は跳ね返されて三人とも吹き飛ばされて転がっていく。
「変身中の無敵状態もお約束かよ!」
「そうだな、変身中
「ウェーイ!」
勇者トリオは打つ手もなく魔王を見守るうちに魔王の鎧装着が完了した。鎧装着が完了して大量の熱風が排熱機構らしき場所から噴出して赤黒いオーラを纏っている。漆黒の魔石も胸部だけではなく頭部や手甲や脚部や腰部などに増えている。
鎧は全高四メートル近くある巨大な漆黒の
「パワードスーツと来たか……」
「あれ、欲しい……」
「マジヤバ!」
勇者トリオも元の世界に帰れば、ただの高校生なので、カッコいいものは大好物なのであった。
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