09.終わりなき戦場編

第一話 ドイツェット軍・連合国軍合同軍議

 ドイツェット王国王都ヴァリンにある軍務省内にある会議室。会議に参加しているのはエンゲルシュ連合王国軍からアーサー・キンバリー連合軍副司令官。バートルミー・ラムズデン海軍大将。バーナード・スター陸軍大将。ヴェスプッチ連合王国からはデビッド・バウアー連合軍最高司令官。オマール・シュリンプ陸軍大将。ドイツェット王国からオルトヴィーン・フォン・バイルシュミット宰相。エリック・ルーデンドルフ陸軍大将。マックス・ホーガン参謀総長。そして我らが勇者トリオの斗有慎平とありしんぺい力丸依千也りきまるいちなり笈川涼おいかわりょうだ。


 会議の進行はホスト国であるマックス・ホーガン参謀総長が努めている。


「それでは魔族反攻作戦について会議を行いたいと思います。進行は僭越ながら参謀総長であるマックス・ホーガンが務めさせていただきます。今回の作戦の趣旨を説明したいと思います。今回の作戦はエンゲルシュッ軍とヴィスプッチ軍が我が国へ援軍に来られたことで実現しました。ここに我が国を代表して御礼申し上げます」


 ホーガン参謀長が礼を述べると、それにデビッド・バウアー連合軍最高司令官とアーサー・キャリバー連合軍副司令官が答えた。


「いやいや、礼には及ばない。救援に来たのは人族としてあたり前のことだしな」

「我々としても魔族の侵攻は見過ごせないことですので当然のことです」

「それでは話を進めてくれないかな?」


 バウアーがホーガンに対して先を促す。


「はい。今回は二正面からの作戦になります。作戦目標はこのマリーズ湖となります」


 マリーズ湖とはドイツェット王国東側の南北を貫くルシアーナ魔帝国との国境に挟まれた魔森を越えてルシアーナ魔国内にある湖のことである。この辺りはマリーズ湖水地方とも呼ばれており千湖の楽園とも呼ばれるほどに湖が多い地方だ。平和な時代であったなら豊かな自然に恵まれた風光明媚な観光地として栄えたであろうと思われる地域である。


「このマリーズ湖に陸路からは勇者を含むドイツェット陸軍第八軍と第一〇軍にて魔森を横断して侵攻します」


 魔森というのは魔素が多い森林地域であり滞留する濃い魔素により強力な魔獣が常に生み出されている場所だ。そんな場所であるために自然の要害となり双方とも侵攻し辛い地域ではあるが損害に目を瞑れば力押し出来なくもない。今回は勇者トリオが人族にとって脅威的な魔物を討伐することによって陸路を貫通しようという試みである。


「つまり俺達が魔物をぶっ倒して道を切り開けば良いんだな」と慎平が言えば。

「せやな」と依千也が答える。

「森の中だろ?虫除けいるかな?」涼が疑問を呈すると。

「それだ!」と二人が答える。

 勇者トリオは何時も通りである。


 先日までフランチェスカ王国が魔族によって侵略されたことで陸の孤島となっていたドイツェット王国だが、今は西部の守りは必要ないので東部の戦力を全て本作線に充てる余裕がある。


「そして、ヴィスプッチ軍とエンゲルシュ軍にはウォーメニュードから艦隊を出撃。プリプレジュより上陸してマリーズ湖へと侵攻してもらいます」


 ノルマンド上陸作戦を実行した実績を買われたヴィスプッチ軍とエンゲルシュ軍には今回も上陸作戦にて活躍してもらうことに。マリーズ湖北西からと西からの挟み撃ちを実行する作戦である。 


「今回はタイミングが重要です。どちらかが早すぎでも遅すぎても作戦は失敗します。作戦説明は以上です」


 そして作戦の検討は深夜まで続いた後に修正案はさらに参謀に送られて詳細な作戦案を参謀たちは徹夜続きで練り上げるのだった。


 そして一週間後には作戦計画は完成を見て、実行に移されるのであった。


 本作戦は『ML作戦』と名付けられて各軍は準備大忙しだ。我らが勇者トリオも準備に忙しい。


「ちょっと、そこのカノジョ〜。トゥゲザーしようぜ?」

「パーリーしようぜ〜」

「ウェーイ!」


 忙しく準備しているはず……である。


 そんな準備も終わり、ついに作戦が開始される。これが後の世に『マリーズ湖攻勢』と歴史書に記される作戦の開始だ。ヴィスプッチ軍とエンゲルシュ軍はブラボー軍として先立ってウォーメニュードから艦隊は出撃して一路プリプレジュに向かう。


 地上部隊であるドイツェット第八軍と第一〇軍を中核とするアルファ軍も出撃を開始した。


 南北に見渡す限り切れ目なく続く魔森の前に勇者トリオが立つ。


「それじゃ、野郎ども行くぞ!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 慎平が声掛けすると野太い大音声がそれに答えて草原に響き渡る。しかし掛け声は軍というより山賊である。


「まずは、俺から行くぞ」と力丸依千也が愛用の剣を抜刀して構える。

 依千也が気迫を込めるたびに身体からオーラが立ち上りそれを見守る兵士たちも息を呑む。そして静寂を破るような掛け声を依千也は腹の底から絞り出す。


「キィエーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ!!」


 元々の示現流による破壊力に勇者パワーを全力で叩き込むことによって初太刀で進路上にある樹木は五キロに渡って轟音とともに吹き飛んだ。そして幅五〇メートルは有る一本道が出来上がったのだ……。


「流石だよ!いっちー」

「いっちー、ウェーイ!」

 慎平と涼は依千也を讃えて肩を叩く。


「これが、勇者の力か……」

「うっ、ウェーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ!!」

「ウェーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ!!」

「勇者!ウェーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ!!」


 全軍にウェイ系が広まった瞬間である。

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